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短篇集の検索結果41 - 80 件 / 317件

  • 海外文学入門者に贈る海外文学の買い方、選び方、探し方【レーベル解説編】 - ウラジーミルの微笑

    もうすぐ絶滅するというリアルの書店に寄せて(下) この記事は、海外文学の世界を渉猟するためのガイドマップとなることを目指している。 後編である本稿では、各出版社/各種レーベルの解説記事を載せている。なお、いずれも書き手の強い独断と偏見で書いているため、異なる意見もあるかもしれない。また、取捨選択をして書いているため、網羅性はない。そのあたりはぜひご容赦いただきたい。 前編には海外文学にまつわる基本情報を書いているので、そちらも併せてお読みいただきたい。 岩波書店 重版出来 言わずと知れた老舗出版社。我が国の「文庫」の創始者である。海外文学に関しては、「文庫書下ろし」*1が多いが、現代文学作品がまれに単行本で刊行されることもある。 出版社URL:https://www.iwanami.co.jp/ 直販サイト:なし(出版社サイトから注文は可) 岩波文庫 帯*2の色でジャンル分けをしており、白

      海外文学入門者に贈る海外文学の買い方、選び方、探し方【レーベル解説編】 - ウラジーミルの微笑
    • 「折りたたみ北京」の郝景芳による、中国から見た1984年──『1984年に生まれて』 - 基本読書

      1984年に生まれて 作者:郝景芳発売日: 2020/11/24メディア: Kindle版この『1984年に生まれて』は、郝景芳によって書かれた、中国の1984年前後から00年代頃までの情景が描かれていく長篇小説である。郝景芳はヒューゴー賞を受賞した「折りたたみ北京」をはじめとし、日本でも単独短篇集である『郝景芳短篇集』が白水社から刊行、この長篇も刊行され、と世界的に人気の高い中国作家の一人だ。 で、本書は実際に1984年に生まれの著者による「自伝体小説」である。自伝体小説とは、あったことをそのまま自伝として描くわけではなく、その時代、その年齢であった時に感じたことや経験を別の外面的イベントに乗せ、フィクションとして描いていくもののこと。著者のあとがきによると次のような部分に注目した小説だ『物事のディティールは服の上に身につける帽子や帯にすぎず、その事柄に対してどう感じるかということこそが

        「折りたたみ北京」の郝景芳による、中国から見た1984年──『1984年に生まれて』 - 基本読書
      • 魔術的闘争と共にアメリカの黒人差別の歴史を描き出す、ドラマ原作にもなったホラー連作短篇集──『ラヴクラフト・カントリー』 - 基本読書

        ラヴクラフト・カントリー (創元推理文庫) 作者:マット・ラフ東京創元社Amazonこの『ラヴクラフト・カントリー』はファンタジーや幻想系の作品で知られるマット・ラフによるホラー・幻想の連作短篇集となる。まだ黒人差別が色濃く残る1950年代を舞台に、黒人中心の登場人物らが次々と差別と魔術的騒動に直面する様を、連作短篇形式の長篇で、時に情緒的に、時にコミカルに描き出していく。 本作は書名にも「ラヴクラフト」と入っているように、明確にクトゥルー神話の産みの親、H・P・ラヴクラフトとその著作が関係してくるが、それは(文庫解説にもあるように)シンプルにリスペクトだけがこめられているわけではない。ラヴクラフトには人種差別的な傾向が存在することが指摘されており、そうである以上本作(『ラヴクラフト・カントリー』)でも無批判に取り上げられていくわけではないのだ。 「黒人差別の歴史を描き出している〜」などと

          魔術的闘争と共にアメリカの黒人差別の歴史を描き出す、ドラマ原作にもなったホラー連作短篇集──『ラヴクラフト・カントリー』 - 基本読書
        • 時間から猫テーマまで中華SFの粋が集められた、今年ベスト級のSFアンソロジー──『宇宙の果ての本屋』 - 基本読書

          宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作選 作者:顧適,何夕,韓松,宝樹,陸秋槎,陳楸帆,王晋康,王侃瑜,程婧波,梁清散,万象峰年,譚楷,趙海虹,昼温,江波新紀元社Amazonこの『宇宙の果ての本屋』は、日本における中華SF翻訳・紹介の立役者立原透耶編集による中華SF傑作選になる。2020年にも同じ新紀元社から『時のきざはし』という中華SF傑作選が出ていて、本書はその続篇というか第二巻にあたる。 『時のきざはし』のレベルは高く、今なお中国の才能を知るためのSFアンソロジーとしてはトップクラスにおすすめしたいしたい傑作だが(文庫化してないから値段的にはあれだけど)、作品全体のレベルでいえば『宇宙の果ての本屋』に軍配があがる。それぐらい全15篇すべてのレベルが高く、時間や猫など様々なテーマ・題材がある中で、どれもが一生記憶に残るような鮮烈な印象を遺してくれる一冊だ。 huyukiitoichi.ha

            時間から猫テーマまで中華SFの粋が集められた、今年ベスト級のSFアンソロジー──『宇宙の果ての本屋』 - 基本読書
          • 今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書

            息吹 作者:テッド・チャン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/12/04メディア: 単行本ついにテッド・チャン最新短篇集『息吹』が刊行された! テッド・チャンは映画『メッセージ』の原作が含まれているSF短篇集『あなたの人生の物語』の著者として知られるが、その圧倒的な質の高さと反比例するかのように寡作で、これが17年ぶりの作品*1である。だが、それだけ待っただけのことはある圧巻の作品集だ。 現在までの29年のキャリアの中で出したのは短篇集二作のみなのだから、まさに寡作の王といってもいい貫禄ではあるが、(それだけの時間をかけたから、といっていいのかどうかはともかく)テッド・チャンが描き出す世界はとてつもなく緻密で、ありえないほど美しい。この短篇集も、SFを読む喜びに満ちていて、このような作品に出会うために小説を読んでいるのだ、と改めて実感させてくれる傑作揃いである。 テッド・チャン

