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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (42)

  • どうやったら連続性を維持したまま意識をアップロードできるのか?──『意識の脳科学 「デジタル不老不死」の扉を開く』 - 基本読書

    意識の脳科学 「デジタル不老不死」の扉を開く (講談社現代新書) 作者:渡辺正峰講談社AmazonSFの世界ではよく人間の意識をアップロードして肉体の縛りから解放される、「マインドアップロード」と呼ばれる技術が扱われる。実際、人間の意識とはけっきょく脳内の化学的な作用の結果生まれるものであるという立場に立つのであれば、その作用をデジタル上でも機械上でも再現できればそこに「わたし」が宿るはずである。 今はまだSFの中の話にすぎないが、現実でもBMI(ブレイン・マシン・インタフェース)技術や脳神経科学の進展もあり、徐々に現実味を増してきている──ときて、書『意識の脳科学』はまさにそうした「意識のアップロード」をテーマにした一冊だ。著者の渡辺正峰は神経科学を専門とする東京大学大学院工学系研究科の准教授で、研究だけでなく自身でも意識のアップロードを目指すスタートアップ「MinD in a Dev

    どうやったら連続性を維持したまま意識をアップロードできるのか?──『意識の脳科学 「デジタル不老不死」の扉を開く』 - 基本読書
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    quick_past 2024/07/11
    Aという人間の意識をコピーした瞬間に、私はAであるという意識を持った人間が二人生まれ、別々の体験をするわけで、どちらも元のAとは別人になると考えてる。
  • どうすれば相手の意見を変えられるのか──『エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?』 - 基本読書

    エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか? 作者:リー・マッキンタイア国書刊行会Amazonこの『エビデンスを嫌う人たち』は、『「科学的に正しい」とは何か』の邦訳が先日刊行された気鋭の哲学者リー・マッキンタイアによる「科学否定論者を説得するための方法」についての一冊である。科学否定論者とは、たとえば人為的な気候変動は起こっていないと主張する気候変動否定者に、反ワクチン、反コロナ、果てには地球は平面だと主張する地球平面説を支持している人らのことを指している。 こうした科学否定論者に共通点は存在するのか。また、彼らにエビデンスを提供することでその考えを変えることができるのか。エビデンスを提供するといっても、どのように提供するのが最も効果的なのか。エビデンスで人の意見が変えられないのだとしたら、他に変える方法はあるのかを、様々な研究をもとにして紹介する──だけでなく、

    どうすれば相手の意見を変えられるのか──『エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか?』 - 基本読書
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    quick_past 2024/06/20
    この件、デマを仕掛ける連中と、彼らの言を求める側が両方いないと成り立たないんよ。知識のハンドリングをできないけど、推測する能力だけ変に高いと、己の信じたい情報にのみつっぱしるのだと思う
  • 男性が孤独に陥りがちな理由について──『男はなぜ孤独死するのか 男たちの成功の代償』 - 基本読書

    男はなぜ孤独死するのか 作者:トーマス・ジョイナー晶文社Amazonこの『男はなぜ孤独死するのか』は主に男性の孤独に焦点をあて、なぜ男性は孤独に陥りがちなのか。そして、(人が望まぬ)孤独をどう解消すればよいのかについて書かれた一冊である。「孤独死」というと日では一般的に「一人暮らしの人が誰にも看取られずに死ぬこと」を指すが、書の原題は『Lonely at the Top』で、あくまでも孤独それ自体がテーマであり、孤独死がテーマになっているわけではない。孤独死が良い/悪いという話はないし、家で一人で死ぬことに関する言及もない。 なぜ「男性の孤独」に注目する必要があるのか さて、ではなぜ「男性の孤独」に注目する必要があるのか。孤独に陥るのは何も男性だけの特権ではないのだから、女性も男性もひっくるめて論じればいいではないかと思うかもしれないが、これにはいくつかの理由が存在している。たとえば

