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ブックマーク / honz.jp (50)

  • 『「うつ」は炎症で起きる』 「それは体の問題」という新たな視点 - HONZ

    若い医師はあるとき、リウマチ性関節炎と診断されていた女性患者がうつ病をも患っていることに気づいた。そのささやかな発見に気をよくした彼は、上機嫌で先輩医師にその旨を伝える。だが、先輩医師から返ってきた反応はきわめて淡白なものであった。「うつ病? そりゃ、君だってそうなるだろうよ」。 以上は、書の著者エドワード・ブルモアが内科の研修医時代に実際に経験したことである。そしてそのエピソードは、うつ病がこれまでどのように扱われてきたのかをよく物語っている。それはすなわち、「うつ病のような精神疾患はすべて心の問題だ」という扱われ方である。「そりゃ、君だって関節炎のことで悩むだろうし、そうしたらうつ病にでもなるだろうよ」というわけだ。 しかし、著者はいまやまったく別様に事態を見ている。その見方は、かつては自分でも「いかれている」と思えたようなものだ。著者曰く、先の女性患者は「リウマチ性疾患のことを思い

    『「うつ」は炎症で起きる』 「それは体の問題」という新たな視点 - HONZ
  • 『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ

    一般に、は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷戦下のソヴィエトで起きた未解決事件である。 1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが、ウラル山脈北部の山に登るため、エカテリンブルク(ソ連時代はスヴェルドロフスク)を出発した。 男性7名、女性2名からなるグループは、全員が長距離スキーや登山の経験者で、トレッキング第二級の資格を持っていた。彼らは当時のソ連でトレッカーの最高資格となる第三級を獲得するために、困難なルートを選んでいた。資格認定の条件は過酷なものだったが、第三級を得られれば「スポーツ・マスター」として人を指導することができる。彼らはこの資格がどうしても欲しかったのだ。 事

    『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ
  • 『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? - HONZ

    『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか?編集部解説 ネコ派も、イヌ派も、ご用心! あなたの性格や行動が知らないあいだに、腸内や脳などに住む寄生生物によって操られているとしたら? 「まさか、そんなことは!」と思うだろうか。近年、「神経寄生生物学」と呼ばれる分野の研究が明かしているのは、まさにそんなことが起こっている、しかもごく日常的に!である。 たとえば、世界中で3人に1人が感染していると言われるトキソプラズマ原虫。この微生物は主にネコからヒトへと感染し、脳に住みつく。 医学的には、感染しても妊婦などでなければさほど問題はないとされていた。しかし、心理学者や神経科学者らの研究では、人の気分や性格を変えてしまい、そのせいで感染者が危険な行動を取ったりすることがわかってきた。とくに男性では、規則を破り、人と打ち解けない傾向が強く、交通事故などにも

    『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? - HONZ
  • 凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』 - HONZ

    凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』 書名と副題からもわかる通り、書は宇宙史を扱った一冊だ。 これがもうびっくりするぐらいおもしろい/わかりやすい! 他の解説で、書かれている意味がよくわからずに何度も何度も辛抱強く読み返してようやく理解したようなことが、スッと理解できる形で、より短くまとめられていて、まずその端的なわかりやすさに感動してしまった。 書は深いテーマを掘り下げていく類のではないからこれ一冊で宇宙は全てOKというわけではないけれども、その代わりに俯瞰的に宇宙の歴史をまとめ、宇宙の始まりから終わりまでを適切に駆け抜けてみせる。「宇宙論のって出すぎていてどれを読んだらいいかわかんない」という人も多いだろうが、そういう人にこそまず書を渡したい、そんな決定的な一冊なのである。 そもそも終わりはあるのか?

    凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』 - HONZ
  • 『異端カタリ派の歴史 十一世紀から十四世紀にいたる信仰、十字軍、審問』 - HONZ

    読者の皆さんは、「異端」という言葉からどのようなイメージを連想されるだろうか。おそらく、おどろおどろしいイメージの類ではないか。しかし東欧で興り(ブルガリアのボゴミル派)、11世紀に西欧に伝播したキリスト教の一派、カタリ派は、聖職者(完徳者、完徳女)自らが額に汗して働き、力を否定し純粋な神への愛を共有する原始キリスト教共同体のような良き人たちの集団であった。 書はカタリ派の歴史に真正面から取り組んだ700ページを超える力作で、間違いなくカタリ派の全貌を現代に蘇らせた決定版である。なお、カタリという言葉はこれまで清浄を意味すると解されてきたが、著者によるとカタリ派の敵であるローマ教会が下痢(悪徳を垂れ流す)の意味で用いたそうだ。 カタリ派はローマ教会から徹底して敵視された。それはカタリ派が二元論を信じていたからである。神は天、霊、魂を造ったが、地、肉体、物質は悪しき神が造った。彼らは「ヨハ

    『異端カタリ派の歴史 十一世紀から十四世紀にいたる信仰、十字軍、審問』 - HONZ
  • 『「火附盗賊改」の正体 幕府と盗賊の三百年戦争』江戸は意外と治安が悪い? - HONZ

    火附盗賊改といえば、池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』を思い浮かべる人も多いであろう。特にテレビドラマで中村吉右衛門が演じる長谷川平蔵が「火附盗賊改である!」と見得を切るシーンは有名だ。 ところが、小説やドラマなどで有名な火附盗賊改という組織がどのような組織であったのかと問われると、私をはじめ多くの人が明確には答えられないのではないか。そもそも江戸の治安を守っていたのは北町、南町の奉行所ではないのか?という疑問が湧いてくる。小説映画、果ては漫画まで江戸時代を扱う作品は巷にあふれるように存在している。そのために、この時代の事はなんとなく知っているように思いがちだ。火附盗賊改もそんな存在の一典型ではないだろうか。 では火附盗賊改とはどのような組織であったのだろうか。それを知るには徳川幕府創世記の慶長・元和の時代まで遡る必要がある。戦国の余風が残るこの時代には滅亡した大名家の残党とも言うべき人々が

    『「火附盗賊改」の正体 幕府と盗賊の三百年戦争』江戸は意外と治安が悪い? - HONZ
  • 『ルポ ニッポン絶望工場』 メディアが報じない便利さの裏側 - HONZ

    世の中には「知っておくべきだが、知らされていない事実」がたくさんある。書が伝えるのは、日で過酷な労働を強いられている「留学生」や「実習生」の実態である。出稼ぎベトナム人と、彼らをい物にする日語学校、低コストで彼らを雇う企業という三すくみの構図がメインだ。また、中国人や日系ブラジル人減少している理由や、外国人介護士が定着しない理由についても書かれている。書に書かれていることは、日人として「知っておくべきこと」の一つだと私は強く感じた。 書によると、日で暮らす外国人の数は、昨年1年間で約11万人増え、過去最高の約223万人に達した。こうして増加した外国人の半分以上は「実習生」と「留学生」として日にやってきているそうだ。実習生・実習生とも、前年比15パーセントの増加。まさに、急増である。なぜ、そうなったのか。書によると、その答えは出稼ぎである。日の労働人口は減り続けており、

    『ルポ ニッポン絶望工場』 メディアが報じない便利さの裏側 - HONZ
  • 『地図の物語』創造力の拡張 - HONZ

    住居の間取図を見て楽しめる人がいるように、地図を見てその先の光景に思いを巡らせ楽しめる人もいる。地図上から読み取れる地形や街、河川の形状などから、その場所や住む人間達を想像し、あたかも自分もそこにいるような思いを馳せれる心地よさがあるからだ。 書はナショナルジオグラフィックから出版された地図を纏めた一冊である。太古の地図から、空想世界の地図、大遠征や探検の地図、衛星写真の地図まで、人々がどのように世界を捉え、想像し、工夫し、活用してきたかを美しい図版でたどることができる。 冒頭に紹介された写真で目を見開いてしまった。マンモスの牙に描かれた「パブロフ図」。紀元前2万5000年とあるが実はこの図自体、地図かどうか今も議論がなされているそうだ。もし当に地図だとすれば、これまで最古と考えられてきた紀元前700~500年頃の古代バビロニアの粘土板(イラク出土)よりもずっと以前の制作物となる。地図

    『地図の物語』創造力の拡張 - HONZ
  • 『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』 - HONZ

