まず以前の記事で書いたことをやや発展させながら、少しまとめておきます。現在の社会で起きている階層化の動きの中で、差別する側から差別される側へ向かうベクトルで「法の外」、つまり「法の庇護から排除する」という、幻想としての共同観念が生じます。この幻想の根底には、権力の編み目の中に「非人格」という奇妙な空白が開いてしまったという事情が見え隠れしています。会社中心主義が壊れた後の新たな社会編成の内部で生まれてきた行政の声の届かない領域、たとえば「ニート」というイメージで表象される領域を、統治は一旦「非人格」という空白のカテゴリーに囲い込んだのです。しかし、この「非人格」という空白は、行政にとっても危険な空白です。権力はこの空白を新たな統治のシステムで再編成する必要があります。システムの構築と同時に、新たな社会像が形成されてゆきます。たとえば「不審者」という言葉が指し示すのは、浮かび上がってきつつあ