              今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書
            • 『元年春之祭』の陸秋槎による、今年ベスト級のSF短篇集──『ガーンズバック変換』 - 基本読書

              ガーンズバック変換 作者:陸 秋槎早川書房Amazon『ガーンズバック変換』は『元年春之祭』や『雪が白いとき、かつそのときに限り』、『文学少女対数学少女』といった、ミステリ系の著作で知られる陸秋槎による初のSF短篇集である。陸秋槎は北京出身だが、その後日本の石川県在住となった作家。日本文化への造形が深く、それは本作収録の短篇を読めばすぐにわかる。 というか、短篇だけ読ませたら日本の作家としか思えないだろう。香川県を舞台にした表題作「ガーンズバック変換」からして、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」に着想元がある作品なのだから。陸秋槎のSF短篇は『異常論文』アンソロジーや『アステリズムに花束を』に掲載されていたから、すでに抜群におもしろいことはわかっていた。だが、今回本邦初訳の二作と書き下ろし二作も含めて全体を読み直してみたら、期待をはるかに超えておもしろい! まだ2023年もはじまった

                『元年春之祭』の陸秋槎による、今年ベスト級のSF短篇集──『ガーンズバック変換』 - 基本読書
              • 『闇の左手』などが連なる《ハイニッシュ・ユニバース》物にして、奴隷制度・ジェンダーを真正面から扱ったル・グインのSF短篇集──『赦しへの四つの道』 - 基本読書

                赦しへの四つの道 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:アーシュラ K ル グィン早川書房Amazonこの『赦しへの四つの道』は、の『闇の左手』などの傑作群が連なる《ハイニッシュ・ユニバース》と呼ばれる世界を舞台にした、ル・グィンによる連作短篇集だ。 原書は1995年の刊行なので待望の邦訳となる。ル・グインの新しい作品を久しぶりに読んだが、政治・宗教・社会と「異星の文化を立体的に立ち上げていく」マクロ的な手腕と、ほんのわずかな動作から人間の差別感情を浮かび上がらせるミクロ的な演出が、やはり異次元レベルにうまい。今回はテーマが奴隷制や女性の権利獲得の物語ということで展開や文体は重苦しいが、SF☓奴隷制テーマではトップクラスのおもしろさを誇るオクテイヴィア・E・バトラーの『キンドレッド』に比肩しうる作品である。 キンドレッド (河出文庫) 作者:オクテイヴィア・E・バトラー河出書房新社Ama

                  『闇の左手』などが連なる《ハイニッシュ・ユニバース》物にして、奴隷制度・ジェンダーを真正面から扱ったル・グインのSF短篇集──『赦しへの四つの道』 - 基本読書
                • 【SF作家・山本弘氏逝去】前島賢氏による『シュレディンガーのチョコパフェ』解説「SFとオタクに必要なものの半分くらいは、山本弘に教わった」全文公開|Hayakawa Books & Magazines(β)

                  【SF作家・山本弘氏逝去】前島賢氏による『シュレディンガーのチョコパフェ』解説「SFとオタクに必要なものの半分くらいは、山本弘に教わった」全文公開 2024年3月29日、作家・ゲームデザイナーの山本弘氏が誤嚥性肺炎のため68歳で逝去されました。 早川書房からは現在、小説作品『シュレディンガーのチョコパフェ』『アリスへの決別』『地球移動作戦』『プラスチックの恋人』『プロジェクトぴあの』が刊行されています。 またアンソロジー『多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー』には表題作となった短篇を収録、ご自身も海外SFのアンソロジストとして『火星ノンストップ ヴィンテージSFセレクション―胸躍る冒険篇』を刊行され、SF作家としての山本弘氏には生前長いお付き合いがありました。 ご逝去にあたり、氏の長年のファンであり作家・ライターである前島賢氏から、短篇集『シュレディンガーのチョコパフェ』(単行本『ま

                    【SF作家・山本弘氏逝去】前島賢氏による『シュレディンガーのチョコパフェ』解説「SFとオタクに必要なものの半分くらいは、山本弘に教わった」全文公開|Hayakawa Books & Magazines(β)
                  • 必読書コピペにマジレスしてみる・自分のオススメ41冊編(1)

                    日本文学編(anond:20210222080124)があまり注目されなかったけれども、記憶を頼りに続きを書く。 芥川龍之介「河童」どの作品を入れるべきか迷った。古典の翻案に見られる知性とユーモア、晩年の作品にみられる迫害的な不安、どちらの傾向を持つ作品であっても、元文学少年の心をひきつけてやまない。特に「歯車」などの持つ、すべてのものが関連付けられて迫ってくる凄味は、学生時代に再読したとき、行き詰まりかけていた学生生活の不安と重なり、ただただ恐ろしく、読み終わってからしばらくは寝床で横にならされた。 「河童」を選んだのは中高生の頃で、河童の国を旅する要素に心を惹かれたことを思い出したからだ。それは、大学生の頃よりも不安が弱かったからなのか、この作品に潜む女性への憧れと恐れが自分に響いたのか、あるいは架空世界の架空の言語に魅せられたのか、その理由はわからない。 ハンス・クリスチャン・アンデ

                      必読書コピペにマジレスしてみる・自分のオススメ41冊編(1)
                    • 【十二国記や芥川賞】話題の本がもっと楽しめる、はてなブロガーの読書感想文を集めました - 週刊はてなブログ

                      日々、映画や小説、漫画に舞台など、さまざまな作品に対する感想・考察が数多く集まるはてなブログ。今回は、本への愛がすごい人のブログを集めました! 「話題の本を読みたくなる、深い感想・考察記事」から、「読書好きブロガーさんのおすすめ本まとめ記事」まで、秋の夜長に読書がしたくなっちゃうブログをお楽しみください🍁 人気になるには理由がある。いま話題の本の感想記事たち まずは、話題の本を紹介する記事から。 小野不由美さんによる人気ファンタジー小説シリーズ「十二国記」の18年ぶりの書き下ろし新作、『白銀の墟 玄の月』(しろがねのおか くろのつき)が10月12日に刊行されました。 十二国記を「一個も文句がないくらい好き」と言う篠宮 光琴 (id:MikotoShinomiya)さんは、初心者にもよくわかるように「自らの思う十二国記の魅力と、読むべき理由」を熱く語ります。 mikotoshinomiya