    男性が孤独に陥りがちな理由について──『男はなぜ孤独死するのか 男たちの成功の代償』 - 基本読書
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    quick_past 2024/06/07
    周囲に同性の友人がいるのにも関わらず、孤独だって言ってる人結構いる。人によって孤独の意味が違いすぎる。男性はまだまだ、自分たちの問題が何なのか言語化できてないんだと思うな
  • 原作《三体》三部作にたいする大胆な再構成を試み、芯を同じくした別物として生まれ変わったNetflix版──『三体』 - 基本読書

    www.netflix.com 世界累計2900万部、日中国SFブームを引き起こすきっかけになった劉慈欣による壮大なSF長篇《三体》三部作。そのNetflixドラマ版が先日公開された。エピソード数は全部で8話で、原作(第二部、第三部は上下巻)の分量のことを思えば8話でその物語が全部語り尽くせるわけもないから、ドラマ版は原作の途中までになる。 で、SF超大作ドラマだし原作も好きだしですぐに観てみたのだけど、これが大変おもしろかった。原作とは大きく変わっている部分も多いが芯はブレずに残っていて、たしかに『三体』を観たという感触が強く残る。たとえば、原作では冒頭に配置され、作中の重要な人物が人類に絶望するきっかけを与える中国の文革のシーンも、Netflix版の前に公開済みのテンセント版とは違ってきっちりと冒頭で描かれている。 物語の大まかな流れは基的に同一だし、ガジェットや重要な出来事もそ

    原作《三体》三部作にたいする大胆な再構成を試み、芯を同じくした別物として生まれ変わったNetflix版──『三体』 - 基本読書
  • ヤドカリやハチやタコの「経験」はどのようなものなのか?──『メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生』 - 基本読書

    メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生 みすず書房Amazonこの『メタゾアの心身問題』は、タコやイカがどのような「意識」を持っているのかについて様々な観察・研究をもとに紹介した、『タコの心身問題』の続篇にあたる。 『タコの心身問題』は邦での刊行が2018年で、その後何度も「人以外の生物の心、意識」や「タコの知性について」語る時にこのブログや他所の原稿で何度も取り上げてきたノンフィクションだったが、作(メタゾア〜)もそれに勝るほどの知的興奮を与えてくれる傑作だ! 作でもタコの話題が前作より最新の情報とともに語られているので、ある意味では続篇にしてアップデート版といえる内容に仕上がっている。 タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者:ピーター・ゴドフリー=スミスみすず書房Amazonタコに続いての「メタゾア」なので、当然作ではメタゾアの心と意識について触れていくわけだが

    ヤドカリやハチやタコの「経験」はどのようなものなのか?──『メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生』 - 基本読書
  • 早川書房の2000作品以上が50%割引の電子書籍セールがきたので、新作SF・ノンフィクションを中心にオススメを紹介する - 基本読書

    ブラックフライデーに合わせて恒例となっている早川書房の50%割引のセールがきているので、今回も一年以内に刊行された新刊を中心におもしろかった作品を紹介していこうかと。夏頃のセールが2700点がセール対象だったのにくらべて今回は「2000作品以上」ということで、特に直近半年ぐらいの作品はあまりセール対象になっていないようだが、それでもおもしろいはたくさんあるので観ていこう。 amzn.to 最初はSFから プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ ウィアー早川書房Amazon引き続き劉慈欣作品の多く(『三体』三部作からスピンオフの『三体0 球状閃電』や『三体X 観想之宙』や短篇集の『円』など)がセール中なのでまだの人にはひとまずおすすめしておくのと(最新刊の劉慈欣長篇デビュー作『超新星紀元』はセール対象外)、アンディ・ウィアーの傑作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』もセール対象。

    早川書房の2000作品以上が50%割引の電子書籍セールがきたので、新作SF・ノンフィクションを中心にオススメを紹介する - 基本読書
  • なぜ、アルツハイマー病の研究が遅々として進まなかったのか?──『アルツハイマー病研究、失敗の構造』 - 基本読書

    アルツハイマー病研究、失敗の構造 みすず書房Amazon認知症の一種であるアルツハイマー病は、誰もが老化と共におちいる可能性のある病気だ。記憶力が衰え、言語・思考などあらゆる知的能力がだんだん衰退し最終的には死に至る。体はそのままで人格が壊れていくことから人の恐怖はもちろん、日常生活を単独で行うことが難しくなっていくので、介護負担・費用の問題も大きい。 がん治療が進歩し人々が長く生きるようになると、必然的にアルツハイマー病の患者は多くなる。厚生労働省が2022年6月に公表した患者調査(2020)では継続的に治療を受けているアルツハイマー病の患者数は79万人にものぼる。1996年には2万人であったことを考えると、増えているのは間違いない。それなのに、わずかに進行を遅らせる薬こそ存在するものの、症状を劇的に改善させる薬は作られていない。 最近も、米品医薬品局(FDA)がアルツハイマー病治療

