タグ

ブックマーク / www.ki1tos.com (4)

  • 研究にいちばん役に立つこと - いつか博士になる人へ

    大学院1年目の夏、私は毎日のように先生の部屋に行った。 学会の締め切り間近であせっていた。 「無理に発表する必要はない」 と研究室の人たちは言ってくれた。 でも、他の研究室の同級生たちは発表することが決まっていた。 私もなんとか発表がしたかった。 少しでも研究を進めたくて、毎日先生に指示をもらった。 先生の話をとにかく、ふんふん、わかりました、と言って聞いた。 当は、ちゃんとわかってなかった。 でも何をやればいいか、というのはわかった。 それで十分だった。 余計なことを聞いている時間はなかった。 作業が終わったら、すぐ先生に報告した。 「うん、これなら発表を申し込んでもいいですよ」 という言葉を、私はいつも期待した。 でも先生は、いつも資料をのんびりと見て、期待外れのことを言った。 たとえばある日、先生は、 「この式は、よく見ると面白い形をしてるね」 と言った。 「面白い?」 と私が聞く

    研究にいちばん役に立つこと - いつか博士になる人へ
  • 論文の読解力レベル1〜3 - いつか博士になる人へ

    レベル1.内容がわかる 論文を読むのは暗号の解読みたいだ、と大学生のとき私は思った。 あのころ私は、研究室の机に座って一日中、論文を読んでいた。 読んでいたというか、少し読む→知らない単語が出てくる→辞書で調べる、ということをくり返していた。 辞書に書いてあるのは日語なのだけど、ときどきその日語の意味さえわからないことがあった。 気が遠くなった。 そんなとき私はよく、古代文字を読む人になって気をまぎらわせた。 ラピュタのムスカ大佐みたいな感じだ。 これをぜんぶ解読したとき、きっと聖なる光が私を天空へ導くだろう。 大学院に入ってからも、論文を読むのは大変だった。 先生や先輩たちは休憩中にコーヒー飲みながら読んでたりしたけれど、私にとってはそんな優雅なものではなかった。 でもごくたまに、自分の研究によく似た論文があって、スラスラと読めることがあった。 専門用語や実験方法が知ってるものばかり

    論文の読解力レベル1〜3 - いつか博士になる人へ
  • なんで論文なんか書くのか - いつか博士になる人へ

    私がポスドクになって今の研究室に来たとき、イトウくんという学生がいた。 彼は学部の4年生で、卒業研究をやっていた。 私と彼は研究テーマが似ていたから、よく並んで座って話をした。 キャンパスのイチョウが黄色くなった頃、 「卒研発表までもう3ヶ月しかないです」と、イトウくんが言った。 「やばいね」と私は言った。 人ごとなので、たぶんニヤニヤしていた。 優しい私は、 「そろそろ卒論も書かないといけないね」と、追い打ちをかけようとした。 すると彼は、 「論文は書かなくてもいいです」と言った。 「えっ、そうなの?」 「はい。発表すれば卒業できます」 それを聞いて私は、 「そうなんだ。楽でいいね」と、心からうらやましそうに言った。 イトウくんは、 「そうですね」と、少し困ったように笑った。 このときのことを、私は今でも後悔している。 なんで論文なんか書くのか 私が卒業研究をやりはじめたとき、当時の先生

    なんで論文なんか書くのか - いつか博士になる人へ
  • 人は知ってることしか見えない - いつか博士になる人へ

    大学院に入ったばかりの頃、配属された研究室で研修を受けた。 僕は先輩について回って、実験機器を使ってみたり、実験ノートのとり方を教えてもらったりした。 ある日、先輩が先生たちとミーティングをするというので見学させてもらった。 そのときのことは今でもよく覚えている。 最初に、先輩が実験でとれたデータについて説明した。 先輩の堂々とした説明を聞いて、僕はとても感銘を受けた。 ふんふんとうなずきながら、はたして自分はこんなふうに説明できるだろうか(いや、できない)と思っていた。 でも先輩の説明が終わったとき、 「なんか変だね」 と助教さんが言った。そして、 「普通はこうなるはずなんだけど」 と、他のデータとの違いを指摘した。 先輩と僕は他のデータを知らなかったから、そこが変だと気がつかなかった。 なぜこのデータは変なんだろうねと、皆でうんうん考えていると、 「3次元でグラフを描いてみて」 と先生

    人は知ってることしか見えない - いつか博士になる人へ
  • 1