並び順

ブックマーク数

期間指定

  • から
  • まで

81 - 120 件 / 373件

新着順 人気順

訳したの検索結果81 - 120 件 / 373件

  • タイラー・コーエン「男女交際に関する実におどろきのデータ」(2019年11月16日)

    [Tyler Cowen, “Pretty stunning data on dating,” Marginal Revolution, November 16, 2019] 全体をとおして面白いけれど,ばつぐんに面白いのは pp.5-6 で,男性が女性をどう評価するのかと,女性が男性をどう評価するのかを比較している.そのうち,半分はこんな感じ〔交際相手マッチングサイト OKQupid のデータ〕: [キャプション:「女性による男性評価が描く曲線は,クロックス/カーゴパンツの所有率に近似すると想定される.「もっとも魅力的」と評価された男性が 0% なのもなっとくがいく.男性なら誰でも少なくともカーゴパンツをひそかに1着もっているのを女性はお見通しなのだ.」] リンクはこちら.Dan McMurtrie による文章だ (via David Perell).p.2 の上側に掲載されてるグラフは

      タイラー・コーエン「男女交際に関する実におどろきのデータ」(2019年11月16日)
    • ノア・スミス「世界を救った研究がノーベル経済学賞を受賞」(2022年10月12日)

      [Noah Smith, “An Econ Nobel for research that saved the world,” Noahpinion, October 12, 2022] [ノーベル経済学賞の委員会も,授賞の発表でこの映画を引用してるよ!] バーナンキ,ダイアモンド,ダイビッグは,銀行が破綻する理由を解明した――ひいては,銀行破綻で経済が道連れになる理由も 2022年のノーベル経済学賞は,ベン・バーナンキ,ダグラス・ダイアモンド,フィリップ・ダイビッグにおくられた.受賞理由は,銀行破綻・金融危機に関する彼らの研究業績だ.今回の授賞は,おくられるだけの理由がたっぷりあるとぼくは思ってる――現在進行で経済を救う研究をやった経済学者なんて,ほとんどいない. ただ,同時に,今回の授賞はちょっぴり意外にも思った.というのも,ノーベル経済学賞ってのは――自然科学の賞とちがって――たいて

        ノア・スミス「世界を救った研究がノーベル経済学賞を受賞」(2022年10月12日)
      • アレックス・タバロック「モンティ・ホール問題の直観的にわかりやすいバージョン」(2019年9月19日)

        [Alex Tabarrok, “The Intuitive Monty Hall Problem,” Marginal Revolution, September 19, 2019] いろんなパズルは,ある角度から眺めたときには解きにくいのに視座を変えてみたらかんたんになることがよくある.Q&Aサイトの StackExchange に,モンティ・ホール問題と本質は同じで正解を切り替えるかどうかの正しい選択が一目瞭然なものはなにか,という質問があがっている.ジョシュア・B・ミラーが,見事な回答を寄せている.おさらいしておくと,もともとのモンティ・ホール問題では,3つ並んだドアのうち1つにすてきな賞品が待っていて,回答者がどれか1つを選ぶと,司会者のモンティ・ホールが残り2つのうち1つを開けてハズレなのを見せる(開けるのは必ずハズレの方だ).これを見たあとで,ドアの選択を切り替えるか,それと

          アレックス・タバロック「モンティ・ホール問題の直観的にわかりやすいバージョン」(2019年9月19日)
        • タイラー・コーエン「福祉給付は犯罪を抑える?」(2022年5月8日)

          [Tyler Cowen, “Do welfare payments limit crime?” Marginal Revolution, May 8, 2022] 補助的保障所得 (SSI) をやめた場合に刑事犯罪に生じる影響は,その後20年以上にもわたって永続する. やめた時点での SSI 受給者への影響が徐々に減少した後にすら,続くのである.SSI 廃止への反応として,若年層では,労働市場で年 15,000ドルの安定雇用を維持する確率に比べて,所得を生じさせる違法行為の容疑で逮捕される確率は2倍になる.こうした嫌疑の結果として,収監される年間の確率は,SSI 廃止後の20年で統計的に有意な 60% の上昇を示す.SSI 廃止による法執行と収監が納税者たちにもたらすコストは非常に高く,SSI 給付による支出減の大半を相殺する.. さらに: 嫌疑数の増加は,所得発生を主な動機とする犯罪行

            タイラー・コーエン「福祉給付は犯罪を抑える?」(2022年5月8日)
          • ノア・スミス「うん,もちろん TikTok は禁止すべきだよ」(2023年3月20日)|経済学101

            武器に転用された相互依存を減らすトランプが試みて失敗したことを,いまバイデンと議会が試みている:中国企業が所有している動画アプリ TikTok の強制的な禁止だ.親会社の ByteDance が同アプリをアメリカ企業に売却しないかぎり,アメリカ国内での運営を強制的に停止しようと,バイデンたちは試みている.これには理由が2つある.そして,そのどちらも,「アメリカの子供たちの注意力が下がるのを防ぎましょう」とか「アメリカ企業を競争から救いましょう」といった話と関係がない. TikTok禁止に動いている理由は次の点にある: TikTok はアメリカ人ユーザーたちに関するデータを中国共産党に送信していて, しかもTikTok はおそらく中国寄りの検閲を受けており,アメリカ人ユーザーたちが中国共産党のさまざまな目標を支持するように誘導しようと試みている. ごく簡潔に,それぞれの理由について話そう.ス