                        【十二国記や芥川賞】話題の本がもっと楽しめる、はてなブロガーの読書感想文を集めました - 週刊はてなブログ
                      • 【訃報】原尞氏逝去のお知らせ

                        直木賞作家の原籙(はら・りょう、本名 原孝=はら・たかし)さんが5月4日夜、福岡県内の病院で死去した。享年76。葬儀は家族葬で執り行った。 1946年佐賀県鳥栖市生まれ。九州大学文学部美学美術史科卒業。70年代はおもにフリージャズのピアニストとして活躍。30歳ころから意識的に翻訳ミステリを乱読し、とくにレイモンド・チャンドラーに心酔した。 1988年に私立探偵・沢崎が初登場するハードボイルド長篇『そして夜は甦る』で作家デビュー。日本の風土にハードボイルドを定着させた優秀作として高い評価を得た。1989年の第2作『私が殺した少女』で第102回直木賞を受賞した。 その後長篇第3作『さらば長き眠り』(1995年)、第4作『愚か者死すべし』(2004年)と一貫して沢崎シリーズを書き続け、2018年に14年ぶりに発表した長篇第5作『それまでの明日』が遺作となった。短篇集に『天使たちの探偵』1990年

                        • 『新しい世界を生きるための14のSF』幻のあとがき(文・伴名練)|Hayakawa Books & Magazines(β)

                          最新世代の作品のみを集めた816ぺージの超大型アンソロジー『新しい世界を生きるための14のSF』が発売。本書はもともと480ぺージ予定だったのがいろいろあって300ぺージ以上増えたのですが、さらに編者の伴名練氏から「ページ数上限の都合で入れられなかった幻のあとがき」が到着しました。文庫本換算で25ぺージにおよぶ本稿を、全文公開します。(編集部) 『新しい世界を生きるための14のSF』あとがき『日本SFの臨界点』シリーズの読者の中には、『新しい世界を生きるための14のSF』を手に取ってみて、もどかしく思った方もいるかもしれない。各作品の著者紹介が、これまでと異なり、作品の扉裏に最小限のプロフィールを置いただけのものであり、同じ著者の別作品に手を伸ばすための情報が少ないからだ。 本来は普段のように、各著者の別作品も扉裏で紹介する予定だったが、発表作品数がまだ少なく紹介に半ページ使わないであろう

                            『新しい世界を生きるための14のSF』幻のあとがき(文・伴名練)|Hayakawa Books & Magazines(β)
                          • 村上春樹でひっぱりだこの英翻訳家は、アメリカの片田舎で日本文学を教える | かれこれ25年の付き合い

                            外国語を話すことができるからといって、その人がその言語を母国語へきちんと置き換えることができるとは限らない。とくに文芸翻訳においては、単なる語学力だけでなく、その国の文化に対する知識も必要となってくる。だから文芸翻訳者はどの作家の作品であっても、複雑な職人技を必要とされるわけだが、それが村上春樹の作品となればなおさらだ。村上作品の英語翻訳を手がけるフィリップ・ガブリエルに翻訳の裏話を聞いた。 2021年4月、フィリップ・ガブリエルの新しい翻訳本が、英語圏で広く話題をさらった。発表から一週間も経たずして、同書は米「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラーリストで11位に浮上した。だが、もしニューヨークやロンドンの豪勢なレセプションを回って彼の姿を探そうとするなら、それは間違っている。 ガブリエルはアリゾナ州ツーソンで、およそ40年間続けてきたことを粛々と進めている。彼は、アリゾナ大学で日本文

                              村上春樹でひっぱりだこの英翻訳家は、アメリカの片田舎で日本文学を教える | かれこれ25年の付き合い
                            • 【テン年代総決算】オタク趣味、退職と転職、インターネットの歴史。2019年総合トップ100&過去10年間のランキング - 週刊はてなブログ

                              週刊はてなブログでは約10日間に渡り「2010年代のはてなブログ」として、はてなブックマーク数による人気記事ランキングやスタッフによるおすすめ記事の「ベストセレクション」を1年分ずつ公開してきました。本記事ではその総集編として、「2019年総合ランキングトップ100」と、「過去10年間のベスト30」をあわせて紹介します。 2019年の注目エントリーと総合ランキングトップ100! 注目エントリー 暮らし 世の中 政治と経済 学び テクノロジー エンタメ アニメとゲーム おもしろ 年間ランキング総合トップ100(はてなブログ・匿名ダイアリー) 過去10年間のトップ30(はてなブログ・はてなダイアリー) 関連記事 各年の振り返り 週刊はてなブログスタッフによる“推し記事” はてなブックマーク年間ランキング 2019年の注目エントリーと総合ランキングトップ100! 平成から令和への改元、ラグビーW

                                【テン年代総決算】オタク趣味、退職と転職、インターネットの歴史。2019年総合トップ100&過去10年間のランキング - 週刊はてなブログ
                              • 《竜のグリオール》シリーズ最終巻にして、ファンタジィの醍醐味がぎゅっと詰まった長篇ドラゴン・ファンタジィ─『美しき血』 - 基本読書

                                美しき血 竜のグリオールシリーズ (竹書房文庫) 作者:ルーシャス・シェパード竹書房Amazonルーシャス・シェパードの代表作のひとつ、《竜のグリオール》シリーズの最終巻が『美しき血』として本邦でもついに刊行となった。最終巻といってもこのシリーズは長いサーガや倒すべき敵がいるわけではなく、一作目『竜のグリオールに絵を描いた男』と二作目『タボリンの鱗』はどちらも中短篇集で、三作目となる本作『美しき血』も他と関わりはあるとはいえ独立した長篇なので、どこから読んでも良い。 著者は本作を刊行(フランス語版は2013年、英語版は14年)したすぐ後に66歳で亡くなっており、これが遺作となる。しかし、これが遺作なら納得もできただろう、と思えるほど、様々な要素があわさった、総合的で美しい長篇だ。 《竜のグリオール》シリーズは数千年前に凄腕の魔法使いと戦った結果、死は免れたものの身動きがとれなくなった全長1