    なぜ、アルツハイマー病の研究が遅々として進まなかったのか?──『アルツハイマー病研究、失敗の構造』 - 基本読書
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    quick_past 2023/08/21
    “なぜマウスではうまくいったのにヒトではダメだったのかといえば、そもそも当時作製されたマウスはアルツハイマー病とはいえなかった”
  • 現代ではありえない、数々の破滅的な冒険を繰り返した海賊たちの冒険録──『海賊たちは黄金を目指す: 日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘』 - 基本読書

    海賊たちは黄金を目指す 日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘 作者:キース・トムスン東京創元社Amazonこの『海賊たちは黄金を目指す』は、1600年代の後半、スペインの海や街を荒らしまわり、破滅的な戦闘を幾度も乗り越えてきた伝説的な海賊たちの日誌をもとに、その冒険を描き出した一冊である。「海賊ノンフィクションに外れなし」と僕が勝手に思うぐらいには海賊について書かれたノンフィクションはおもしろいものが多い。 書もその例に漏れないどころか、数多ある海賊ノンフィクションの中でも群を抜くおもしろさだ。原題「BORN TO BE HANGED」(絞首刑になるために生まれてきた)が示すように、自分の命を投げ売ってでも大金を手に入れ、敵を殺すぞ! という破滅的な気性。船や街を襲って大量の金を手に入れても、船内の賭博で金をすべてスってしまい、マイナス分を取り戻そうとしてまた別の街を襲い

    現代ではありえない、数々の破滅的な冒険を繰り返した海賊たちの冒険録──『海賊たちは黄金を目指す: 日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘』 - 基本読書
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    quick_past 2023/08/15
    リングローズもダンピアも、トマトスープさんが取り上げてたな・・・”バッカニアの一人だったウィリアム・ダンピアの冒険を漫画で描いている『ダンピアのおいしい冒険』もおもしろいのでこっちも良いよ。”
  • AIによる「自動化」の背後に隠れて生み出された、大量の人間を必要とする仕事について──『ゴースト・ワーク』 - 基本読書

    ゴースト・ワーク 作者:メアリー・L・グレイ,シッダールタ・スリ晶文社Amazon『ゴースト・ワーク』とまるでホラー小説のような書名だが、ノンフィクションである。「ゴースト・ワーク」とは書の造語で、人工知能やウェブサイトの動作を支えている、見えづらい(あるいは、意図的に隠されている)裏側の人間の労働のことを指している。わかりやすい例でいえば、人工知能のモデルに学習をさせるために、の画像にのラベルを貼りつける、あるいはフェイスブックやインスタグラムやツイッターのようなSNSで、暴力的なコンテンツとAIが自動で判定したコンテンツが、当にまずいものなのか、誤判定されたものなのかをチェックする仕事である。 GPT-3〜4の登場もあってAIの発展著しい昨今、AIは多くの人間の仕事が奪われると恐怖と共に語られることが多いが、まだまだ完全に人間の仕事を置き換えることは難しい。それは逆にいえば、「

    AIによる「自動化」の背後に隠れて生み出された、大量の人間を必要とする仕事について──『ゴースト・ワーク』 - 基本読書
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    quick_past 2023/07/10
    カムイ伝に、江戸時代の精米のきつさを軽減しようと、主人公が精米の機械化を試すんだけど、仕事を奪うなと一斉に叩かれてる描写があった。でもそれは、代替のもっと上流の仕事を社会が作ればいいだけなんだ。
  • なぜ一見何の利益もない嫌がらせ行為を行う人間が存在するのか?──『悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』 - 基本読書

    悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか? 作者:サイモン・マッカーシー=ジョーンズインターシフトAmazon最近、仕事中のほとんどの時間は何らかのゲーム配信(最近はLeague of Legends)を垂れ流していることが多い。人気のストリーマーは数千、数万といった視聴者を集める。そうすると、一人用ゲームではない対戦系ゲームを配信で行っている配信者は、少なからぬ「嫌がらせ」行為に遭遇するものだ。 たとえば、配信者がゲームのマッチングを開始したのにタイミングを合わせてマッチング開始し、配信者とマッチングしたらその試合で通常ありえないえないゲームプレイをして負けに導いたり、挑発行為を繰り返したり、Apexのようなバトロワなら配信を見て位置を把握し集中攻撃をかけたりが行われるのである。 そうした悪意あるプレイヤーが、なぜ、自分にとってたいして利益があるようにも思えない悪意あ