              ノア・スミス「うん,もちろん TikTok は禁止すべきだよ」(2023年3月20日)|経済学101
            • ノア・スミス「東京は新しいパリだ」(2023年7月17日)

              「しあわせに暮らせる場所は,この世に2つだけ.我が家と,パリだ.」――アーネスト・ヘミングウェイ 地上で最高の都市はどこだろう? 「ニューヨーク市」って答える人がいても,笑い飛ばしたりはしない.いまなお名目上は世界最大の経済大国で金融ハブの役回りをしているニューヨーク市は,他のどこの都市でもかなわないほどの経済力を有しているし,地球上の名もなき数百万もの人々にとって,いまでもあそこは夢の都市だ.「上海」って答えが返ってきたら,ぼくとしては懐疑的になってちょっと口を「へ」の字に曲げてしまうかもしれない.とはいえ,富と権力の中心としていずれ中国が先進諸国を圧倒する定めにあると思ってる人にとっては,上海はなるほど論理的な選択だろうね. でも,実のところ,最高の都市といったら東京だ. かくいうぼくは,またまた東京にいくべく支度を調えてるところだ.今年は,これで三度目になる.今度はじめて東京を訪れる

                ノア・スミス「東京は新しいパリだ」(2023年7月17日)
              • ノア・スミス「新しい労働運動のステキなところ」(2022年5月17日)

                [Noah Smith, “Why I love the new labor movement,” Noahpinion, May 17, 2022] 新しいサービス業の階級には,発言力が必要だった.で,それがいま手に入った このところ,アメリカ人の多くは,もっぱら災厄や脅威に関心を注いでいる――テロ攻撃,上院の判決,戦争,選挙結果に異議を唱えられる脅威.ときに,こういうおぞましいニュースが行列をなしてやってくると,まるで世の中のなにもかもがマズイことになっているように思えることがある.でも,他のところに目を向けると,明るいこともある.そのひとつは,新しい労働運動だ. その先陣を切っているのが,スターバックスだ.バッファローの店舗を起点に,代表的なコーヒーチェーンで労組が組織されはじめると,この動きは急速に全米に広まりつつある.いまでは,およそ70店舗で労組ができあがっている. Last

                  ノア・スミス「新しい労働運動のステキなところ」(2022年5月17日)
                • ノア・スミス「働く女性たちの物語にノーベル経済学賞」(2023年10月12日)|経済学101

                  クラウディア・ゴールディンはいかにしていろんな糸をひとつに紡ぎ合わせたかBy Editing1088 - Own work, CC BY-SA 4.02023年のノーベル経済学賞は,クラウディア・ゴールディンにおくられた.労働市場で女性に生じた変化に関する研究が受賞理由だ.彼女が受賞してすごくびっくり,ということはない.経済学者たちのあいだでは,ゴールディンは実証経済学で進んだ「信頼性革命」(“credibility revolution”) の主要な先駆者の一人と広く認められているからだ. ノーベル経済学賞(お好みなら「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」と呼んでもいい)についてぜひ理解しておいた方がいいのは,これが典型的に研究手法の賞だってことだ.化学や医学みたいに特定の発見を称えるのではなく,ノーベル経済学賞では,いろんな発見をするための新しい方法を開発した研究者

                    ノア・スミス「働く女性たちの物語にノーベル経済学賞」(2023年10月12日)|経済学101
                  • サイモン・レン=ルイス「COVID-19パンデミック下とその後の財政政策」(2020年12月1日)

                    [Simon Wren-Lewis, “Fiscal policy during and after the coronavirus pandemic,” Mainly Macro, December 1, 2020] 先日行われたこのセミナーに触発されたのもこの記事を書こうと思ったきっかけだが,同時に,The Resolution Foundation から出たこの見事な論文にも触発された.長文失礼.だが,とりあげるべき事柄が多いのだ. この記事は5パートにわかれる.最初のパートでは,過去10数年に財政政策の理解がどう発展してきたかに目を向ける.パンデミック下で財政政策をどう実施すべきかを考えるのに,この点は必須の背景知識だ.2つ目のパートでは,パンデミック下の財政政策支援に目を向ける.3つ目のパートでは,大衆がワクチンを接種した結果としてパンデミックが実質的に終わったときから,経済が完

                      サイモン・レン=ルイス「COVID-19パンデミック下とその後の財政政策」(2020年12月1日)
                    • ノア・スミス「パレスチナ抗議運動は若者世代を代表していない」(2024年5月10日)

                      我ながら,パレスチナ抗議運動について書くのにはだいぶ飽きてる.2週間前の記事で言いたいことはだいたい言い尽くしていて,この運動全体がちょっとつまらないというのがぼくの中心的な論点だった.ただ,最近出たこの世論調査の結果は掲載した方がよさそうだ.というのも,ぼくが言ってたことはだいたいこれで裏付けられるからだ. Generation Lab は1250名の大学生を対象に調査を実施して,自分がとくに重要だと思う3つの問題を彼らに選んでもらった.パレスチナに言及したのは,たった 13% だけだった: Source: Axios この世論調査について,Axios がもうちょっと詳しいことを言っている: 抗議運動のいずれかの側に参加したことのある学生は,わずかな少数派にすぎない (8%).(…) この調査では,ガザの目下の状況に責任があるのは誰かという質問に対して,バイデン大統領と答えた学生の3倍も

                        ノア・スミス「パレスチナ抗議運動は若者世代を代表していない」(2024年5月10日)
                      • ノア・スミス「新しいマクロ経済学:「みんなにお金あげろ」」(2020年12月6日)

