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himaginaryの検索結果41 - 80 件 / 896件

  • 円安バブル論というバブル - himaginary’s diary

    竹中平蔵氏が以下のように書いている(注:閲覧には無料の会員登録が必要)。 確かに外需の低下がGDPの大幅減少を招いているが、そもそも改革が停滞し、内需が成長しなかったことにこそ、経済悪化の本質がある。同時に円安によって外需関連産業が実力以上に拡大していたのを認めなければならない。つまり、米国には住宅バブルが発生したが、日本では円安バブルが生まれていたのである。マイナス12.7%という数値は、円安バブルの崩壊も意味している。 日本経済新聞 また、伊藤元重氏も以下のように書いている。 ・・・今回の世界的金融危機は、日本経済の一番弱い所を突いてきたとも言えるのだ。 最近の10年近い超円安の中で「日本で生産して海外に輸出していく」というビジネスモデルがあまりにも拡大しすぎたのである。ある意味では輸出バブルが起きていたと言ってもよいかもしれない。 為替レートの動きを見ると分かりやすいかもしれない。昨

      円安バブル論というバブル - himaginary’s diary
    • 経済学は決着していない - himaginary’s diary

      と題したINET動画(原題は「Economics Isn't Settled」)で、「The History of Economic Thought Website*1」を創ったGoncalo Fonsecaが、同サイトを作成した動機と経済学史を学ぶことの重要性について語っている(H/T Mostly Ecoomics)。 最近、なぜ人文系の人は経済学を学ぶ際にまず経済学史を学ぼうとするのか、という話がツイッターの一角で話題になっていたが、期せずしてFonsecaはここでその一つの回答を提示しているように思われる。 以下はyoutube版の文字起こしからの引用。 Why is the history of economic thought important? Almost like asking why is economics important, I mean, economics,

        経済学は決着していない - himaginary’s diary
      • 世界を良くするためにできる最も重要な一つのこと - himaginary’s diary

        新年明けましておめでとうございます。 表題の件についてシャシ・タルールが書いたProject SyndicateをMostly Economicsが紹介している。その設問(What is the single most important thing that can be done to improve the world?)への答えは次の2語で表わされるという:「educate girls」。即ち、女性を教育すること、とのことである。 これについてタルールは以下のように説明している。 It really is that simple. No action has been proven to do more for the human race than the education of female children. Scholarly studies and research p

          世界を良くするためにできる最も重要な一つのこと - himaginary’s diary
        • 緊縮策はミクロ的にも反生産的? - himaginary’s diary

          と、今回のサイバー攻撃を例にクリス・ディローが論じている。というのは、国民保健サービス(NHS)ではIT投資をケチったために被害が大きくなった、という報道を目にしたためである。記事によると、システムの多くでウインドウズXPが依然として使われており、2015年にはジェレミー・ハント保健相が高額のサポートパッケージを経費節減の一環で解約したという。ディローは、修復やITシステム更新の費用は当初の節約額を上回るのではないか、と推測している。 同様の例としてディローは以下を挙げている。 刑務所職員の数を減らしたところ、暴動が起きたり再犯が防げなくなったりした 洪水対策費を節減したところ、復旧費が増加した ソーシャルケアを削減したところ、入院する人が増えてNHSの費用が増加した 精神治療費を削減したところ、警察の支出が増加した 学校への支出を削減したところ、親たちの学校への寄付という隠れた税金が増加

            緊縮策はミクロ的にも反生産的? - himaginary’s diary
          • 好況時に死亡率が上がる理由 - himaginary’s diary

            がほぼ解き明かされたとして、Robin HansonがこのNBER論文を紹介している(エズラ・クライン・ブログのBrad Plumerエントリ経由)。 以下はHansonの引用から。 We find that most of the additional deaths that occur during times of economic growth are among the elderly, particularly elderly women. … Cyclicality is especially strong for deaths occurring in nursing homes, and is stronger in states where a higher fraction of the elderly reside in nursing homes. … Staff

              好況時に死亡率が上がる理由 - himaginary’s diary
            • 経済学者は如何に理論からデータにシフトしたか - himaginary’s diary