    生物多様性の喪失と聞けば、熱帯雨林やサンゴ礁が目に浮かぶ。絶滅危惧種と聞けば、中国奥地のジャイアントパンダやガラパゴス島のゾウガメを思いつく。しかし、そうした危機的な状況は遠い異国の話とはかぎらず、もっとずっと身近なところで起こっている。私たちの体は無数の微生物からなる「生態系」であり、そこでも種の絶滅は静かに進行している。 2003年にヒトゲノム・プロジェクトが完了したとき、研究者たちはヒトの遺伝子が線虫と同じ、21,000個しかないことに驚いた。ヒトはなぜ、そんなに少ない遺伝子でこんなに複雑な生命活動ができるのだろう? そのカギは、体内に棲む微生物に多くの活動を「アウトソーシング」していることにあった。 赤ん坊は産道を通るとき、母乳を飲むとき、母親から微生物一式を受けとり、その微生物集団と共に成長する。ところが最近では、赤ん坊がその微生物一式を受けとれなかったり、せっかく育ったコロニー

    『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』 - HONZ
  • 『自画像の思想史』 - HONZ

    人類の絵画史は15,000年前のラスコーの壁画から始まると著者は述べる。これに対して自画像の歴史はわずか5~600年。なぜ、かくも長い間人類は自画像に関心を持たなかったのか。ここから探求が始まる。 まず、古代の「自画像以前の時代」。自己と他者(世界)は調和しており、人間は神(世界)に従順であった。人間の顔は普遍的に表現され(イコン、仮面など)、自画像を描く必然性が見つけられなかった。 12世紀頃から画家のサイン代わりの自画像が現れる。ルネサンスから始まる近代は、自己と他者が対等の存在となり、かつ対立する時代であった。鏡が普及し遠近法が用いられて格的な「自画像の時代」が到来する。自己とは何かを追及する上で自画像を描くことが不可避となったのだ。最後に、現代は、自己と他者が分裂・拡散し、自画像を描く意味が喪われた「自画像以降の時代」である。 著者はヨーロッパに見る自画像の展開について、顔の造形

    『自画像の思想史』 - HONZ
  • 『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ

    前作『代替医療解剖』の発表から実に8年。人気サイエンスライター、サイモン・シンの最新作の翻訳版がついに完成しました。テーマはズバリ『ザ・シンプソンズ』。1989年の初放映からすでに600話超! 今も続くアメリカの大人気アニメーションです。黄色い肌に、大きなギョロ目、極端にデフォルメされた姿はきっと多くの人がご覧になっているはず。社会風刺のたっぷりきいたドタバタアニメは時に社会問題にからんで日でも話題に上ります。 でも今回の切り口は、風刺でもなければアニメ論でもありません。『ザ・シンプソンズ』、実は超難解「数学コメディー」だった!! というサイモン・シンならではのものです。この背景にはハーバード大などで数学の博士号を取得した「天才」たちが、研究職をなげうってまで『ザ・シンプソンズ』の脚家になったという、驚くべき事実があるのですが、なぜ、そんなことが起こってしまったのか、そもそもどんな理由

    『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』著者サイモン・シン インタビュー 数十年来の陰謀を暴く - HONZ
  • 『ルポ 同性カップルの子どもたち アメリカ「ゲイビーブーム」を追う』 - HONZ

    性的マイノリティ(LGBT)の権利保障の動きが世界的に進んでいる。LGBTとは、Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイ・セクシャル)、Transgender(トランスジェンダー)の頭文字をとった総称であり、2000年のネーデルランド(オランダ)を皮切りに、ベルギーやスペイン、カナダ、南アフリカ同性婚を認める国が次々と出てきた。 06年にはLGBTの権利の擁護をうたったモントリオール宣言が採択され、15年時点で同性婚を認めている国・地域は24にのぼるという。登録パートナーシップ制などを含めると、G7では日を除くすべての国が対応済みだ(3国が同性婚を是認)。アメリカでは、オバマ大統領が12年に同性婚を支持すると表明し、15年6月には連邦最高裁判所が同性婚を憲法上の権利として認める判決を下して、その流れを加速させた。LGBTの国家首脳も2人誕生している。 これに

    『ルポ 同性カップルの子どもたち アメリカ「ゲイビーブーム」を追う』 - HONZ
  • 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 ダイナミックな文化論を軽やかな足取りで - HONZ

