見るからに誠実そうなカトウさんは、私のインタビューに協力してくれたひとりです。インタビューで、私が「今まで会社を辞めようと思ったことはありませんか?」と質問したところ、興奮気味に、それでいて時折大きなため息をつきながら、この“事件”を教えてくれました。カトウさんの事件はものの見事に上司の無責任さを物語る、極めて優れたケースです(ちょっと変な評価ですが)。 上司は思いつきでものを言うものですが、思いつきはたいてい、責任転嫁です。責任を押しつけた常務さんは「俺ってズルいかも?」なんて微塵も感じていません。“ジジイの壁”に巣くう役員クラスのスーパー昭和おじさんたちには、内省の回路がないのです。 「担当者を決める裁量権」はカトウさんにありましたから、それを逆手にとり、常務さんはカトウさんに責任を取らせることが自分の責任と都合よく解釈しました。その間のプロセスなどまったく関係なし。「会社を辞めようか
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