                        [Noah Smith, “The new macro: ‘Give people money‘”, Noahpinion, December 6, 2020] 今回の苦境では経済理論は主役をおりている この前 Twitter でジョークをつぶやいた.この10年でマクロ経済学がどう変わったかってネタだ: ・2010年のマクロ経済学: 「確率的均衡を定義する要因は右のとおりである―――消費経路(…),物価(…),賃金(…),政策の各種変数(…).政策変数には次のようなものがある(以下略)」 ・2020年のマクロ経済学: 「みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお金あげろー.みーんなにお」 もちろん,学術的なマクロ経済学をやっている人の誰一人として,ただひたすら文字通り「みーんなにお金あげろー」と叫ぶばかりの理論系論文を公表してなんかいない.でも,政策の水準では,〔2008

                          ノア・スミス「新しいマクロ経済学:「みんなにお金あげろ」」(2020年12月6日)
                        • アレックス・タバロック「同じ量のワクチンで接種回数を2割増しにする魔法とサプライチェーン最適化」(2021年1月14日)

                          [Alex Tabarrok, “The Magical Extra Doses and Supply Chain Optimization,” Marginal Revolution, January 14, 2021] ファイザー製ワクチンを使って薬剤師たちがワクチン接種をはじめたところ,標準的な 5回分小瓶から 6回~7回の投薬が可能なのを発見した.追加分はどこから生まれたんだろう? べつに,規定量を超える量が瓶につめられていたわけじゃない.小瓶には,標準的な注射器を使ったらきっかり5回分になる量しか入っていない.ところが,ワクチン接種会場によっては,死容積が少ない注射器が利用できたところがあった.「死容積が少ない」とは,注射が終わったときに吸引具と注射針のあいだに残るワクチンが少なくてすむ,ということだ.このため,死容積が少ない注射器を使うと,注射器に残ったまま無駄になるワクチンが

                            アレックス・タバロック「同じ量のワクチンで接種回数を2割増しにする魔法とサプライチェーン最適化」(2021年1月14日)
                          • タイラー・コーエン「スウェーデンでは,ワクチン接種した人にお金をあげるんですって(実験で)」(2021年7月26日)

                            [Tyler Cowen, “Sweden will pay people to get vaccinated,” Marginal Revolution, July 26, 2021] 少額の現金インセンティブでワクチン接種が改善できるかどうかを検証するヨーロッパ最大規模のテストで,スウェーデンのボランティアたちは免疫化に1人当たり17ポンド支払われる(…) ルンド大学の経済学教授 Erik Wengstrom が主導するスウェーデンの研究では,もっと穏当な手法が用いられている. 今後数週間にわたって,60歳以下でワクチン未接種の人々 8,200名が複数のグループにわけられる.一部のグループは,ワクチンを接種すれば,たいていの店舗で利用できる200スウェーデンクローナ(およそ2,550円)相当のバウチャーが渡される. このお金は,他国で検討中の金額に比べて数割だが,Wengstrom に

                              タイラー・コーエン「スウェーデンでは,ワクチン接種した人にお金をあげるんですって(実験で)」(2021年7月26日)
                            • ノア・スミス「緊縮の時代が到来しそう」(2023年9月18日)|経済学101

                              Photo by Towfiqu barbhuiya on Unsplashもう2010年代じゃない子供の頃に見た1992年大統領選挙のことは,いまでも覚えてる――まともに物心ついてて意識したはじめての選挙が,あれだった.最大の争点は連邦政府の財政赤字だった.18年にわたって長らく政府の借り入れが続いたあと,ビル・クリントンと独立系候補のロス・ペローは,財政緊縮を要求していた.現職候補だった H.W.ブッシュは,民主党を増税して支出する党だと弱々しく言ったけれど,彼の抗議は少しばかり空疎に響いた.なにしろ,12年にわたって増税しなくても支出はしていたからだ(ブッシュは増税を試みたけれど,党内からの反逆にあった).結局,勝利したのはクリントンで,1993年に緊縮財政を敷いて増税と政府支出の削減を実行した.それから10年たったとき,連邦政府の予算は黒字になっていた.国民と全米ニュースの大半は,

                                ノア・スミス「緊縮の時代が到来しそう」(2023年9月18日)|経済学101
                              • タイラー・コーエン「人口から規制が予想できる――けど,なんでだろ?」(2021年5月21日)

                                [Tyler Cowen, “Population predicts regulation — but why?” Marginal Revolution, May 21, 2021] 全米の州で,人口規模が2倍になると規制が 23%~33% 増える. 〔※ヨコ軸は2000年時点の人口(百万),タテ軸は2018年時点の規制総数(千)〕 この規制と人口の相関は驚くほど頑健だ――オーストラリアの州でもカナダの州でも成り立っているし,限られたデータにもとづいて言えば,さまざまな国々どうしにも成り立っているらしい(たとえば,「自由市場」の合衆国の方が,カナダよりも規制が10倍多い――そして,人口も10倍だ) 相関ははっきりしている一方で,この相関がそこまで強い理由はそんなにはっきりしない.Mulligan & Sheifer の研究では,その理由を規制の固定費に求めている:つまり,政体の規模が大き

                                  タイラー・コーエン「人口から規制が予想できる――けど,なんでだろ?」(2021年5月21日)
                                • サイモン・レン=ルイス「イギリスで景気後退のさなかに財政緊縮をやった事例:1981年と2010年を比べてみると」(2019年8月3日)

