ヴァイオリンの対向配置 モーツァルトがマンハイムを訪れた際に書いた手紙に、当時、最高のオーケストラだった同地の宮廷楽団の規模の大きさと充実ぶりを絶賛した文章が見られるのだが、その中に「第1ヴァイオリンが左(下手)、第2 Vn.が右」という配置に関しての記述がある。このヴァイオリンを指揮者の両翼に向かい合う形で置く対向配置は、その後も各地で、ほぼ基本的なフォーマットとして継承されてきた。 こうした配置がもたらすステレオ効果の歴史は、バロック時代の初期まで遡る。2台のオルガンが対向した位置に設置されたヴェネチアのサン・マルコ大聖堂で活躍したJ. ガブリエリは、その音響効果を積極的に利用し、2群に分かれた合奏や合唱をオルガンの下に置き、掛け合ったり、エコー的な模倣を演じたりするステレオ効果を作品の最も重要な構造として織り込んだのである。テムズ河の舟遊び等で複数の船に乗せたオケによる掛け合いや模倣