あの町にはもう戻れない 今年67歳になる三浦邦彦さん(仮名)は、定年後、田舎暮らしがしたくて、2年前に東京の自宅を売り払い、妻と二人で山梨に引っ越した。 「都会の喧騒を離れ、八ヶ岳や南アルプスの名峰に囲まれた自然豊かな場所で、畑で野菜を作って自給自足で暮らす生活を夢見ていました。ところが、現実はそんなに甘いものではないことにすぐに気づきました」 三浦さんの一つ目の誤算は、田舎暮らしは思ったよりもおカネがかかるということだった。自給自足の暮らしを夢見て、300万円で空き家を購入。防寒対策などのリフォームに500万円を費やした。 近所の農家から畑を借りたが、畑の手入れをするのにも多額の費用がかかった。手押しの小型耕運機が20万円、農具を運ぶための軽トラに100万円。田舎暮らしをはじめるための初期投資に、まず1000万円近くが必要だった。 二つ目の誤算が、田舎暮らしは窮屈だったということ。 「地