              1/11エントリでは、今年の全米経済学会に出席したジャスティン・フォックスがそこで見い出した傾向として、格差問題に関する経済学者の取り組みの変化について書いたブルームバーグ論説を紹介した。表題のブルームバーグ論説(原題は「How Economics Went From Theory to Data」)でフォックスは、彼が全米経済学会で見い出したもう一つ傾向、即ち、理論からデータへの重心の移行について書いている。それによると、昼食会での講演者といった栄えある役割はエリック・マスキンやジャン・ティロールやベングト・ホルムストロムといった古参の理論家が担っていたものの、実際の研究発表では実証系が活況だったとの由。 フォックスが引用したテキサス大学のダニエル・ハマーメッシュ*1の2013年のJournal of Economic Literature論文によると、主要誌に掲載された理論系論文の割合

                経済学者は如何に理論からデータにシフトしたか - himaginary’s diary
              • どの(マクロ)経済学者に耳を傾ける価値があるのか? - himaginary’s diary

                在外ないし最近まで在外だった日本人経済学者のツイートをここ数日で幾つか目にした際に、以前ブクマ/ツイートしたクルーグマンのエントリ「誰に耳を傾けるべきか(Who To Listen To)」の追記部分を否応無く思い出したので、以下にそれを紹介してみる。 PS: One side note: One thing that’s striking in Portes’s discussion — and something I very much agree with — is the irrelevance of formal credentials. As we’ve debated how to deal with the worst slump since the 1930s, a distressing number of economists have taken to arguin

                  どの(マクロ)経済学者に耳を傾ける価値があるのか? - himaginary’s diary
                • 慎重さのせいで損なわれた日本経済 - himaginary’s diary

                  クルーグマンが10日前の訪日時に表題のNYT論説記事(原題は「Japan's Economy, Crippled by Caution」)を書いている。そこで彼は、訪日外国人は日本が深刻な不況下にあるように見えないことに驚くが、それは実際に深刻な不況下には無いからだ、としつつも、日本経済が継続的なデフレという罠に嵌っていることを指摘している。クルーグマンは、デフレからの脱却という点について安倍晋三首相は実際に努力してきた(has been making a real effort)、と評価しているが、決定的な成功を収めるには至っていない(he has yet to achieve decisive success)、とも書いている。その政策努力として日本のみならず欧米でも試みられている量的緩和について説明した後でクルーグマンは、これまでの量的緩和のやり方は十分ではない、として以下のように述

                    慎重さのせいで損なわれた日本経済 - himaginary’s diary
                  • なぜ高齢の学者はスローダウンするのか? - himaginary’s diary

                    というNBER論文をHamermeshらが上げている。原題は「Why Do Older Scholars Slow Down?」で、著者はDaniel S. Hamermesh(テキサス大学オースティン校)、Lea-Rachel Kosnik(ミズーリ大学セントルイス校)。 以下はその要旨。 Using data describing all “Top 5” economics journal publications from 1969-2018, we examine what determines which authors produce less as they age and which retire earlier. Sub-field has no impact on the rate of production, but interacts with it to alte

                      なぜ高齢の学者はスローダウンするのか? - himaginary’s diary
                    • 生産性あれこれ - himaginary’s diary

                      A Fine Theoremというブログで、シカゴ大学のChad Syversonが生産性について書いたサーベイ論文「What Determines Productivity」を紹介している(H/T EconAcademics.org)。 以下はそのブログエントリの概要。 SICの4桁分類を基に同一産業内の生産性の違いを調べたところ、上位10%と下位10%では平均して生産性に2倍の差があることが分かった(Chad Syverson (2004)[WP])。 Chang-Tai Hsieh and Peter J. Klenow (2009)[WP])は中国とインドではその差がもっと大きいことを見い出した。 この結果は生産性の異なる尺度や、差の評価に関する異なる手法に関して頑健である。 理論上は新規参入が自由に許されていれば低生産性企業は淘汰されるはずである。従って低生産性企業の存続は、新規

                        生産性あれこれ - himaginary’s diary
                      • ノーベル経済学賞を受賞したハイエクが賞の問題点を説いた時 - himaginaryの日記

                        Tim Taylorが、自分の2年前のエントリを再掲しているが、その中でハイエクがノーベル経済学賞を受賞した時の言葉を引用している(H/T Mostly Economics)。 Your Majesty, Your Royal Highnesses, Ladies and Gentlemen, Now that the Nobel Memorial Prize for economic science has been created, one can only be profoundly grateful for having been selected as one of its joint recipients, and the economists certainly have every reason for being grateful to the Swedish Riksb

                          ノーベル経済学賞を受賞したハイエクが賞の問題点を説いた時 - himaginaryの日記
                        • 共同声明の三重翻訳 - himaginary’s diary

