この note は松浦年男先生が企画されたアドベントカレンダー 2023「言語学な人々」の 5日目の記事として書かれたものです。 https://adventar.org/calendars/9134 言語学は何の役に立つのか、という問い 「言語学な人々」であれば、おそらく一度は「あなたの研究は何の役に立つのか」という趣旨の質問をされたことがあるのではないだろうか。 そんな時、私は迷わず「何の役にも立ちません」と返答している。 なぜか。 質問者が考える「役に立つ研究」というのは、画期的な治療薬の開発で多くの命が救われる、だとか、エネルギー革命をもたらす新たな技術の開発で、地球温暖化に終止符が打たれる、だとか、そういうものであろうと想像がつくからだ。 そもそも「役に立つのか」という質問を投げかける時点で、相手は「言語学など無益なものだ」と考えているはずであり、そのような人と問答をするのは面倒