私が高校生の頃の話だ。 いつもおとなしくほとんど会話をしない田中くん(仮称)が、 ある日突然、髪を茶色に染めてきた。 それも普通の染め方ではない。 髪の一部だけを染める「メッシュ」という染め方だ。 しかも色は割と明るく目立つ色、 公立高校だったから別に規則は厳しくなかったけれど、 その田中くんの姿に周囲はざわつく。 全然そういうタイプではなかったからだ。 「ざわつき」とは裏腹に、 その後も田中くんは周囲の目を気にすることなく、 相変わらずおとなしく過ごす。 「変わったのは彼の髪の毛の一部分だけ」 「ざわついた」のは当日だけで、 その後は何事もなかったかのように周囲も落ち着きを取り戻す。 だけれども、しばらくすると、 噂を聞き付けた「やんちゃボーイ」が田中くんに近づき、 「なんで髪染めてきたの?」とからかう。 それに対して田中くんは俯いて何も答えない。 するとやんちゃボーイ、 「全然似合わな