                                  サイモン・レン=ルイス「イギリスで景気後退のさなかに財政緊縮をやった事例:1981年と2010年を比べてみると」(2019年8月3日) [Simon Wren-Lewis, “Fiscal tightening in UK recessions: 1981 and 2010 compared,” Mainly Macro, August 3, 2019] 健康で平穏な生活を守るために,Twitter でのやりとりを控えることにしている.ただ,先日,Andrew Dentance とのやりとりを例外にした.論点は,1981年の財政引き締めが2010年の緊縮とどれくらい同等と言えるのか,という点だ.明らかに,これにはあれこれと話を整理するためにちょっと文章を書くしかない.このあと掲載するいくつかのグラフで,1981年/82年(青)と2010年/11年(赤)がGDP に占める割合でみたさまざまな

                                    サイモン・レン=ルイス「イギリスで景気後退のさなかに財政緊縮をやった事例:1981年と2010年を比べてみると」(2019年8月3日)
                                  • タイラー・コーエン「新刊『あなたの起源:子供時代がいかにのちの人生を形成するか』」(2020年3月7日)

                                    [Tyler Cowen, “*The Origins of You: How Childhood Shapes Later Life*,” Marginal Revolution, March 7, 2020] 本書は Jay Belsky, Avshalom Caspi, Terrie E. Moffitt, & Richie Poulton の共著による近刊だ.きっと,この数年でなされた最重要にして最良の研究だと認められることだろう.想像してみてほしい.ニュージーランドのダニーディンに住む人々 1,000人余りの人生を出生から38歳まで追跡して多岐にわたるデータを記録し,さらに,15カ所でイギリス人の双子たちを20歳まで,アメリカ人の子供たちを15歳まで同じように追跡調査していくなんて,いったいどれほどのことがわかるだろう.想像できるかな. とにかく買うべし.さて,研究結果をほんの一

                                      タイラー・コーエン「新刊『あなたの起源:子供時代がいかにのちの人生を形成するか』」(2020年3月7日)
                                    • サイモン・レン=ルイス「パンデミックの経済的影響」(2020年3月2日)

                                      [Simon Wren-Lewis, “The economic effects of a pandemic,” Mainly Macro, March 2, 2020] 10年少し前,医療の専門家たちから連絡をもらった.なんらかのインフルエンザ・パンデミックが発生した場合の経済的な影響を知りたいのだという.彼らが必要としていたのは,一般均衡での影響を見るためのマクロ経済モデルだった.1990年代に,私は小さなチームを率いて,COMPACT というモデルを構築していた.連絡をくれた専門家たちと私で論文を1本書き,のちに Health Economics に掲載された.論文では,それまでになされていた他の研究も参照している. 目下のコロナウイルス感染拡大は,私たちが研究したパンデミックとは特徴が異なっているだろうし,そもそもパンデミックにならないならそれにこしたことはない.(死亡率で見ると,

                                        サイモン・レン=ルイス「パンデミックの経済的影響」(2020年3月2日)
                                      • ボウルズ&カーリン「COVID-19物語で次にくる戦い」(VoxEU, 2020年4月10日)

                                        [Samuel Bowles & Wendy Carlin, “The coming battle for the COVID-19 narrative,” VoxEU, April 10, 2020] 大恐慌や第二次世界大戦は,経済や公共政策についての考え方を変えた.同じく,COVID-19 パンデミックも(気候変動とならんで)同様だ.変わるのは,セミナーや政策シンクタンクの考え方だけではない.ふつうの人々が生計や将来について語る日常の言葉も変わることだろう.政策のさまざまな選択肢がなす政府 vs. 市場の尺度では,左寄りの〔政府重視の〕方向への移行が促されるだろう.だが,もっと重要なのは次の点だ――そうした政府 vs. 市場という一次元の尺度に選択肢を並べる時代錯誤なメニューに替わって,コンプライアンスと物質的な利益を超えた社会的な価値を用いたアプローチが取り込まれるかもしれない. 気

                                          ボウルズ&カーリン「COVID-19物語で次にくる戦い」(VoxEU, 2020年4月10日)
                                        • タイラー・コーエン「都市の歩きやすさは経済的な階層移動を促進する?」(2019年10月6日)

                                          [Tyler Cowen, “Does walkability boost economic mobility?” Marginal Revolution, October 6, 2019] 貧しい家庭出身の子供たちが,大人になってから経済的な階層のはしごを上に登っていく機会がどれくらいあるのか――これを「世代をまたいだ経済的な上方への移動しやすさ」という (intergenerational upward economic mobility).この移動しやすさは,公正な社会に欠かせない特徴だ.アメリカでは,上方への移動しやすさが地域によって大きく異なっている.本研究は,上方への移動しやすさが都市によって容易であったり困難であったりする理由を検討した.我々の研究は,住民の上方への社会的な移動しやすさの鍵となっている要因が都市の「歩きやすさ」(walkability) にあるとつきとめた.「

                                            タイラー・コーエン「都市の歩きやすさは経済的な階層移動を促進する?」(2019年10月6日)
                                          • サイモン・レン=ルイス「景気後退時の量的緩和(お金の創出)はいいことだ,ただし効果的な財政刺激をともなっているかぎりで」(2021年7月27日)