    高野 秀行の最新刊は、固定観念の外側を探検する。テーマはずばり、納豆とは何か? ともすればアカデミックに着地してもおかしくないテーマを、おなじみ高野流の足取りで核心へと迫っていく。このアプローチをアカデミック界の鬼才は、どのように評したのか? 昨夏『世界の辺境とハードボイルド室町時代』で魔球対決を繰り広げた清水 克行氏に、書のレビューを寄稿いただきました。(HONZ編集部) 私自身もそうだが、東日に生まれ育った者ならば、誰しも納豆については、大なり小なり一家言あるのではないだろうか。関西の知人から納豆はダメだという話を聞くたびに、心の中の優越感を隠し切れないし、たまに外国人で納豆がべられるという人に出会うと、「なかなかやるじゃないか」と、急に親しみを覚えたりする。その根底には、あのニオイとネバリの良さが、そう簡単によそ者にわかってたまるか、という思いがある。納豆はクセがあるだけに、他

    『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 ダイナミックな文化論を軽やかな足取りで - HONZ
  • 『第三帝国の愛人』アメリカ大使一家が見た、ナチスの暗い真実 - HONZ

    1933年1月、ヒトラーがヒンデンブルク大統領の任命により首相になってから、翌1934年8月、ヒンデンブルクの死と同時にあらゆる権能を掌握し、絶対的な権力者・総統となるまでの2年弱。ヒトラーとナチスの「権力掌握の総仕上げ」が成され、日常生活に潜んでいた恐怖政治の実体が一気に表面化して世を覆い尽くすこの時代を、ヒトラー政権下で初めてベルリンに赴任したアメリカ大使とその一家が残した日記や手記、膨大な文書や歴史資料をもとに再現したのが書である。 シカゴ大学の教授で著名な歴史学者でもあるウィリアム・D・ドッドは、就任したばかりの大統領・ローズベルトから「政府に奉仕する気があるか聞きたい。ドイツに大使としていってもらいたいのだ」という電話を受ける。「ドイツリベラルアメリカ人の手を示してもらいたい」と。このときすでに4ヶ月も駐独大使の席は空席だった。が、ドッド自身にとっても、周囲の人々にとって

    『第三帝国の愛人』アメリカ大使一家が見た、ナチスの暗い真実 - HONZ
  • 『ペルシア王は天ぷらがお好き?』言語学から見る食の歴史には、驚きがいっぱい! - HONZ

    天ぷらの語源がポルトガル語の「調理」を意味する「tempero」だとされることは、今日では多くの人の知るところであろう。しかし、この天ぷらという料理の起源をたどると、古代ペルシアの「シクバージ」と呼ばれる肉の甘酢煮料理にたどりつくことを、どれほどの日人が知っているだろうか。書はスタンフォード大学で言語学とコンピューターサイエンスを教える教授が言語学の観点から、料理にまつわる様々な歴史的事象を面白おかしく、多くのトリビアを織り交ぜながら紐解いていく、一風変わった作品だ。 さて、話を天ぷらに戻そう。ここまで読んで多くの人は、なぜ肉の煮込み料理であるシクバージが揚物になったかという事に疑問を持つであろう。この問題の鍵は酢という材と船乗りたち、そして中世キリスト教の厳しい戒律にあるという。ササン朝ペルシアの王ホスロー一世の大好物であったシクバージは宮廷料理らしく非常に手の込んだ煮込み料理だ。

    『ペルシア王は天ぷらがお好き?』言語学から見る食の歴史には、驚きがいっぱい! - HONZ
  • 『スーパーベターになろう!』ゲームで変える、あなたが変わる - HONZ

    ゲームばっかりやってたらダメでしょ!」そう子供の頃に言われた経験を持つ方も多いだろう。多くの人に愛されながらも、長らくゲームというものは日陰者の存在であった。 しかし、VR元年とよばれる2016年を目前に控え、このようなゲームの位置づけが大きく変わってきているという。一つはテクノロジーの進化によって、バーチャル領域の精度が飛躍的に向上してきていること、そしてもう一つはゲームの効能というものが科学的に解明されつつあることによる。 書で興味深い事例が、いくつも紹介されている。ワシントン大学の研究チームが重度の火傷治療中の患者のために開発した、『スノーワールド』という3Dバーチャル環境。これは患者がVRヘッドセットを着用し、バーチャルな氷の世界を歩きまわるものだ。火傷治療中の一番痛みが激しい時に、氷の洞窟を探検したり、雪玉を投げたりというプレイすると、痛みや苦しみの軽減にモルヒネよりも大きな