                                  《竜のグリオール》シリーズ最終巻にして、ファンタジィの醍醐味がぎゅっと詰まった長篇ドラゴン・ファンタジィ─『美しき血』 - 基本読書
                                • 私の小説の書き方①着想|深緑野分

                                  です。 普段、私はツイッターでも創作の話をしなくて、作家の友達もいないので(いないっていうか会って話したりしないという意味)創作論を人とすりあわせることもなく、インタビューで聞かれてもうまく説明できないでいたんだけど、なんとなくそろそろちゃんと言っとかないと誰かの役に立たないままかもしれない、と思って書こうかなと。 創作論はじめてなので下手クソだったらすみません。 そもそもお前は誰だよ?という方もいらっしゃると思うので自己紹介すると、2010年に、東京創元社主催の第七回ミステリーズ!新人賞というミステリの短篇賞で佳作をいただき、2013年にその作品を巻頭に置いた独立短篇集(シリーズ作ではなくそれぞれが別々の話の短篇集ってこと)『オーブランの少女』で商業デビューしてます。それから長編『戦場のコックたち』『分かれ道ノストラダムス』『ベルリンは晴れているか』を刊行して、今年で10年目の36歳。秋

                                    私の小説の書き方①着想|深緑野分
                                  • 百合ラノベ、百合SF、百合ミステリその他、百合小説約30冊を読んだ - Close To The Wall

                                    ここしばらく百合小説を集中的に読んでいて、ツイッターでもその都度書いていた感想を適宜手を入れてひとまとめにした。アニメや漫画に比べてそういや百合小説ってそんなに読んでないなと思っていた時、百合ラノベ、百合SFが三月くらいにばっと出たのを機に、手持ちのなから百合と呼びうる本を集めたら結構な量になってしまった。積んだままなものもいくつかある。ここでは、性愛でないものまで含めた女性同士の関係を広く包含するものを百合と呼ぶ広めの解釈なので、同性愛を描いたものからバディものや友人関係のもの、一冊のなかの短篇一篇だけが百合というものも並べてある。 以下は読んだ順に並んでいる。とはいえラノベから読み出したので下に行くほどジャンル的に硬くなる傾向がある。 目次 鳩見すた『ひとつ海のパラスアテナ』 二月公『声優ラジオのウラオモテ ♯01 夕陽とやすみは隠しきれない? 』 みかみてれん『わたしが恋人になれるわ

                                      百合ラノベ、百合SF、百合ミステリその他、百合小説約30冊を読んだ - Close To The Wall
                                    • 必読書コピペにマジレスしてみる・海外文学編(2)

                                      (1)はこちら。anond:20210212080317 キャロル『不思議の国のアリス』好き。ただし、当時の人にしかわからないパロディやジョークが多く、というかこの本を通じてしか残っていないのもあるので、純粋に笑えるかどうかはわからない。とはいえ、わからないなりにナンセンスさは楽しく(「ぽっぺん先生」シリーズにも引き継がれている)、トーベ・ヤンソンなどいろいろな人の挿絵も楽しめるし、こじらせ文学少年・文学少女とも仲良くなれるかもしれない。大学時代の読書サークルは楽しかったなあ。 ドストエフスキー『悪霊』ドストエフスキーの小説は基本的に頭がおかしい。ドストエフスキー自身がギャンブル依存症でユダヤ人嫌いのヤバいやつだし。 登場人物は基本的に自己主張が激しくて感情に溺れやすく、数段落数ページにまたがって独白する。プライドが無駄に高くて空想癖がひどく、思い込みが激しくて人の話を聞いちゃおらず、愛さ

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                                      • 本で部屋が埋まって押し入れで寝ている書店員さんが活躍する「お客さんが探している本をみつける書店員の話」がとても素敵。

                                        黒谷知也 新刊『朗読匠』『本の棺』発売 @kuroyatomoya 書店員 波山個間子1巻 amzn.to/3zc1zRT 書店員 波山個間子2巻 amzn.to/32nLb4s 書店員 波山個間子 番外編(こちらはセールではありません) amzn.to/3qSX8Y2 他にも短篇集などがセール中です。 amzn.to/3EUrjDl 2022-01-05 19:37:02

                                          本で部屋が埋まって押し入れで寝ている書店員さんが活躍する「お客さんが探している本をみつける書店員の話」がとても素敵。
                                        • たまに「愛情を注ぎたい欲」を満たしたくなるが人間に注ぎすぎると迷惑をかけてしまう。しかし、コイツなら愛を注ぎ放題である

                                          凸ノ高秀 @totsuno 漫画家。オモコロライター。となりのヤングジャンプ「she is beautiful」連載中 少年ジャンプ「アリスと太陽」めちゃコミ「春はまだか。」ヤンジャン読切売ってますynjn.jp/app/title/1373まんが王国さんで短篇集出てます。趣味怪談収集。将来の夢は吉高由里子さんと王将で飲むことです omocoro.jp/writer/totsuno…

                                            たまに「愛情を注ぎたい欲」を満たしたくなるが人間に注ぎすぎると迷惑をかけてしまう。しかし、コイツなら愛を注ぎ放題である
                                          • ハヤカワ文庫JAから700点以上が50%割引の大型セールがきたのでおすすめを紹介する。 - 基本読書