                                            サイモン・レン=ルイス「景気後退時の量的緩和(お金の創出)はいいことだ,ただし効果的な財政刺激をともなっているかぎりで」(2021年7月27日) [Simon Wren-Lewis, “Quantitative Easing (creating money) is fine during a recession, as long as it goes alongside effective fiscal stimulus,” Mainly Macro, July 27, 2021] 誰もが知っているように,イングランド銀行のような中央銀行はお金を創出している.このことを指して,「中央銀行がお金を刷る」と言ったりもする.だが,現実に中央銀行がお金を創出したいとのぞんだ場合には,市中銀行が保有する「準備金」という 一種の電子的なお金を中央銀行がつくりだすことで,それをなしとげる.量的緩和とは,

                                              サイモン・レン=ルイス「景気後退時の量的緩和(お金の創出)はいいことだ,ただし効果的な財政刺激をともなっているかぎりで」(2021年7月27日)
                                            • ノア・スミス「《アメリカによる平和》のあとにやってくるのはうれしくない時代かも」(2023年10月9日)

                                              ジャングルへようこそ 「私は正しいかもしれないし,間違っているかもしれない / ただ,私がいなくなったらきっとあなたはさみしがるね」――タジ・マハール みんなが聞き及んでいるとおり,昨日,ハマスがイスラエルに大規模な奇襲を仕掛けた.ハマスはガザ国境を越え.大規模なロケット爆撃につづけて近隣の街々を占拠または襲撃して,何百人も殺した.ハマスの兵士たちがイスラエル人捕虜をガザに連れて行ってる光景は,インターネットのあちらこちらで拡散されてる.これに対して,イスラエルは交戦状態を宣言した.両者による戦闘は,このところの記憶にないほど凄惨で獰猛なものになるにちがいない. すでに多くの人たちが指摘しているように,アメリカが助力していたイスラエルとサウジアラビアの和平合意が実現する可能性をつぶすのが,今回の攻撃のねらいと目される.こういう和平合意は,トランプのもとで開始された「アブラハム協定」プロセス

                                                ノア・スミス「《アメリカによる平和》のあとにやってくるのはうれしくない時代かも」(2023年10月9日)
                                              • タイラー・コーエン「高等教育について思わず考えさせられる一節」(2021年3月1日)

                                                [Tyler Cowen, “Higher education sentences to ponder,” Marginal Revolution, March 1, 2021] 個人指導への WTP(支払い意欲)は,大学に通う年間の平均正味コストのおよそ 4.2%を占める.他方,キャンパスでの社交活動への支払い意欲は平均正味コストの 8.1% を占める.支払い意欲には大きな多様性があり,社会経済的な集団で系統的に異なっている.我々の分析からは,経済的に不利な学生たちの方が大学の社交生活から引き出せる価値が大幅に少ないことが示されている.ただし,これは主に時間とリソースの制約に起因している. 上記は,Aucejo, French, & Zafar による新しい NBER ワーキングペーパーからの抜粋.

                                                  タイラー・コーエン「高等教育について思わず考えさせられる一節」(2021年3月1日)
                                                • タイラー・コーエン「紛争の発生頻度は世界でどう変わってきたか」(2019年9月19日)

                                                  [Tyler Cowen “Frequency of conflict initiation worldwide,” Marginal Revolution, September 19, 2019] 上の画像は,Bear F. Braumoeller が書いた興味深い新刊『現代における戦争の永続』(Only the Dead: The Persistence of War in the Modern Age) から. この本は,世界がだんだん平和になってきているっていうピンカーの説を批判するのに大部分を割いている(ピンカーはヨーロッパ限定の,より楽観的なデータだけを示している).本文から抜粋しよう: (…)紛争と戦争の勃発率は時により変化する.しかも,かなり大幅な変化だ.2回の世界大戦で2つの大きなジャンプがあるのを脇に置いても,1815年から冷戦終結までの期間に紛争の勃発率の中央値は4倍

                                                    タイラー・コーエン「紛争の発生頻度は世界でどう変わってきたか」(2019年9月19日)
                                                  • コウディ・モウザ「他の動物種たちへの共感の起源について」(2023年2月27日)|経済学101

                                                    わたしたちは,自分のエモノたちの目をとおして世界を見るすべを身につけている――ひとえに彼らを食すために「感じるかい?」 「なにを?」 「いかに強欲な捕食者に我が身が変わっているのかをさ.まるでオオカミのようにね.もっと多く,さらにもっと仕留めてやろうっていう,この欲求があるんだ.家畜小屋が200棟あっても満足しない,だろ? まるで悪魔だ」――そう言って,彼は無言になった.少し経ってから,彼は言葉を継いだ.「どうだろう,ちょっと落ち着いて,1週間かそこらでも狩りをやめないか.」 – Rane Willerslev, Soul Hunters食料が底をついたら,あなたは自分の飼い犬を食べるのをためらうだろうか? どこかの無人島に流れ着いたとして,家族の愛猫を切り分けて飢えを満たす方法を考えはしないだろうか? 飼い犬や飼い猫のような動物たちと,牧場にいる動物たちとを隔つものは,なんだろう? きっ

                                                      コウディ・モウザ「他の動物種たちへの共感の起源について」(2023年2月27日)|経済学101
                                                    • サイモン・レンルイス「緊縮の教訓はこうして学ばれずじまいになった」(2019年7月23日)

