高い写実性で光と影を捉え、大正時代に木版画の新たな境地をひらいた「新版画」。今年はその展覧会が各所で開かれる。ブーム再燃の兆しを見せる新版画は、輪郭線で囲まれた面にベタで色を塗る点がアニメーションと共通しており、現代のアニメ作家らが注目している。100年以上を経て多くの人を魅了する理由を探った。 新作の背景は「吉田博風」 「吉田博の版画には影響を受けました。業界にファンも多いですよ」。新版画を代表する絵師の名前を挙げてこう語るのは、アニメ映画監督のイシグロキョウヘイさん(40)。 イシグロさんが製作した長編アニメ映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」が6月、全国公開される。高校生の男女が俳句と音楽を通して心を通わせる物語で、ある地方都市が舞台となっている。作品で描かれている山の稜線(りょうせん)や陰影、入道雲のシルエットなどは、吉田の描いたものと雰囲気がよく似ている。80年代に活躍したイ