鏡の中では左右が反対に見えます。これが 「鏡映反転」 です。古来、多くの人たちが、「鏡に映ると、上下は反対にならないのに、左右が反対になるのは何故だろう?」 と首をかしげてきました。 2千数百年前、プラトンが対話編 『ティマイオス』 の中で、この鏡映反転の説明を試みています。プラトンは視覚について間違った理解をしていたので、鏡映反転の説明も間違っているのですが、この問題が紀元前から人びとの興味を惹いてきたということがわかります。 その後、多くの人びとが鏡映反転の説明を試みてきました。誰もが知っている身近な現象ですし、「左右が反対になる」 というだけの単純な現象にみえるので、ちょっと考えてみれば誰にでもすぐに答がわかりそうな気がします。ところが、数多くの哲学者、数学者、心理学者、それにノーベル賞を受賞した物理学者までが論じてきたにもかかわらず、鏡映反転が起きる理由については、未だに定説がない