                                                      [Simon Wren-Lewis, “How the lessons from austerity have not been learned,” Mainly Macro, July 23, 2019] イギリスとユーロ圏はどちらも来たるべき景気後退に対して脆弱だが,どちらの政治家たちも中央銀行も,「あちらが景気後退に対応すべきだ」と考えている. イギリス・アメリカ・ユーロ圏で景気後退が生じる見込みについてここで語りたくはない.予想は(必然的に)無益な試みだ.あまりにもいろんな変数が絡んでいるので,正確な予測は立てようがない.リスク要因を洗い出しておくのは有用だし,グレイス・ブレイクリーがここで見事な仕事をやっている.それより,次にもしも景気後退が起こったときに,その影響に対してイギリスやユーロ圏がどちらも脆弱なことを私は懸念している.その脆弱性をはっきり示した実例といえば,グローバル

                                                        サイモン・レンルイス「緊縮の教訓はこうして学ばれずじまいになった」(2019年7月23日)
                                                      • ノア・スミス「終末論者にならないようにね」(2023年2月22日)|経済学101

                                                        きらびやかな悲観論は,なんの役にも立たないよこのところ,メディアでさかんに論議されているものといえば,アメリカに押し寄せてる十代の不幸の原因はいったいなんなのかってテーマだ.先日,『ワシントンポスト』記者のテイラー・ローレンツが連続ツイートでこう論じていた――いま十代の子たちが不幸せになっている主な理由は,単純に,自分たちを取り巻く世界が「地獄めいた場所」だと彼らが認識しているからにすぎないんだそうだ: タイラー・ローレンツ:みんな言うよね,「いまどきの子はなんであんなに鬱になってるんだ,スマホのせいにちがいない!」 でも,そんな人たちがぜったいに言わないことがある――いま私たちが生きてるのは,後期資本主義なうえに恐ろしいパンデミックに記録的な水準の富の格差までついてきて,しかも社会的セーフティネットは皆無,雇用の安定もなし,気候変動で地球があつあつに調理されてる真っ最中だってことを. タ

                                                          ノア・スミス「終末論者にならないようにね」(2023年2月22日)|経済学101
                                                        • ノア・スミス「ヒッケル説を反駁する:貧困削減をめぐる議論」(2021年4月3日)

                                                          [Noah Smith, “Against Hickelism,” Noahpinion, April 3, 2021] 貧困は減少してきてる.そして,それは自由市場資本主義のおかげではない. “Mumbai Night City” by Vidur Malhotra, CC PDM 1.0 ジェイソン・ヒッケルを反駁するのは骨折り仕事なうえに,やったところで感謝もされない.ヒッケルのツイートが世間であちこち出回っている.その一方で,そのツイートの冷静な反駁が,かえってツイートの勢いを増しているありさまだ.それでも,反駁はぜひしておかないといけない.なぜなら,ヒッケルの言ってる見当違いな物語は掛け値なしに人口に膾炙しやすいので,永遠に終わらないシジフォスの苦役のごとき反論が必要になるからだ. 人類学者として訓練をうけたヒッケルは,世界について大きなテーゼを2つ抱いている: 世界の貧困が減少

                                                            ノア・スミス「ヒッケル説を反駁する:貧困削減をめぐる議論」(2021年4月3日)
                                                          • コーエン & クルーグマン「インタビュー, pt.5: マクロ経済について」(2018年10月10日)

                                                            [“Paul Krugman on Politics, Inequality, and Following Your Curiosity,” Conversations with Tyler, Oct. 10, 2018] コーエン: いくつけだけ,マクロネタの質問を.いま総需要が低迷している要因として,人口増加の鈍化をどれくらい心配してます? クルーグマン: すごく.ちょっとした話があるんだけど.ラリー・サマーズは,いまアメリカが長期停滞に直面しているってアイディアを主張して有名になったよね.だいたい同時期だったか,1ヶ月ほど早くにぼくも同じ路線で書いてたんだよ.ただ,ぼくの方は定式化がずいぶんひどくて,読めたものじゃなかったけど. ラリーは,論点を明快そのものに説明してみせた.それで彼が手柄をものにしたわけだ.さらに困ったことに,現に手柄に見合うだけのことをしたんだよね.手柄を取り損ね

                                                              コーエン & クルーグマン「インタビュー, pt.5: マクロ経済について」(2018年10月10日)
                                                            • アレックス・タバロック「連邦犯罪者になる方法」(2019年6月20日)

                                                              [Alex Tabarrok, “How to Become a Federal Criminal,” Marginal Revolution, June 20, 2019] 秀逸な Twitter フィード @CrimeADay を流してるマイク・チェイズが,イラスト入りのハンドブックを出した.題名は『連邦犯罪者になる方法』だ (How to Become a Federal Criminal).実のところ,このハンドブックを読まなくても,連邦犯罪者になるのはすごくかんたんだったりする. これはご存じの読者もいるんじゃないかな.合衆国から海外に出たり海外から合衆国に入ってくるときに現金 10,000ドルを所持している場合,その旨を報告する義務がある.たとえば,ちょいと中古車のお買い物にカナダ国境を越えると,連邦政府がキミの現金を没収してしまうかもしれないわけだよ(毎年,没収される金額は数

                                                                アレックス・タバロック「連邦犯罪者になる方法」(2019年6月20日)
                                                              • タイラー・コーエン「どうしてメキシコの書店では本にシュリンクをかけたまま販売してるの?」(2021年7月25日)

                                                                [Tyler Cowen, “Why do they keep the books wrapped in Mexican bookstores?” Marginal Revolution, July 25, 2021] そう,透明なビニールで包装したままってこと.だから,店頭でページをめくれないし,中身がどんな感じか眺めるのもかなわない.いくつか仮説が思いつく: #1. メキシコの書店は,買いもしない客に店頭で立ち読みされたくない.昔のアメリカにあった漫画のニューススタンドに少し似てる.でも,漫画よりもずっと長い本やたいていの小説には,これは当てはまりそうになく思える. #2. 書店としては,本の見た目があまり薄汚くならなまま,きれいに保っておきたい. #3. 価格差別については,どうだろう? 読者が2種類いたとしよう.片方はより貧しい読者たちで,本当にいいものだとわかった本しか買わない.