                          Britmouseが、今回の政府・日銀の共同声明の英語版には日銀の翻訳部門のトラブルによる問題があったとして、グーグル翻訳の助けを借りて中央銀行語を改めて平易な英語に書き直したという。それをさらに拙訳で日本語に訳してみる。 日本銀行は、金融政策は「物価の安定を達成し、それによって国家経済の健全な発展に寄与する」ことを目的とする、という原則の下に政策を実施している。 我々が「物価の安定」と言う時は、まさにその通りのことを意味している。CPI水準に全般的な動きが無い、ということだ。我々はその意図がこの上なく明確であることを期待している。安倍晋三氏は2%のインフレ目標を我々に設定させたがっている。彼は自分を何様だと思っているのだ? 安倍氏は「目標」について話したがっているが、我々は「願望」について話したいと考えている。特に、「漠然とした願望」についてだ。先述の通り、我々が真に欲しているのは0%の

                            共同声明の三重翻訳 - himaginary’s diary
                          • 経済学における話題の新しいアイディアが実際には悪いアイディアである理由 - himaginaryの日記

                            ジョージ・メイソン大のMercatus Centerの表題のコメンタリー記事(原題は「Why a Hot New Idea in Economics is Actually a Bad Idea」)で、スコット・サムナーがMMTを批判している(共著者はPatrick Horan、H/T Mostly Economics)*1。 以下はその冒頭。 In recent years, a radical and unorthodox school of thought called “Modern Monetary Theory” (MMT) has become popular with some progressive economists, as well as with policymakers and activists on the political left. One of MM

                              経済学における話題の新しいアイディアが実際には悪いアイディアである理由 - himaginaryの日記
                            • なぜクルーグマンは考えを変えたのか? - himaginary’s diary

                              昨日エントリで12/22サマーズ論説を巡るクルーグマンとデロングのやり取りに触れたが、その中でデロングが以下のようなことを書いている。 Since 1999, Paul has changed his mind. He has become an aggressive advocate of expansionary fiscal policy as the preferred solution. Why? And is he right to have done so? Or should he have stuck to his 1999 position, and should he still be lining up with Ken today? (拙訳) 1999年*1以降、ポールは考えを変えた。彼は拡張的財政政策こそ好ましい政策だと積極的に唱えるようになった。何故か? そし

                                なぜクルーグマンは考えを変えたのか? - himaginary’s diary
                              • 自殺の5人に1人は失業関連 - himaginary’s diary

                                という記事がEurekalertに上がっている。チューリッヒ大学精神病院のCarlos Nordt、Ingeborg Warnke、Erich Seifritz、Wolfram KawohlによるThe Lancet Psychiatryオンライン版掲載論文「Modelling suicide and unemployment: a longitudinal analysis covering 63 countries, 2000–11」の紹介記事で、概ね以下のようなことが述べられている。 世界では毎年およそ百万人が自殺するが、そのうち何人が失業関連かを見い出すため、2000年から2011年の63ヶ国のデータを、北米と南米、北欧と西欧、南欧と東欧、欧米以外の4つの地域に分けて分析した(中国とインドのデータは入手できなかった)。 各国固有の要因はあるが、4地域すべてで失業と自殺率に強い関連性

                                  自殺の5人に1人は失業関連 - himaginary’s diary
                                • プロテスタンティズムは経済発展に貢献した? - himaginary’s diary

                                  以前(2009/12/3エントリ)、マックス・ウェーバーの仮説を否定する実証研究を紹介したことがあったが、今度はそれを支持する実証研究が現われた(Mostly Economics経由)。書いたのは欧州大学院のChristoph Basten*1と欧州中銀のFrank Betz。 以下はその冒頭部。 Does culture, and in particular religion, exert an independent causal effect on politics and the economy, or is it merely a reflection of the latter? This question is the subject of a long-standing debate in the social sciences, with Karl Marx and Ma

                                    プロテスタンティズムは経済発展に貢献した? - himaginary’s diary
                                  • 政府は反企業的になるべき - himaginary’s diary

                                    とクリス・ディローが書いている。以下はその一節。 ...we must distinguish between business and markets. Business is about hierarchy and control; markets are about dispersing power. Markets are about competition, whereas business tries to suppress competition and seek monopoly power; the last thing big business wants is creative destruction. A pro-business government would seek to protect incumbents through red tape that st

                                      政府は反企業的になるべき - himaginary’s diary
                                    • カズオ・イシグロのキャンセル・カルチャー批判 - himaginary’s diary

