1937年7月29日、中国で多くの日本人が命を落とした通州事件が起きた。一時は日本でも“忘却”されていた歴史だが、85周年を迎えた今、“再発見”され、多くの注目を集めている。関連書籍の出版が相次ぐほか、ツイッターでも記念日当日にトレンド入りするなど、関心を集めている。 二次大戦中のプロパガンダが21世紀日本の歴史認識にも影響を与えている。 そう警鐘をならすのは、『増補新版 通州事件』(志学社、2022年)を出版した、愛知学院大学の広中一成准教授。悲惨な事件だったからこそ、冷静に事実と向き合うべきと強調している。 写真は広中一成准教授(本人提供) 通州事件と傀儡政権――まず、通州事件とはどのような事件だったのかについて教えてください。 広中一成: 1937年7月29日、北京市に隣接する通州で、多数の日本人が殺害された事件を指します。当時、通州には大日本帝国によって作られた「冀東政権(きとうせ