                                                                  タイラー・コーエン「どうしてメキシコの書店では本にシュリンクをかけたまま販売してるの?」(2021年7月25日)
                                                                • ノア・スミス「テクノ楽観主義についての考察」(2023年10月21日)|経済学101

                                                                  ぼくにとってどんな意義があって,どうしてぼくはこれを支持してるのかBy Cory Doctorow from Beautiful Downtown Burbank, USA - The Sphere as Mars, view from my hotel room at Harrah’s, Las Vegas, Nevada, USA, CC BY-SA 2.0,「いやはや,とんだ大間違いだ!門を開けろ!」 ――ミュンヒハウゼン男爵今週のいろんなネタをまとめたときに,マーク・アンドリーセンの「テクノ楽観主義マニフェスト」に賛成の意を表しておいた.2つほど意見がちがう点も書き添えたけれど,全体として,技術発展の加速を支持する主張をこういう風に妥協なしにぶっぱなすことこそ,陰気な2010年代の停滞した空気から脱出するのに必要だ. ただ,マークのマニフェストでは,ぼくがテクノ楽観主義について考え

                                                                    ノア・スミス「テクノ楽観主義についての考察」(2023年10月21日)|経済学101
                                                                  • ノア・スミス「《前の戦争》を戦いがちな思考のクセ――ウクライナ情勢とインフレについて」(2022年2月14日)

                                                                    [Noah Smith, “Last War Brain,” Noahpinion, February 14, 2022] 「事実が変われば,私は考えをあらためますね.貴殿はいかがです?」――ジョン・メイナード・ケインズが言ったとされる言葉. 2000年代に,アメリカ合衆国は致命的なとんでもない過ちを2つおかした.ひとつめ,2003年に,大義もなく,相手からの武力挑発があったわけでもなく,イラクに侵攻して占領したこと.無辜の民衆を数十万人も殺し巨額のコストを費やしたのに加えて,20世紀後半にアメリカが築き上げてきた国際的な正当性と指導力の多くを,イラク侵略・占領によって喪失してしまった.国境侵犯の国際的な規範の効力を弱め,アメリカ一極主導の世界秩序の弱体化を速めてしまった.ふたつめ,アメリカ経済で金融化が監督されないままに営まれるのをゆるしたことで,世界金融危機につながり,大恐慌いらい最悪

                                                                      ノア・スミス「《前の戦争》を戦いがちな思考のクセ――ウクライナ情勢とインフレについて」(2022年2月14日)
                                                                    • ノア・スミス「アメリカの社会主義者たちの世界観はぶっ壊れてる」(2022年4月17日)

                                                                      [Noah Smith, “The American socialist worldview is just totally broken,” Noahpinion, April 17, 2022] Current Affairs での最近のインタビューで,ロシアに譲歩するようノーム・チョムスキーがウクライナに求めてる発言を見て,心底ゲンナリした: べつに,ゼレンスキーを批判しているのではありませんよ.彼は誉れある人物で,すばらしい勇気を見せています.ゼレンスキーがおかれている立場・状況には共感できます.しかし,同時に,世界の現実にも注意を払うことです.そうすれば,先ほどの話が導かれるのです.先ほどの話に戻りましょう:基本的に,選択肢は2つです.ひとつは,いま我々が行っている政策を続けるという選択肢です.ふたたびフリーマン大使の言葉を引くなら,ウクライナ人が最後の一人になるまでロシアと戦う

                                                                        ノア・スミス「アメリカの社会主義者たちの世界観はぶっ壊れてる」(2022年4月17日)
                                                                      • アレックス・タバロック「電気を権利扱いすることの帰結」(2020年3月5日)

                                                                        [Alex Tabarrok, “The Consequences of Treating Electricity as a Right,” Marginal Revolution, March 5, 2020] 貧しい国々では,電気料金が安い.あまりに安くて,「電気を1単位売るたびに電力事業はお金を損する」ほどだ.その結果として,使用量割り当てや電力不足が日常茶飯事になっている.Journal of Economic Perspective の共著論文で,Burdgess, Greenston, Ryan, Sudarshan はこう論じている――「こうした電力不足は,電気を権利として扱って私的財として扱わないことの帰結として生じる.」 電気を権利として扱うことで,安定した電力供給を誰もが受けられるようにする目的がどのように損なわれうるのだろうか? これには4段階があると本稿は論じる.第

                                                                          アレックス・タバロック「電気を権利扱いすることの帰結」(2020年3月5日)
                                                                        • ノア・スミス「どうしてみんなインフレをいやがるの?」(2021年5月27日)

