→紀伊國屋書店で購入 『神経文字学』という文字面からSF的な印象をもつかもしれないが、脳科学の視点から文字を考えようという最先端の論集である。 編者の岩田誠氏は1983年に仮名文字と漢字では脳の処理過程が異なるという「二重回路仮説」を提唱した人で、2004年に日本神経学会の会長に就任したのを機に、長年追求してきた神経文字学のシンポジュウムを開き、その成果をまとめたのが本書ということである。 脳における文字処理過程の研究は第二次大戦後にはじまっている。当時は脳の働きを画像化して見せてくれる MRIも PETもなかったが、脳卒中のような脳血管障害の後遺症としてあらわれる失読症や失書症を研究することで、文字の処理過程が推定できたのである。 この方面では山鳥重氏が先駆的な研究をおこない、「二重回路仮説」の先駆となる発見をされているが、一般向けの本としては海保博之編『漢字を科学する』(有斐閣、一九八