梶谷隆幸は目覚めたのか。 今シーズン、8月からここまでの鬼神のごとき働きは、フロックか、本物か。 昨年80試合、打率1割7分9厘、2本塁打。 今季76試合、打率3割4分4厘、15本塁打。OPS1.036……? この極端すぎる格差。……本当に信じていいものなのか。 「今の成績は自分でも想像以上の数字が出ています。打率3割? ホームラン15本? びっくりですよ。去年を思えば考えられない数字です。ただ、それもこれも、去年があったからだと思えています。いろんなことを経験させてもらいましたから。試合の中でも、外でも」 2012年10月。宮崎――。 「期待外れ」の誹りを散々に受けた苦しいペナントレースを終え、フェニックスリーグ参加のため宮崎に来ていた梶谷は、その口ぶりから心身ともに疲弊しきっていた。 「今年は本当に、苦しくてつらいシーズンでした。特に何がというわけじゃないです。打つこと、投げること、守