                                            SFマガジン 2021年 12月号 早川書房Amazon先日から早川書房から刊行されているSFマガジンではハヤカワ文庫JA全解説を3号連続で行っていた。僕も10点ぐらいの作品に解説を書いたのだが、その全解説がおわったこのタイミングで、ハヤカワ文庫JA700点以上の割引セールがやってきた。 amzn.to このセール終了が12月2日なので滑り込なのだが、今回は僕が読了済みの中からオススメの作品を一部紹介してみよう。ハヤカワ文庫JAのラインナップはほとんどがSFやファンタジィで、小川一水の『天冥の標』から伊藤計劃の『虐殺器官』『ハーモニー』といった定番の作品から、この数ヶ月に出たような最新の作品まで幅広く揃っている。ハヤカワ文庫JAは先日出た『異常論文』で総計1500点になり、700点強は(電子書籍がない作品も多いことを考えると)かなりのカバー率となる。 新作・準新作 隷王戦記1 フルースィー

                                              ハヤカワ文庫JAから700点以上が50%割引の大型セールがきたのでおすすめを紹介する。 - 基本読書
                                            • 2020年の読むべき日本SF短篇が一冊であらかたカバーできる、竹書房文庫の年刊日本SF傑作選!──『ベストSF2021』 - 基本読書

                                              ベストSF2021 (竹書房文庫, お6-2) (竹書房文庫 お 6-2) 作者:大森 望竹書房Amazon2020年に発表された日本SF短篇の中から、大森望が傑作をよりすぐったのがこの竹書房から刊行されたアンソロジー『ベストSF2021』である。2019年作品版の『ベストSF2020』が2020年の7月頃に出ていたことを考えると、21年の年末ぎりぎりに刊行されたこの『ベストSF2021』は書名も相まって21年の傑作が集められているように錯覚してしまうが、最初に書いたように発表年はすべて2020年のものなので注意。 20年は日本SF、特に短篇が読めていなかったのではじめて読んだ作品が多かったという個人的事情もあるけれども、今回の『ベストSF2021』は、作品内容も僕の好みド真ん中をついてくるものが多くて、前年のアンソロジーと比べても高い満足感を与えてくれた。総作品数は11作家11作品、ペー

                                                2020年の読むべき日本SF短篇が一冊であらかたカバーできる、竹書房文庫の年刊日本SF傑作選!──『ベストSF2021』 - 基本読書
                                              • 『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集──『人間たちの話』 - 基本読書

                                                人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA) 作者:柞刈 湯葉発売日: 2020/03/18メディア: 文庫『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集がこの『人間たちの話』である。小説はだいたい人間の話をするものだから「人間たちの話」と題がついている──わけではなく、本書の中で唯一描き下ろしされている短篇が表題作となっているのだ。で、この表題作は当然今回始めて読んだんだけどこれがまたすごくて──と、詳細はのちに譲るが、柞刈湯葉という作家の無数の側面を堪能できる短篇集が揃っている。 横浜駅が改築を繰り返していって次第に自己増殖し日本中を覆い尽くすまでになったら──を椎名誠✕BLAME!的に描き出した『横浜駅SF』。地球が膨張して東京↔大阪間が5000kmもある特殊な日本でのぐだぐだな大学生活を描いた『重力アルケミック』。ほとんどの人間はもはや働く必要がなくなった未来でほとんど趣味として職安をやってい

                                                  『横浜駅SF』の柞刈湯葉による初のSF短篇集──『人間たちの話』 - 基本読書
                                                • 『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』訳者解説 | ためし読み 大久保ゆう

                                                  ハイファンタジーの傑作『ゲド戦記』や両性具有の世界を描いたフェミニズムSF『闇の左手』などの名作を生み出し、文学史にその名を刻んだアーシュラ・K・ル=グウィン。そのル=グウィンが「自作の執筆に励んでいる人たち」に向けて、小説執筆の技巧(クラフト)を簡潔にまとめた手引書『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』が刊行されました。 今回は本書翻訳者の大久保ゆうさんによる「訳者解説」をためし読みとして無料公開いたします。 訳者解説 船 そのもの 船 自分 ひとりが 乗組員 自分も まだ知らない自分の人生 アーシュラ・K・ル゠グウィン最後の詩集『ここまで上々』(So Far So Good: Final Poems: 2014-2018, Copper Canyon Press, 2018)に収められたゆるやかな物語性を持つ連詩「ここに至るまで」(“So Far”)もまた、航海をテーマにした作品で

                                                    『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』訳者解説 | ためし読み 大久保ゆう
                                                  • 人工知能学者とSF作家がタッグを組んで、AIの能力が向上し人間の仕事がなくなった未来の社会を想像する──『AI 2041 人工知能が変える20年後の未来』 - 基本読書

                                                    AI 2041 人工知能が変える20年後の未来 (文春e-book) 作者:カイフー・リー(李開復),チェン・チウファン(陳楸帆)文藝春秋Amazonこの『AI 2041』は、人工知能学者の李開復(元Google中国の社長)が2041年における未来予測と解説を担当し、『荒潮』などの著作のあるSF作家陳楸帆が未来に生き生きとしたストーリー的肉付けを与え短篇に仕立て上げる形で合作されたノンフィクション✗SFな一冊である。「AIが当たり前のように生活を支配している」未来社会を、実感を持って描き出すために物語(短篇)をつかっていく構成になる。 一般的にいって、そうした具体的な情報を伝えるための意図を持った物語(小説でも漫画でも)は教科書的になって物語としてのおもしろさは犠牲になることが多いのだが、本作の凄いところは一つひとつの短篇が陳楸帆の作品としておもしろく読めるところにある。本書の短篇部分だけ

                                                      人工知能学者とSF作家がタッグを組んで、AIの能力が向上し人間の仕事がなくなった未来の社会を想像する──『AI 2041 人工知能が変える20年後の未来』 - 基本読書
                                                    • 2019年の傑作日本SF短篇がこの一冊に! 竹書房から新生した《ベスト日本SF》シリーズ──『ベストSF2020』 - 基本読書

