天沢時生氏の短篇集『すべての原付の光』が4月23日発売! 超刺激的なSF作品集の刊行を記念して、4月30日までの期間限定で表題作の全文無料公開を行ないます! 舞台は滋賀。とある不良の取材が、想像を超えた彼方へと驀進していきます。 SFマガジン2022年8月号・小説扉 公民館で車をいったん停めると、記者はスマホの電話帳を開いた。登録名「不良」にコールする。 「目印の公民館に着きました」と記者は告げた。 「向かって左手の細道に入れ」と不良が応答する。 言われた通り車を小道に突っ込む。地区掲示板に貼られた、二期前の首相のポスターのそばを通り過ぎる。長らく剥がし忘れたまま放置されて色褪せ、落書きだらけだ。人物の目元はサングラスで覆われ、口にはギャングの極太の葉巻、お腹の前で組んだ腕の上にはアニメ調の下手くそな猫のイラストが描かれており、その口元からマンガのフキダシが伸びている。セリフは「ニャー」で