                                      御田寺圭(白饅頭)氏の現代ビジネス記事が物議を醸している。同記事で白饅頭氏は、「リベラルは多様性を反映することを心掛けるべき」という趣旨のカズオ・イシグロの言を冒頭で引用した上で、リベラルにおける画一的な価値観への同調圧力を槍玉に挙げた。それに対し、記事を問題視する人たちは、そうしたリベラル批判をイシグロは口にしておらず、白饅頭氏はイシグロの発言を曲解している、と言う。 確かに、例えばこちらの白饅頭氏批判記事が指摘するように、白饅頭氏が引用した東洋経済のイシグロのインタビュー記事では、「キャンセルカルチャー」的なものへの懸念や言及は表明されていない。しかし実は、少し前のBBC記事でイシグロは、そうした懸念を明確に示している*1。この記事はBBCのインタビュー番組を基にしているが、こちらのテレグラフ記事では番組におけるイシグロの言葉がより長く引用されているので、以下に前半部分を紹介してみる。

                                        カズオ・イシグロのキャンセル・カルチャー批判 - himaginary’s diary
                                      • 消費税、法人税、所得税と設備投資 - himaginary’s diary

                                        nyanko-wonderfulさんとBaatarismさんが相次いで消費税増税を取り上げ、消費税をはじめとする各種税金の推移グラフを示した。それらのグラフを見て小生の目を惹いたのが、話題の消費税や法人税の推移もさることながら、バブル崩壊以降の所得税の急低下ぶりであった。 nyanko-wonderfulさんの示されたデータソース「長期時系列データ|統計情報|国税庁」を見てみると、一口に所得税と言っても、まず申告所得税と源泉所得税に分かれ、さらに源泉所得税の対象所得が、利子所得、配当所得、上場株式等の譲渡所得等、給与所得、退職所得、報酬・料金等所得、非居住者等所得に分かれていることが分かる。そこで、以下では、所得税を申告所得税、利子所得税、配当所得税、給与所得税、およびそれ以外の所得税に分け、法人税と消費税と並べて描画してみた(単位:兆円[以下同じ])。 これを見ると、申告所得税、利子所得

                                          消費税、法人税、所得税と設備投資 - himaginary’s diary
                                        • フィフス・エレメント - himaginary’s diary

                                          貨幣の三大機能と言えば、Wikipediaにあるように、価値尺度(unit of account)、流通手段(medium of exchange)、価値貯蔵(store of value)の3つである。そのほか、繰延支払の標準(standard of deferred payment)を第四の機能としてカウントすることもかつてはあったようだ。 しかし、最近の本ブログでのやり取り等を通じて、実は貨幣には第五の機能があると多くの人が信じるようになっているのではないか、と思うようになった。その第五の機能とは「実体経済の健全性の尺度」である。 一般に流動性の罠とは、金利をゼロまで下げても人々が(貨幣を含む)金融資産志向を続け、実体経済に資金が回らない、という状況を指す。その金融資産志向の原因については、ケインズの言うような債券価格の下落を恐れた貨幣への逃避(流動性選好)や、小野理論の言うような金

                                            フィフス・エレメント - himaginary’s diary
                                          • 経済学は何の役に立つのか? - himaginary’s diary

                                            昨今の経済学は科学か?という論争に絡めて、Mark ThomaがHal Varianの「What Use is Economic Theory?」と題された1989年の論文を紹介していた。以下はその概要。 経済学理論を審美的な観点から捉える人もいるが、そうした観点だけでは経済学理論というものの全体像を掴んだことにはならない。経済学は政策科学であり、従って経済学理論も経済政策の理解と遂行への貢献という観点から評価されるべき。 経済学が他の自然科学や社会科学と違うのは、人々の生活の改善をもたらす政策について説明する、と謳っていること。もちろん自然科学も人々の生活水準向上に貢献するが、それは、研究対象の機能の理解という本来の知的活動の副産物に過ぎない。 多くの方法論者は、経済学のそうした本質を見誤っている。経済学は、物理学ではなく工学、生物学ではなく医学と比較されるべきものなのである。ケインズが

                                              経済学は何の役に立つのか? - himaginary’s diary
                                            • 笑う農業 - himaginary’s diary