                                                      べストSF2020 (竹書房文庫) 発売日: 2020/07/30メディア: 文庫12年に渡って日本SF短篇の中から傑作をよりすぐって編集されてきた東京創元社版の年間日本SF傑作選が昨年終了してしまった。だが、その後を引き継ぐのがこの『ベストSF2020』! 刊行は東京創元社でもなければ早川書房でもなく、近年積極的にSFを刊行しはじめ、SF界隈で大きな存在感を持つに至った竹書房である。 日下三蔵&大森望タッグで編集されていた創元版の傑作選だが、この竹書房版は大森氏一人選者となっている。今回は選者が一人になったこともあって、初心に戻って「一年間のベスト短編を十本前後選ぶ」という方針に立ち戻っていて、これは個人的には良いことであると思う。アンソロジー、それも傑作選を編む時にあれも入れたいこれも入れたいという思いから長くなるのは当然である。だが、分厚けりゃ分厚いほどに読む側としてはうんざりさせら

                                                        2019年の傑作日本SF短篇がこの一冊に! 竹書房から新生した《ベスト日本SF》シリーズ──『ベストSF2020』 - 基本読書
                                                      • アメリカでベストセラー上位に食い込んだ「ほぼ日」の『岩田さん』 Ask Iwata

                                                        編集:Hobonichi 翻訳:Sam Bett Publisher : VIZ Media LLC アメリカでの刊行日:April 13, 2021 Hardcover : 176 pages ISBN-10 : 197472154X ISBN-13 : 978-1974721542 読みやすさ:5 ジャンル:翻訳書、エッセイ、伝記、ビジネス アメリカで出版された本の売れ行きの85%を把握している「ブックスキャン」の4月11日から17日までの報告を読んでいて、ハードカバーのノンフィクション部門で『Ask Iwata』が全米で8位に入っているのを知った。著者名の欄に翻訳者のSam Bettの名前が間違って記入されていたが、これは4月13日にアメリカで発売されたほぼ日刊イトイ新聞編集の『岩田さん』の英語版である。このレポートでは、13日から5日間に11,569冊が売れたということだ(次の週か

                                                          アメリカでベストセラー上位に食い込んだ「ほぼ日」の『岩田さん』 Ask Iwata
                                                        • プーチンとソローキン──対峙する二人の「怪物」|Web河出

                                                          ロシアによるウクライナ侵攻を受けて書かれたウラジーミル・ソローキン(*)のエッセイ「プーチン 過去からのモンスター」は多くの海外メディアに掲載された。「文藝 2022年夏季号」(2022年4月7日発売)では、オリジナルのロシア語テクストからの全訳を緊急掲載している。 その掲載を受け、ソローキンの多くの作品の訳者であり、「プーチン 過去からのモンスター」を翻訳した松下隆志氏による、ソローキン作品とプーチンに関するエッセイを掲載します。 *ウラジーミル・ソローキン 1955年ロシア生まれ。コンセプチュアリズム芸術運動に関わりながら、非公式に作家活動を行う。「現代文学のモンスター」の異名をとる。主な作品に『ロマン』『青い脂』『氷三部作』『テルリア』、短篇集『愛』など。 対峙する二人の「怪物」 松下隆志 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受け、ソローキンは速やかに「過去からのモンスタ

                                                            プーチンとソローキン──対峙する二人の「怪物」|Web河出
                                                          • 『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによる、今年ベスト級のSF短篇集──『いずれすべては海の中に』 - 基本読書

                                                            いずれすべては海の中に (竹書房文庫) 作者:サラ・ピンスカー竹書房Amazonこの『いずれすべては海の中に』は、(新型コロナウイルスをめぐる状況の)予言的な作品として話題になった『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによるSF中心の短篇集である。2013年から2017年にかけて様々な媒体に書いた短篇を集めたもので、邦訳では『新しい時代への歌』が先行したが、これが著者の初単行本となる。 長篇しか読んだことがなかったので、短篇にはそこまで期待せずに読み始めたのだけどこれが大ヒット。文章はまるでひとつの曲のように詩的で、思いがけない発想、表現がどの短篇にも盛り込まれ、独自の世界観にたっぷりと浸らせてくれる。僕の大好きな要素が詰まった短篇集で、特に中篇の「風はさまよう」は読んでいて思わず身を乗り出すようなおもしろさがあった。今年もさまざまな短篇集・アンソロジーが出ているが、今のところはこれが個人

                                                              『新しい時代への歌』のサラ・ピンスカーによる、今年ベスト級のSF短篇集──『いずれすべては海の中に』 - 基本読書
                                                            • 『三体』の劉慈欣による本邦初の短篇集、劉慈欣は長篇だけでなく短篇もおもしろい!──『円』 - 基本読書

                                                              円 劉慈欣短篇集 作者:劉 慈欣早川書房Amazonこの『円 劉慈欣短篇集』は、『三体』の著者劉慈欣による本邦初の短篇集である。中国での短篇集の翻訳かと思ったら、作品選択は原著者側によるもので、どのような意図があるのか訳者にもわかっていないらしい。ただそれで謎のセレクションになっているかといえばそうでもなく、1999年のデビュー作から2014年の作まで、キャリアを概観できるような作品集(13篇)になっている。これがまたおもしろいんだ。 劉慈欣の短篇が素晴らしいのは映画『流転の地球』の原作にもなった「さまよえる地球」をはじめとした邦訳作の数々からとっくに知っていたつもりだったが、通して読んでみるとそれでもまだナメていたなと実感させられた。科学と芸術の意味を高らかに謳い上げ、人類の歴史やその本質に接続してみせる、そんな『三体』の要素を凝縮したような高密度の短篇ばかりで、読み終えた時の満足感はと

                                                                『三体』の劉慈欣による本邦初の短篇集、劉慈欣は長篇だけでなく短篇もおもしろい!──『円』 - 基本読書
                                                              • book@holic – ブッカホリック

