数理経済学で先駆的業績を上げた宇沢弘文は、公害問題や環境問題、反戦運動にも積極的に関わった〈行動する社会思想家〉でもありました。 2000年刊行の『社会的共通資本』で宇沢さんは、「二十世紀の世紀末的状況を超えて、新しい世紀の可能性を探ろうとするとき、社会的共通資本の問題が、もっとも大きな課題として、私たちの前に提示される」と書きました。その新しい世紀もまもなく四半世紀を迎えようとするなか、宇沢さんの言葉はさらなる重みをもって私たちに迫ります。 広がり続ける経済格差、気候変動と環境破壊、終わらない戦争に直面する私たちは、ここから何を読み取り、未来へつなげることができるのでしょうか。 没後10年 今、宇沢弘文と出会い直す── 宇沢弘文(うざわ ひろふみ)略歴 1928-2014年。鳥取県生まれ。1951年東京大学理学部数学科卒業。経済学者。日本学士院会員、東京大学名誉教授。1997年文化勲章受