                                              3/3エントリでは、その前日付けのロドリックのブログエントリの内容を紹介した。それは最近の彼の共著論文の主旨を要約したものだったが、少し前の2/25付けのエントリでロドリックは、同論文の副産物とでも言うべき発見をまとめている。 その発見は以下の図に集約される。 横軸は経済全体の生産性、縦軸は農業の相対的生産性である(ここで生産性は労働生産性を指している)。 経済が発展するに連れ、農業の相対的生産性は、一旦低下するが、その後また上昇する、というU字曲線を描く*1。 この傾向は、ある国のデータを時系列で追うことによっても確認できる。下図は、インド、ペルー、フランスの時系列データをつなげたものである。 3ヶ国の中で最も貧しいインドは、全体の生産性が増すに連れ、農業の相対的生産性は一貫して低下した。一方、3ヶ国の中で最も豊かなフランスでは、農業の生産性が、経済の他分野の生産性に追いつきつつある。富

                                                笑う農業 - himaginary’s diary
                                              • なぜドイツではケインズ経済学が異端視されているのか? - himaginary’s diary

                                                10日エントリではサイモン・レン−ルイス経由でドイツのハイパーインフレへの記憶に関する一つの見方を取り上げたが、そのエントリでレン−ルイスは、なぜドイツではケインズ経済学が異端となっているのか、と問うている。マクロ経済学の教科書は他国と同様にケインズ的であるにも関わらず、経済専門家委員会ではPeter Bofingerしかケインジアンがおらず、しかもこうしたケインジアンが少数派となっている状況はドイツでは普通であるとBofinger自身から聞いたという。ユーロ圏の緊縮政策がもたらした損害、および、それにドイツの政策観が果たした中心的な役割を受けて、レン−ルイスはこの疑問を長年抱いてきたとの由。 その理由としては、ハイパーインフレの記憶と債務を忌避する文化の2つが挙げられるが、レン−ルイスはいずれにも否定的である。というのは、いずれも公的債務が他国より低いことを含意するが、そうはなっていない

                                                  なぜドイツではケインズ経済学が異端視されているのか? - himaginary’s diary
                                                • 日銀預け金はどこから振り向けられたのか? - himaginary’s diary

                                                  齊藤誠氏の東洋経済論説に高橋洋一氏が夕刊フジの論説で噛みついた。一方、齊藤氏は、高橋氏への直接の反論は避けつつも、自HP上のメモという形で自らの考え方の背景を説明している。 齊藤氏は、13年度の異次元緩和による銀行の日銀預け金の増加が、同期間の銀行のバランスシートの増加、就中、銀行の資金調達源である預金の増加を上回っていることを問題視している。このことは、後者の資金調達によって賄うはずだった他の要因を異次元緩和がクラウドアウト*1してしまったことを意味するのではないか、それは信用創造機能の低下を意味するのではないか、というのが氏の問題意識である。 具体的な数字として齊藤氏は、資金循環統計の預金取扱機関から以下の数字を示している。 (資産サイド) 増減額 日銀預け金 69.2 兆円 国庫短期証券 △16.5 兆円 国債・財投債 △27.2 兆円 (負債サイド) 増減額 預金 31.0 兆円

                                                    日銀預け金はどこから振り向けられたのか? - himaginary’s diary
                                                  • これまでの生産性低迷についての考えは完全に間違っていたかもしれない - himaginary’s diary

                                                    潜在生産力は言われているほど落ちていない、という議論が米国では盛んになってきているようで、昨日エントリで紹介した論文のほか、こちらのルーズベルト研究所の論文でも、同研究所とCUNYを兼務するJ.W. Masonがそうした主張を展開している。そのMasonの主張をベースに、NYTのNeil Irwin記者が生産性に関する表題の記事(原題は「Maybe We’ve Been Thinking About the Productivity Slump All Wrong」)を書いている(H/T 本石町日記さんツイート)。 American businesses are doing a terrible job at making their workers more productive. ... In a mainstream view, productivity is a kind of m

                                                      これまでの生産性低迷についての考えは完全に間違っていたかもしれない - himaginary’s diary
                                                    • 機械学習と計量経済学が協力すべき最重要分野 - himaginary’s diary

                                                      昨日紹介したFrancis Dieboldの3連エントリの2番目にHal Varianがコメントし、Dieboldが指摘した問題――機械学習は因果関係の無い予測に重点を置くが、計量経済学は因果関係のある予測に重点を置く――について自分が以前書いた論文を2篇紹介している。一つは機械学習に詳しい人向けで、もう一つは経済学者向けとの由。 以下は前者の論文「Causal inference in economics and marketing」の要旨。 This is an elementary introduction to causal inference in economics written for readers familiar with machine learning methods. The critical step in any causal analysis is est