    なぜ一見何の利益もない嫌がらせ行為を行う人間が存在するのか?──『悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』 - 基本読書
  • 2043年、ブドウを死滅させるウイルスの蔓延によりワイン産業が危機に瀕した世界を描き出す、極上のワインSF──『拡散 大消滅2043』 - 基本読書

    拡散 上 大消滅2043 (文春文庫) 作者:邱挺峰文藝春秋Amazon『拡散』は、台湾の作家邱挺峰の作家デビュー作にあたる、近未来ワインSFである。最初、書名だけ見てありがちな終末SFだと思い指が動かなかったのだが、読み始めてみればワインの愛好家によって書かれた、極上かつ格的なワインSFであった。 登場人物は誰も彼もワイン産業従事者、評論家で、作中では誰も彼もがワインを飲みまくり、飲めば味や香りを語りまくり、ついでに歴史や産地当てゲームも行われる。異様なまでのワインへの熱量によって書かれた小説であることは読み始めた直後から疑いようもなく、特に終盤はその情熱に唖然とするほどだった。スリラーとして見た時展開が単調に感じられる面もあるにはあるのだが、そんなことがどうでもよくなるぐらいワインSFとして唯一無二の作品である。今年の掘り出し物といえる一冊だ。 あらすじ、世界観など 物語は主にブド

    2043年、ブドウを死滅させるウイルスの蔓延によりワイン産業が危機に瀕した世界を描き出す、極上のワインSF──『拡散 大消滅2043』 - 基本読書
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    quick_past 2022/12/10
    フィロキセラでぐぐれ
  • 魚にはどれだけの知性があるのか?──『魚にも自分がわかる──動物認知研究の最先端』 - 基本読書

    魚にも自分がわかる ──動物認知研究の最先端 (ちくま新書) 作者:幸田正典筑摩書房Amazonこの『魚にも自分がわかる』は、「魚の自己認識」、はてはその先の問いかけとして魚の知性について書かれた一冊である。魚は脳も小さいし、餌に飛びつくような能的な動きが目立つので、知的な印象を持っている人は多くないだろう。 だが、近年の動物認知研究の進展によって、そうした認識が誤りであることが明らかになってきた。たとえば、魚は鏡にうつった個体を正しく自分だと認識することができるし、そこに寄生虫がついているのが見えたら、砂底に身体をこすりつけてとろうともする、それどころか、こすりつけた後にもう一度鏡を見る動作までするのだという。鏡にうつった個体を自分だと認識できる鏡像自己認知の能力は、それまで猿や象など一部の知的とされる動物でしか確認されていなかったが、「魚の自己認識」について世界で唯一の研究室であると

    魚にはどれだけの知性があるのか?──『魚にも自分がわかる──動物認知研究の最先端』 - 基本読書
    quick_past
    quick_past 2021/12/12
    魚に痛みがあろうがなかろうが、うまいからと言っては残酷焼きやいたぶるような調理法への留保もなく、ただただ享受し貪るような行動そのものが問題。そこに何の躊躇も無い人間は他者にどれだけ共感しうるだろうか?
  • 脳に性差はあるのか?──『ジェンダーと脳──性別を超える脳の多様性』 - 基本読書

    ジェンダーと脳――性別を超える脳の多様性 作者:ダフナ・ジョエル,ルバ・ヴィハンスキ紀伊國屋書店Amazonこの『ジェンダーと脳』は、よく言われる「男女で脳に性差はあるのか?」というテーマに、神経科学者であるダフナ・ジョエルが向き合った一冊である。 先に結論だけ書いておくと、性差は間違いなくある。たとえば、男性と女性で脳全体の大きさに差があるし、視床下部の中継核の大きさだとか、脳領域の各所や、神経伝達物質にも性差は存在する。ただ、注意しておきたいのは、その差は何十、何百といった脳の平均の差であるということだ。たとえば、男性の方が平均としては大きいとされる脳領域であったとしても、女性で男性の平均を超えているケースもあれば、男性で女性の平均に近いケースもあり、多くの女性と男性の脳は重なり合っている。 つまり、大半の女性と男性では大きさが変わらないのだ。あるいは、その特定の領域は一部の女性で大き

