東京・原宿の竹下通りはもはや、若者や外国人でごった返すかつての光景に戻っている。通り過ぎると、待ち合わせ場所の会館のラウンジはうそのような静けさに包まれていた。窓際の席に腰を落ち着けた漫画家の黒鉄ヒロシさん(77)は3年半に及ぶ新型コロナウイルス禍での生活で、本格的に外出したのは6回目だと明かす。 「元々、漫画家というのは自由業で、外にはあまり出ないんです。そもそも能動的な性格だったら、この職業をやっていないわけですよね。コロナが流行したからといって、生活が変わったということはない。漫画を描いて本を読み、心の外出として映画のDVDを見るぐらい。収集した昔の映画が山のようにあるので」。中でも、名優スティーブ・マックイーンが若きポーカー勝負師を演じた米映画「シンシナティ・キッド」(1965年)が記憶に残った。「マックイーンの主演作の中で、これは今になって名画じゃないかと思い始めた。面白いものは