                                                        機械学習と計量経済学が協力すべき最重要分野 - himaginary’s diary
                                                      • デフレは“トロイの木馬”によりもたらされたのか? - himaginary’s diary

                                                        1ヶ月前に実質為替レートについて書いた時に、日本のデフレの原因を海外に求める見方の矛盾を指摘した。そうした見方は、簡単に言うと 日本の生産性が低いため、海外新興国の台頭により安い輸入品が流れ込み(もしくはそうした安い商品との市場での競合により)、価格低下が生じた という主張である。それに対し小生が疑問を呈したのは 日本の生産性が低いならば、なぜ為替レートでの調整ではなく、国内物価による調整が行なわれたのか? という点である。 しかも、そうした論者が得てして同時に主張するのは、為替レートが減価せずに国内物価が低下したので、実質為替レートは円安となった。従って為替レートはむしろ今後は円高になる、という論理である。 喩えるならば、その一連の主張によると、新興国の台頭による世界的な価格低下は、日本に関してはトロイの木馬のような働きをしたことになる。すなわち、日本は変動相場制を採っているにも関わらず

                                                          デフレは“トロイの木馬”によりもたらされたのか? - himaginary’s diary
                                                        • 望月氏のABC理論の証明の何が問題になっているのか? - himaginary’s diary

                                                          既にニュースで報じられているように、京都大学の望月新一教授によるabc予想の証明が査読を経てPRIMS特別号電子版に3月4日付で掲載されたが、本ブログの過去のエントリ(ここ、ここ、ここ)で紹介した海外の学者と望月氏との溝はむしろ深まったようである。海外の学者による批判の一つの舞台となったブログ「Not Even Wrong」の運営主であるコロンビア大のPeter Woitは、「ABC is Still a Conjecture」というエントリを上げて、望月氏の証明を認めない姿勢を堅持している。このエントリはサイエンスライターの中野太郎氏が訳されているが(cf. 追記の訳、中野氏の関連ツイート)、その中野氏が、批判の急先鋒(かつフィールズ賞を受賞した大物数学者)であるピーター・ショルツに取材したところ(cf. 中野氏の関連ツイート)、ショルツも証明を認めない姿勢を堅持しているという。 Woi

                                                            望月氏のABC理論の証明の何が問題になっているのか? - himaginary’s diary
                                                          • 一方、日本では… - himaginary’s diary

                                                            家計消費が低下し続けている、というブログエントリをBrad Setserが書いている(原題は「Meanwhile, in Japan, Household Consumption Continues to Fall」、H/T Economist's View)。 (ここでmeanwhileから始まっているのは、ブレグジットやイタリアの銀行や人民元の行方に世間の耳目が集まっている傾向を受けている。) Setserはまず具体的なデータとして、5月の家計調査がネガティブサプライズとなり、14年の財政再建開始以降の実質消費の低下傾向が明確になっている点を指摘している。 その上で、背景を以下のように分析している。 I consequently do not think there is any real mystery as to why Abenomincs is floundering a bi

                                                              一方、日本では… - himaginary’s diary
                                                            • カサアゲノミクスの内訳 - himaginary’s diary

                                                              本石町日記さんツイート経由で、昨年末のGDP改定において名目GDPが2008SNA対応以外の要因で増加したことを問題視している人がいることを知った。具体的には、こちらの公表資料の1ページ目などに記されている改定前後の比較表の差分において、「うち その他」という項目が2013年度から2015年度に掛けて急速に増加している(2012年度=0.6兆円、2013年度=4.0兆円、2014年度=5.3兆円、2015年度=7.5兆円)のは、アベノミクスを良く見せるために数字が操作されていることの証左である、という指摘である。 その方が著書の編集者を通じて内閣府に問い合わせたところ、「その他」の内訳は無い、という回答が返ってきたという。そのため「私はこの回答をもって,GDP改ざんを確信した」とのことである。 ただ、その方の10/12のブログ記事に掲載されている内閣府の回答メールでは、参考資料として幾つか

                                                                カサアゲノミクスの内訳 - himaginary’s diary
                                                              • 緊縮政策は暴動を招く - himaginary’s diary

                                                                ワシントンブログで知ったが、Hans-Joachim VothとJacopo Ponticelliという二人の経済学者が表題の主旨の論文を書いたという*1。両者はvoxeuにもその概要を投稿しており、既にEconomist's Viewが(The Irish Economy経由で)取り上げているほか、日本語ブログではこちらのサイトで紹介されている。 著者たちはvoxeuで自分たちの得た結果について以下のように書いている。 One key determinant of the level of unrest should then be the scale of government expenditure cuts. We assemble cross-country evidence for the period 1919 to the present, and examine the