                                                                          [Noah Smith, “Why do people hate inflation?” Noahpinion, May 2021-05-27] 1970年代の賃金を考えてみよう. 〔「最重要問題」の主な傾向,1939年~2008年(ギャラップの世論調査)〕 いまインフレでパニックになるべきではないとぼくは思ってる.でも,インフレの話がだんだん世間の主流であらためて議論されはじめてるなかで,次の点は考えておいて損はない:そもそも,なんでインフレを気にするんだろう? 上記の世論調査を見てもらうと(出典はこちら),インフレがすすんでみんながめちゃくちゃ憤慨していたのは,だいたい1974年から1983年ごろのあいだだったのがわかるはずだ.この期間は,アメリカでインフレがほんとに高かった時期とだいたい重なる: 〔あらゆる都市部の消費者を対象に調査した消費者物価指数,グレーの範囲は景気後退期を示す〕

                                                                            ノア・スミス「どうしてみんなインフレをいやがるの?」(2021年5月27日)
                                                                          • ノア・スミス「凡人の逆襲?――AIは格差縮小に作用するのかも」(2023年9月4日)

                                                                            テクノロジーと格差についての楽観論 かつて Twitter と呼ばれてたアプリでは,ノア・スミスといえば,「ふつう・平均・中流」のよさについて前のめりにたびたび語る人間でとおってる.なんでそんなにふつうのよさを語るかっていうと,ひとつには,とびきりすごい人間じゃなくてもよい生活・快適な生活・充実した生活をみんながおくれる平等主義的な社会の他にうまくいってる社会なんてないと思ってるからだ.ただ,理由はそれだけじゃなくって,大人になっていくときにさんざん浴びせかけられたメッセージへの反発って側面もある.どの映画を見ても,どの本を読んでも,どのテレビ番組を見ても,ぼくみたいなガリ勉オタク(ナード)は特別だって語りかけてるように思えた――物理学ができたりコンピュータでプログラムを組めたり,なんならテレビゲームをやれるだけでも,例外的な人間になる定めにあるとでも言わんばかりだった.80年代後半や90

                                                                              ノア・スミス「凡人の逆襲?――AIは格差縮小に作用するのかも」(2023年9月4日)
                                                                            • タイラー・コーエン「これは現代の奴隷制と戦うのにふさわしい方法ではない」(2020年8月2日)

                                                                              [Tyler Cowen, “How not to fight modern-day slavery,” Marginal Revolution, August 2, 2020] ――というのが,今回『ブルームバーグ』に書いたコラムの話題だ.ちょっと抜粋しよう. 共和党上院議員 Josh Hawley(ミズーリ州選出)が先週提出した「2020年奴隷なき事業認定法案」は,いっそう有意義かも知れない.歴史上で奴隷制が果たした役割について有意義かつ必要な再評価が合衆国で進むなか,同法案は大企業にみずからのサプライチェーンでの強制労働を調査し報告するよう義務づけるものとなっている. 実際には,この法案は――明記された意図と逆に――差し引きして正味でみると世界中で奴隷を増やす結果になるかもしれない. 一般的な原則として,奴隷の供給源だとわかっているところとの商業的なつながりを企業は断ち切るべきだ.だ

                                                                                タイラー・コーエン「これは現代の奴隷制と戦うのにふさわしい方法ではない」(2020年8月2日)
                                                                              • サイモン・レン=ルイス「財政再建に励んでも債務対GDP比が下がらない理由,そして,政治家たちが見当違いなタイミングで財政を引き締めがちな理由」(2023年4月18日)|経済学101

                                                                                サイモン・レン=ルイス「財政再建に励んでも債務対GDP比が下がらない理由,そして,政治家たちが見当違いなタイミングで財政を引き締めがちな理由」(2023年4月18日) 「財政再建に取り組むべし」(公共支出削減や増税をすべし)という主張の理由として,しばしばこういうことが言われる.「債務対GDPの比を下げるのに必要だからだ」 ――だが,なるほど財政再建のためのさまざまな方策を打てば公共部門の債務は減少する見込みが大きいものの,同時に,GDP も減少させることになる見込みも大きい.だから,債務対GDPの比への影響は定かでない.IMF が公開したばかりの研究によれば,過去の証拠に照らして見ると,財政再建が債務対 GDP 比にもたらす影響は,平均で見て無視できる程度(i.e.実質ゼロ)なのがうかがえる. さらにその研究を詳しく見てみると,緊縮支持派にとっていっそう悪い研究結果が出ていることが見てと

                                                                                  サイモン・レン=ルイス「財政再建に励んでも債務対GDP比が下がらない理由,そして,政治家たちが見当違いなタイミングで財政を引き締めがちな理由」(2023年4月18日)|経済学101
                                                                                • ノア・スミス「『技術革新と不平等の1000年史』書評」(2024年2月21日)|経済学101

                                                                                  ダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンの大著を読んでも,技術革新で自動化が進まないようにする必要があるって話に納得はできなかった. 「人類がなしとげた記念碑的な技術的偉業に目をくらまされてはいけない」――アセモグル & ジョンソン いたるところで「2023年の最重要ビジネス書」のリストに『技術革新と不平等の1000年史』が挙がっていたのは,意外でもなんでもないだろう.まず,著者たち自身の経歴からして,比肩する者がいない.ダロン・アセモグルのことを経済学界の発電所と呼んでも,本人の実績にばかばかしいほど釣り合わない: 「2005年から2020年のあいだに経済学のトップ5学術誌に掲載された著者の苗字でワードクラウドをつくるとこうなる」それに,アセモグルは国々の発展を制度から説明する説の主要な提唱者でもある.これまでに,アセモグルは『国家はなぜ衰退するのか』やその続編の『自由の命運』(ジェイム

                                                                                    ノア・スミス「『技術革新と不平等の1000年史』書評」(2024年2月21日)|経済学101

                                                                                  新着記事