    脳に性差はあるのか?──『ジェンダーと脳──性別を超える脳の多様性』 - 基本読書
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    quick_past 2021/09/06
    2000年代の例の本を元にしたセンセーションな風説流布は、多分にジェンダー的偏見に基づいていて、あれが流行ったのもまた受けて側のうっすらとした願望や、偏見を補強してたからな。
  • 能力主義信仰を問い直す『実力も運のうち』から、物理学に美しさは必要か? と批判的に切り込む『数学に魅せられて、科学を見失う』までいろいろ紹介! - 基本読書

    の雑誌459号2021年9月号 の雑誌社Amazon はじめに の雑誌に書いているノンフィクションガイド連載の原稿(2021年6月)を転載します。毎月書いていると今回はけっこうしっかりしてるな、とか今回は(公言はしないけど)薄味だな、とかいろいろ思うところがあるんですが、この号は密度が濃い月。 ちなみに、2021年09月号が今最新の号ですが、こちらでは海外ノンフィクション特集ということで、僕はこの連載に加えて21世紀の海外ノンフィクションの中からベスト的な50作を選んでみよう!(書評家の東えりかさん、編集部の杉江由次さん、僕の3人で) という座談会に出てその模様が収録されています。この連載でも僕は取り上げるのはほとんど海外ノンフィクションなので個人的にもかなり好きな号です。 50作は多いっちゃ多いけど少ないっちゃ少ないので、網羅的で完璧なリストを目指すのではなく(そんなのは不可能)、

    能力主義信仰を問い直す『実力も運のうち』から、物理学に美しさは必要か? と批判的に切り込む『数学に魅せられて、科学を見失う』までいろいろ紹介! - 基本読書
    quick_past
    quick_past 2021/08/16
    世界はもっとシンプルに記述されてるはずだ。と学者たちは躍起になってるが、でもそれもまだ、もっとうまく説明する視点を見つけられてないだけだと思う。酸素を見つける前のフロギストン説のように。
  • ほとんどの人は本質的に善良であると、強力に性善説を推し進める一冊──『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章』 - 基本読書

    Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章 (文春e-book) 作者:ルトガー・ブレグマン文藝春秋Amazonこの『Humankind』は、オランダで25万部以上の部数を重ね、『サピエンス全史』のハラリにも絶賛され対談をし、ピケティに次ぐ欧州の知性などと呼ばれる、オランダの若手寄りの(1988年生まれ)作家、ルトガー・ブレグマンの話題作である。 この、書名だけだと胡散臭い宗教書にしか見えず、話題書というだけで手にとったのだけど、展開しているのはなかなか過激な主張だ。それは、『ほとんどの人は質的にかなり善良だ』というもので、ほとんどの人とかかなりとかちょっと微妙な修飾語がついていてそこはかとなく不安にさせるが、書はなぜそんなことが主張できるのかを、さまざまな実験・研究・歴史の事例から見ていくことになる。 それが過激な主張と思えるのは、人間が質的に善良とは

    ほとんどの人は本質的に善良であると、強力に性善説を推し進める一冊──『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章』 - 基本読書
  • ヒューゴー、ネビュラ、ローカスと主要SF賞を総なめにした、エモーショナルな往復書簡時間SF──『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 - 基本読書

    こうしてあなたたちは時間戦争に負ける (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:アマル・エル=モータル,マックス・グラッドストン早川書房Amazonこの『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』は、アマル・エル=モータル、マックス・グラッドスト二人の共作による、詩的な時間SFである。英語圏における小説の長さの基準的にはノヴェラ(中編)で、書も240ページほどとコンパクトだ。 エモエモ往復書簡時間SF 作がぱっと見で凄いのは、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、英国SF協会賞と賞的な評価が異様に高いところにある。賞の評価がどれほど高かろうが作品の中身の質の保証にはならないわけだけれども、それなりに期待して読み始めたら、これがたしかにおもしろかった。あらすじとしては、《エージェンシー》と《ガーデン》という二大勢力が時空の覇権をかけて争う──といった感じで、何の新鮮味もない。 だが、実際には