                                                                  緊縮政策は暴動を招く - himaginary’s diary
                                                                • インフレは貧困家庭を苦しめるのか、それとも助けるのか? - himaginary’s diary

                                                                  EconospeakのProGrowthLiberal(PGL)が、カンザス連銀総裁のエスター・ジョージの以下の発言を紹介している。 Keeping monetary policy easy to achieve higher inflation has the potential to push rents still higher, negatively affecting a large percentage of households. Consequently, I am not as enthusiastic or encouraged as some when I see inflation moving higher, especially when it has been driven by a sector like housing. Inflation is a ta

                                                                    インフレは貧困家庭を苦しめるのか、それとも助けるのか? - himaginary’s diary
                                                                  • もしも電子に感情があったなら… - himaginary’s diary

                                                                    物理学はどんなにか難しかっただろうか、とかつてファインマンが述べたという(「Imagine how much harder physics would be if electrons had feelings!」)。 この言葉は、アンドリュー・ロー(Andrew Lo)とマーク・ミュラー(Mark Mueller)が書いた論文「WARNING: Physics Envy May Be Hazardous To Your Wealth!」の冒頭に引用されている*1。(イースタリーの10/28Aidwatcherエントリ経由*2)。 ロー=ミュラーの論文では、経済学の「物理学への羨望(Physics Envy)」がサミュエルソンの研究を嚆矢とする一連の発展をもたらした一方で、数学モデルへの過度の信頼をも生み出し、今回の金融危機の一因になった、と述べている。そのため、経済学、とりわけファイナンス

                                                                      もしも電子に感情があったなら… - himaginary’s diary
                                                                    • 日本の神話 - himaginary’s diary

                                                                      Centre for European Policy StudiesのDaniel Gros*1が「日本の神話(The Japan Myth)」と題したProject Syndicateコラムを書いている(Economist's View経由)。 そこで彼は21世紀の最初の10年を振り返り、言われているほど日本経済は悪くなかった、として以下の数字を挙げている。 過去10年の年率成長率は米国1.7%に対し日本は0.6%に留まった。しかし、ドイツも日本と同じ0.6%だったし、イタリアはもっと悪く、0.2%だった。ヨーロッパの主要国では、フランスとスペインのみ上回った。 また、先進国同士を比較する場合は、GDP全体の成長率ではなく、一人当たりGDPの成長率でもなく、生産年齢人口当たりのGDP成長率を使うのが良い。潜在生産力を表わすのは生産年齢人口だからである。その指標で見た場合、過去10年間の日

                                                                        日本の神話 - himaginary’s diary
                                                                      • マクロ経済学は1958年に道を誤った - himaginary’s diary

                                                                        とジョン・クイギンが書いている。かつてロバート・ゴードンは1978年時点のニューケインジアン経済学は今日のDSGEの手法より優れていたと論じたが、クイギンは、そこから遡ること20年前に既にマクロ経済学は道を逸れていた、と言う。 1958年というのは、フィリップス曲線が発見された年である。クイギンは、その発見後に、フィリップス曲線の誤用、それに対する過剰な訂正、そして再訂正といったプロセスが続き、確かにその過程で得られた知見も多いものの、それ以上に忘却の彼方に追いやられた知見が多かった、と主張する。その結果、アービング・フィッシャーのようなケインズ以前の経済学者でさえ馬鹿げていると思うであろう議論が今日の経済学者の間でまかり通っている、とクイギンは言う。 最初の間違いは、サミュエルソンやソローらのケインジアンによるフィリップス曲線の解釈であった。当初の彼らの論文では期待に関する注釈などが付い

                                                                          マクロ経済学は1958年に道を誤った - himaginary’s diary
                                                                        • 崩壊の政治的論理:ソ連崩壊からの7つの教訓 - himaginary’s diary