                                                                幽の書評vol.12 辻村深月『ふちなしのかがみ』 2019/2/10 幽の書評 声にならない呟きが空間を満たしていく いつか恐い話を書くだろうな、と予感はしていた。辻村深月のことだ。彼女の書くミステリー小説には、声にならない囁きが満ちていたからである。辻村作品を読むと、いつも青春時代の暗い面に思いを馳せさせられる。たとえば『太陽の坐る場所』(文藝春秋)を読めば、行間からアノトキハ言エナカッタ……、本当ノ私ハココニイル人間デ... 記事を読む 幽の書評VOL.11 高橋克彦『たまゆらり』 2019/2/9 幽の書評 途切れた記憶が思わぬ魔を呼びよせる 高速で空中を動き回る、黒い玉がある。ビデオ映像などに写りこんだ謎の物体は、たまゆらと名づけられた。〈私〉は、その正体を解明したいという思いに駆り立てられるのだが――。 『たまゆらり』は、不思議現象に取りつかれた男を描く標題作をはじめ、全十一篇

                                                                  book@holic – ブッカホリック
                                                                • 世界を決定的に変えてしまう技術や出来事が描かれるSF短篇が集まったアンソロジー──『フォワード 未来を視る6つのSF』 - 基本読書

                                                                  フォワード 未来を視る6つのSF (ハヤカワ文庫SF) 作者:ブレイク クラウチ,ベロニカ ロス,N K ジェミシン,エイモア トールズ,ポール トレンブレイ,アンディ ウィアー早川書房Amazonこの『フォワード 未来を視る6つのSF』は、アンディ・ウィアー、N・K・ジェミシンなど今欧米圏で話題の作家ら6人が短篇を寄せたアンソロジーになる。 編者は自身も本作に短篇を寄せているブレイク・クラウチで、テーマとしては急速な変化と技術の進歩、その中で育つことの意味について。また数々の変化が世界をどのように変えてしまうのか。変えるべきなのか、変化を防ぐべきなのかといった「未来」について──といったあたりで、けっこうざっくりとしている。 とはいえ、上記の3人にベロニカ・ロス、エイモア・トールズ、ポール・トレンブレイを加えたベテラン&人気作家の計6人が、人間以上の存在となったAI、遺伝子改変、量子コン

                                                                    世界を決定的に変えてしまう技術や出来事が描かれるSF短篇が集まったアンソロジー──『フォワード 未来を視る6つのSF』 - 基本読書
                                                                  • 小川洋子「人生で起こることの大半には、明確な理由を与えることはできないものです」 | 四半世紀前の小説が私たちに語ること

                                                                    1994年に小説『密やかな結晶』を著したとき、小川洋子は自身が創造したディストピアが四半世紀後に私たちが生きる現実にぴったり合致することになろうとは、想像もしていなかった──科学技術を駆使した大規模な監視、地球の破壊、そして世界規模のパンデミックの狭間にある現実に。 「文学は、謎めいていると同時に魅惑的です。一つの時代で尽きることはなく、また一つの固定された読み方もありません。ですから文学は、100年後の読者たちにも新たな解釈を与え続けてくれる。26年という歳月は、文学においてはほとんど無に等しいものです。これを書いたときには、私自身も現在のパンデミックを想像できませんでした」 小川は、日本からメールでそう答えた。 小川洋子(58)は、称賛して止まないノーベル文学賞受賞者・大江健三郎の足跡を追うように文学に足を踏み入れた。ひそかに執筆を始め、1988年に処女小説『揚羽蝶が壊れる時』(『完璧

                                                                      小川洋子「人生で起こることの大半には、明確な理由を与えることはできないものです」 | 四半世紀前の小説が私たちに語ること
                                                                    • 終末の予感だけがただひたすらに蔓延する小説──『穴の町』 - 基本読書

                                                                      穴の町 作者: ショーン・プレスコット,北田絵里子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: 単行本この商品を含むブログを見る本書『穴の町』はオーストラリアの作家ショーン・プレスコットの長篇小説のデビュー作である。「世界文学」としか言いようがない本作なのだが、僕はそうした前情報を一切知らずに「なんとなくおもしろそうだな」ぐらいで買って読み始めた。 そしたらどうだ! あまりにも巧みな筆致──カフカやら村上春樹やらいろいろな作家の要素を思い起こさせるのだが、同時にその組み合わせや全体のトーン、突拍子もない話の展開、会話のリズムなどは完全にオリジナルな自分の言葉であり、まずその語り口にぞっこん惚れ込んでしまった。不条理小説であり、あるいは終末SF的であり、ファンタジィというか幻想小説的であり、理屈が通ったと思ったら通らず、異常に人々が気づいたと思ったら気づいてくれず、と

                                                                        終末の予感だけがただひたすらに蔓延する小説──『穴の町』 - 基本読書
                                                                      • 『三体』の二次創作小説でデビューした宝樹による、時間SF短篇集──『時間の王』 - 基本読書

                                                                        時間の王 作者:宝樹早川書房Amazon次々と表現規制が行われており、今後中国の小説や漫画やゲームはいったいどうなってしまうのだろうかと戦々恐々と見守っている昨今だが、そんな最中でも中国SFは本邦で多数邦訳・刊行されている。劉慈欣の『三体』の二次創作小説をネットにアップしそれが大きく話題となって、そのまま劉慈欣公認で出版社から刊行されたことでデビューした宝樹による、時間SF短篇を集めた『時間の王』もそんな中の一冊である。 宝樹の短篇は、ケン・リュウによって編集された現代中国SFアンソロジー『月の光』や、中国史をテーマにしたSFを集めた日本オリジナルのアンソロジー『移動迷宮』などにすでに収録されていて、作家としての力量と作品のおもしろさは充分にわかっていたから本作にも期待していたのだけれど、予想にたがわずおもしろかった。 時間SFテーマなのでメインのギミックはタイムトラベルになるが、歴史テー

