安倍元首相は、父・晋太郎氏の後を継ぐ形で浄土宗と浄土宗信徒の国会議員でつくる親睦団体「浄光会」の世話人を務める一方、旧統一教会とも一定の関係を持っていた。600万人の信徒がいる浄土宗ではなく、なぜ、規模の小さな宗教の票田を狙ったのか。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんが宗教と政治の関係を解き明かす――。 安倍氏の「起こるべくして起きた」事件の構造とは 安倍晋三元首相の狙撃暗殺事件は、国内外に衝撃をもたらした。密葬であったにもかかわらず、葬儀会場の増上寺には数千人が押し寄せ、多くの国民が別れを惜しんだ。事件から半月が経過し、山上徹也容疑者の供述などによって、安倍氏や国会議員と世界平和統一家庭連合(本稿では、旧称の「統一教会」とする)との関係が少しずつみえてきた。 ここでは、本事件を端緒として、安倍氏の信仰や「起こるべくして起きた」事件の構造、権力と宗教の在り方を論じていきたい。 安倍氏が亡く