                                                                          Centre for Liberal StrategiesのIvan Krastevが、ソ連の崩壊からEUの崩壊の可能性について7つの教訓を引き出している(Mostly Economics経由)。 連合が崩壊するわけがないという信念が、目先の利益のために反EU派に迎合的な政策を取ることや時間要因の軽視を通じて、崩壊の主要なリスクになるというパラドックス。 EUの崩壊はEU反対派がEU推進派に勝利することによってもたらされるとは限らない。長期に亘る機能不全の思わぬ帰結として生じ得る。指導者層が各国の政治力学を読み誤れば、そうした崩壊は加速する。 改革の欠如ではなく、方向性を誤った改革が崩壊をもたらす可能性がある。危機において政治家たちは「銀の銃弾」を捜し求めるが、その銃弾が死の原因となることが良くある。 主要なリスクは、周縁の不安定化ではなく、中央における反乱である。ソ連の運命を決したのはバ

                                                                            崩壊の政治的論理:ソ連崩壊からの7つの教訓 - himaginary’s diary
                                                                          • ボールズ「格差は資源の無駄を生む」 - himaginary’s diary

                                                                            昨日紹介したサンタフェ・リポーター紙のサミュエル・ボールズに関する記事から、今度はEconomist's Viewが抜粋した部分を以下に訳してみる。 不平等は米国がナンバー1であるための対価に過ぎないのでは? 「それはほぼ確実に間違いです」とボールズはSFRに語る。「20年以上前は、大抵の経済学者は、不平等は進歩という車輪の潤滑油に過ぎないと考えていました。しかし今は、この件の実証研究を行なう人の間では、車輪に挟まった砂利と見なす考えが圧倒的多数派です。」・・・ボールズはその核心的理由を次のように述べる。「不平等は軋轢を生み、軋轢は資源の無駄使いを生むのです。」 つまり、非常に不平等な社会では、社会の上層にいる人々は、下層の人々を従わせ生産に従事させるために、多大な時間とエネルギーを使わねばならないのだ。 不平等は、ボールズが「守衛仕事」と呼ぶものを過剰に生み出す。そのことに関する2007

                                                                            • 二つの格差 - himaginary’s diary

                                                                              Econospeakでピーター・ドーマンが、格差には以下の2種類あることに注意を促している。 賃金格差 過去数十年間議論の的になってきた 米国では多くの給与は停滞してきたが、金融のような一部の職種は莫大な報酬を提供してきた 同一職種内でも、僅かなスーパースターが大金を稼ぐ一方、その他の人々はそれを指を咥えて見ているだけの状況に置かれている 原因については様々な議論:人的資本の問題? 勝者総取りの仕組みが悪い? 組合の衰退のせい? 規制緩和や政治の代表性の喪失が関係? 労働ではなく資本への所得配分が増えている これが最近話題のピケティ本のテーマ この2つの格差にはあまり重なるところが無い、とドーマンは指摘する。前者は労働所得の配分の問題であり、後者は労働所得の比率そのものが低下しているという問題である。前者は99%対1%の問題であり、後者は1%の1%(=上位0.0001)対それ以外の人々の問

                                                                                二つの格差 - himaginary’s diary
                                                                              • スティグリッツ「中央銀行の独立なんかいらない」 - himaginary’s diary

                                                                                昨日エントリの末尾で言及した、The Times of Indiaが伝えるスティグリッツのインド準備銀行主催会合での発言を紹介しておく*1。昨日のエントリのはてぶコメントでは10年前の日本での講演でも同様の趣旨の発言をしていたことをご教示いただいたが、その姿勢は同時期に書かれた道草で紹介されているProject Syndicate論説にも表れているほか、梶ピエール氏がこちらで紹介している著書でも一貫している。 危機以前には、米国の金融機関と(FRBを含む)米国の規制機関は他国が模倣すべき模範として良く持ち上げられていました。危機はそれらの機関への信頼を損なっただけでなく、大いなる制度的欠陥を浮き彫りにしました。明らかになったのは、西側の中央銀行家が主唱する原則の一つ――中央銀行の独立が望ましいということ――は良く言って疑問の余地がある、ということです。 危機においては、中国、インド、ブラジ

                                                                                  スティグリッツ「中央銀行の独立なんかいらない」 - himaginary’s diary
                                                                                • スティグリッツの構造改革論 - himaginary’s diary

                                                                                  スティグリッツがヴァニティ・フェアに書いた大恐慌および大不況に関する記事(H/T Mostly Economics、Economist's View)が波紋を呼んでいる。 以下はその抜粋。 ...the inability of the monetary expansion to counteract this current recession should forever lay to rest the idea that monetary policy was the prime culprit in the 1930s. The problem today, as it was then, is something else. ... The underlying cause was a structural change in the real economy: the wide

                                                                                    スティグリッツの構造改革論 - himaginary’s diary