                                                                          『三体』の二次創作小説でデビューした宝樹による、時間SF短篇集──『時間の王』 - 基本読書
                                                                        • 何もかも不安定な今だからこそ。8/25発売SFマガジン特集「SFをつくる新しい力」予告|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                                                          8/25(金)発売、SFマガジン10月号特集「SFをつくる新しい力」の内容を公開します! 文芸ジャンルとして長い歴史を持つSFの、最新世代の読み手たちにスポットを当てた特集。計400名あまりの10~20代SF読者から回答が寄せられたアンケート結果を中心に、SF入門篇ブックガイド2023や、選りすぐりの最新翻訳SF、SFファン活動の歴史と最先端を紹介するエッセイ・評論などでお届けします。世界も気温もTwitterも不安定な今だからこそ、読書を愛する人たちの新たなつながりについて考えてみました。 SFマガジン2023年10月号 特集「SFをつくる新しい力」 特集監修:橋本輝幸※以下、記事タイトルはすべて仮題。 ■読者アンケート企画 10~20代SF読者向けアンケート結果発表 ■SF小説入門作品ガイド(おすすめ作品診断チャート付き) あわいゆき/大恵和実/大戸又/岡野晋弥/蟹味噌啜り太郎/紅坂紫

                                                                            何もかも不安定な今だからこそ。8/25発売SFマガジン特集「SFをつくる新しい力」予告|Hayakawa Books & Magazines(β)
                                                                          • 薄い本を読むパート3 - Close To The Wall

                                                                            薄い本を読むパート2 - Close To The Wall 一年おきにやってる気がするこれ、三回目。今回は厳密ではなく本文200ページ前後、とややゆるめに選んだ20冊。冊数も記事も分量が増えて行っている。 フリオ・ホセ・オルドバス『天使のいる廃墟』 ミルチャ・エリアーデ『令嬢クリスティナ』 フランツ・カフカ『変身』 アントニオ・タブッキ『島とクジラと女をめぐる断片』 イタロ・カルヴィーノ『ある投票立会人の一日』 スティーヴン・ミルハウザー『魔法の夜』 パーヴェル・ペッペルシテイン『地獄の裏切り者』 イマヌエル・カント『永遠の平和のために』 閻連科『年月日』 宮内悠介『黄色い夜』 ヴァージニア・ウルフ『フラッシュ』 ティモシー・スナイダー『暴政』 フリオ・リャマサーレス『黄色い雨』 ウンベルト・エーコ『永遠のファシズム』 アレホ・カルペンティエール『時との戦い』 中井英夫『幻想博物館』 ジ

                                                                              薄い本を読むパート3 - Close To The Wall
                                                                            • 韓国作家チョン・セランによる、異能力を持った保健室の先生を軸にしたほのぼの学園もの──『保健室のアン・ウニョン先生』 - 基本読書

                                                                              保健室のアン・ウニョン先生 (チョン・セランの本) 作者:チョン・セラン発売日: 2020/03/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この『保健室のアン・ウニョン先生』は韓国でホラー、ファンタジー、SFと様々なジャンルの作品を横断しながら作品を発表しているチョン・セランによる連作短篇集である。幽霊的なアレが見えるなどの特殊な異能力を持った保健室の先生を中心として、彼女の周りで起こるさまざまな怪事件を扱った短篇が揃っている。 この学校にはとにかく、何かいる。出勤初日から感じていた。アン・ウニョンは残念ながら、ただの養護教諭ではない。ウニョンのバッグの中にはいつも、BB弾の銃とレインボーカラーの、円錐形に折りたためるおもちゃの剣が入っていた。なんでまともな三十代の女性がこんなものを毎日持って歩かなくちゃいけないのかと思うとむしゃくしゃしないでもなかったが、仕方ない。ほんとは、まともじゃないか

                                                                                韓国作家チョン・セランによる、異能力を持った保健室の先生を軸にしたほのぼの学園もの──『保健室のアン・ウニョン先生』 - 基本読書
                                                                              • ナチスが焼いた本のリスト、国際宇宙ステーションにある本、ハリポタの次に読む本……本のリストが面白い

                                                                                ナチスが焼いた本のリスト ナチスが焚書した本は4,000を超えており、その全容は把握しきれない。だが、焼かれた本の一部は分かっており、”A Book Of Book Lists” でリスト化されている。これを見ると、ナチスが何を恐れていたかが、よく分かる。 武器よさらば(アーネスト・ヘミングウェイ) いかにして私は社会主義者となったか(ヘレン・ケラー) 野性の呼び声(ジャック・ロンドン) 鉄の踵(ジャック・ロンドン) 世界史概観(H.G.ウェルズ) 理性に訴える(トーマス・マン) ジークムント・フロイトの全著作 ISS(国際宇宙ステーション)にある本 宇宙ステーションで働く人々は超忙しいので、本読んでるヒマなんてないのでは? と思うのだが、リラックスのための読書は必須らしい。数十年にわたり私物として持ち込まれ、そのままライブラリー化しており、シリーズものが充実している。 ファウンデーション

                                                                                  ナチスが焼いた本のリスト、国際宇宙ステーションにある本、ハリポタの次に読む本……本のリストが面白い
                                                                                • SFの歴史を継いでいくこと。ベストSF第1位記念・伴名練インタビュー|Hayakawa Books & Magazines(β)

                                                                                  2月発売の『SFが読みたい!』に掲載された、伴名練氏へのインタビューをWEB公開します。『なめらかな世界と、その敵』が国内篇ベスト1位を獲得したベストSFランキングの詳細はこちらをご覧ください。 ■伴名練、この10年 ──ベストSF2019[国内篇]の第1位、おめでとうございます。 伴名 ありがとうございます。『なめらかな世界と、その敵』はどの短篇も自分一人で書いたというイメージが薄くて、SFの歴史に力を借り、多くの書き手・読み手の方々が作ってきた流れのうえに乗せたと思っている作品ばかりです。そんな本で1位をとれたことを非常に嬉しく思いますし、投票してくださった方々に心から感謝を申し上げたいです。最初の本が出版されてからこの本が出るまでの9年間に、筆を折りかけることが何度もありましたが、書き続けた結果こういった栄誉に預かることができて、報われたという思いで一杯です。 ──デビュー作『少女禁

                                                                                    SFの歴史を継いでいくこと。ベストSF第1位記念・伴名練インタビュー|Hayakawa Books & Magazines(β)