    ヒューゴー、ネビュラ、ローカスと主要SF賞を総なめにした、エモーショナルな往復書簡時間SF──『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』 - 基本読書
  • 早川書房の1500作品が50%割引の大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する - 基本読書

    三体Ⅱ 黒暗森林(上) 作者:劉 慈欣早川書房Amazon早川書房の1500作品が最大50%割引という大型の電子書籍セールが来たので、僕が読了済みのものからオススメの作品を一部紹介してみよう。早川書房は定期的に電子書籍セールをやるが、前回の大規模なものは確か2020年3月頃の1000点セールだったので、セール対象は増えていることになる。なんと、先日完結したばかりの『三体』も、さすがに完結巻は対象ではないけれども第二部までがセール対象。 amzn.to まずはSFから紹介する。 三体 作者:劉 慈欣早川書房Amazonまずは早川といえばSFということで、SFから紹介してみよう。目を引くのはやっぱり『三体』である。先日三部作全体の紹介を書いたばかりだが、文化大革命からはじまり異種知性とのファースト・コンタクトが描かれる比較的現実路線の一巻。ファースト・コンタクト後、人類最高峰の知性が異種知性に

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  • 数学的原理に裏打ちされたファンタジー小説──『精霊の箱: チューリングマシンをめぐる冒険』 - 基本読書

    精霊の箱 上: チューリングマシンをめぐる冒険 作者: 川添愛出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2016/10/26メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る精霊の箱 下: チューリングマシンをめぐる冒険 作者: 川添愛出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2016/10/26メディア: 単行この商品を含むブログ (4件) を見る書は副題にチューリングマシンをめぐる冒険とあるように、「チューリングマシン」について、その諸原理や応用問題を取り扱った一冊である。チューリングマシンとは計算を数学的にモデル化するために生み出されたもので──と説明を始めたらキリがないので一旦終わるが、それと同時に、書は「格ファンタジー」でもある。 ベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を筆頭として、ストーリー仕立てで現実の経営論や

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  • 数学概念が人類に生まれつきそなわっていないことを示す、数と言語人類学──『数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた』 - 基本読書

    数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた 作者:ケイレブ・エヴェレット発売日: 2021/05/08メディア: 単行 はじめに 数の概念は、生まれつき備わっているものではない 数の概念がないなんてことがあるのか? 1〜3 おわりに はじめに 『ピダハン──「言語能」を超える文化と世界観』という、左右や数字の概念を持たない珍しい言語の持ち主であるアマゾンの少数民族について書かれたノンフィクションがある。この、少数民族の話ながらもそこからチョムスキーの言語能否定の話や、幸せとは、文化とは、宗教とは、といった話に繋がっていく普遍的な話を展開しており、そのユーモア溢れる筆致もあって世界的に話題になっていった。 今回取り上げたい『数の発明』は、その『ピダハン』の著者ダニエル・L・エヴェレットの息子、ケイレブ・エヴェレットによる著書である。親子揃って言語学者とは凄いが、ケイレブは父親であ

    数学概念が人類に生まれつきそなわっていないことを示す、数と言語人類学──『数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた』 - 基本読書
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    quick_past 2021/05/12
    ほとんどの概念や学問はこれで、最初からハードコーディングされてる本能以外の機能も、追加するのが人間の「知性」なのだと思う。
  • 精神病院に偽患者を送り込みその脆弱性を指摘した有名な実験は、実は間違いだらけだった──『なりすまし——正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験』 - 基本読書

    なりすまし——正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズIII-16) 作者:スザンナ・キャハラン発売日: 2021/04/21メディア: 単行(ソフトカバー)近年、かつて行われた有名な心理学系の実験が、再現実験の失敗やデータ不備の発見により、実は間違っていたという事実が次々明らかになっている。たとえば有名なものに、マシュマロ実験がある。この実験では、マシュマロを皿の上におき、「それは君にあげるけど、私が戻ってくる15分の間にべるのを我慢していられたらもう一つあげる」と指示する実験で、ここで自制し、より大きなリターンを得られた子供ほど、大人になっても優秀と判断される割合が大きかったことを示した。 1970年代に実施されたこのマシュマロ実験は話題になり、いろいろなノンフィクションで目にしていたから、当につい最近まで僕もこれは正しい実験だと思っていた

    精神病院に偽患者を送り込みその脆弱性を指摘した有名な実験は、実は間違いだらけだった──『なりすまし——正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験』 - 基本読書