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  • 『独裁国家に行ってきた』204カ国を旅した筆者が語る - HONZ

    204カ国。書の著者が訪れたことのある国の数だ。限りある人生のなかでは、訪れることのできない国、自分自身の目・耳で感じることのできない世界が山ほどあるのだろう。いや、たとえ同じ国を訪れようとも、タイミングや、そこでの人との出会いが異なれば、見える世界や抱く印象は異なってくる。だからこそ、他者の旅行記は、自分が知らない世界、味わったことのない経験に触れられる貴重な資源だ。まして書は「独裁国家」にフォーカスした旅行記で、取り上げられている国の多くが、一生を通じても訪れる可能性が低いと思われる。 書で紹介されている「独裁国家」は、トルクメニスタン、リビア、北朝鮮、ジンバブエ、サウジアラビア、ベネズエラ、キューバ、ベラルーシ、シンガポール、ナウル、コンゴ、ブータン、リベリア、シリアの全15カ国。 日だったらありえないことだらけ 「独裁国家」と聞いて最初に思い浮かぶのはどんなイメージだろうか

    『独裁国家に行ってきた』204カ国を旅した筆者が語る - HONZ
  • 意識は過大評価されている──『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』 - HONZ

    意識をめぐるは最近も『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』や『意識をめぐる冒険』が職の神経科学者によるノンフィクションとして発表されるなど、翻訳(と出版)が比較的に途絶えない分野である。書の著者もまた職の認知神経科学者ではあるが、特異性は徹底した実証に基づく意識の定義、およびその応用可能性についての地道な記述であろう(他の著者が実証に基づいていないわけではなく、アプローチの違いであることは後述)。 書では哲学的な謎を、実験によって検証可能な現象へと変えた戦略を詳しく解説する。この変化は「意識のより明確な定義」「意識的知覚を実験によって操作できるという発見」「主観的な現象に対する尊重」という三つの要素によって可能になった。 書の構成は意識の定義、無意識及び意識の働きの実証的考察、意識に関する理論的仮説の提起、臨床現場への応用事例と段階を踏んで、かつ自身らの物を含む

    意識は過大評価されている──『意識と脳――思考はいかにコード化されるか』 - HONZ
  • 『脳はすごい』としか言いようのない『ある人工知能研究者の脳損傷体験記』 - HONZ

    自動車の追突事故。幸いなことに外傷はなく、CTスキャンなどの検査でも異常は認められなかった。しかし、さまざまな神経障害で生活に大きな支障をきたす外傷性能損傷(脳震盪症)患者となった著者・クラーク・エリオットは人工知能を専門とする大学教授。ほんとうにそんなことがあるのかと思えるほどに複雑な症状だ。つらかっただろうに、よく自らの症状をこれだけ克明に記録したものだ。 典型的な症状は、考えることができなくなったり、意思決定ができなくなったりすることだ。と聞いても、どういうことかわからないだろう。たとえば、リンゴとサラミをまな板の上に置いて切ろうとする。なんら意識することなく、どちらかから切ればいいのである。ところがエリオットにはそれができない。このことは、日常的に無意識におこなっている、と思えるようなことにも意思決定という過程がバックに必要であることを示している。 『ときに私の症状は、はなはだ滑稽

    『脳はすごい』としか言いようのない『ある人工知能研究者の脳損傷体験記』 - HONZ
  • 『ナチ科学者を獲得せよ!』アメリカの繁栄に秘められた、ナチの影 - HONZ

    第三帝国の終焉が近づきつつある、1944年11月26日。フランスのストラスブールでは連合軍とドイツ軍が激しい砲火をまみえていた。そんな戦況の中、都市の中心にある豪華なアパルトマンの一室では、数人の科学者が一心不乱に書類を読み漁っていた。アメリカ人の粒子物理学者ゴーズミットが率いるこの特殊チームはアメリカよりも先進的な研究成果を持っていると考えられていたナチの科学と最新兵器を狩る事を目的としたチームだ。 彼らが捜索している部屋の主はドイツのウイルス学者オイゲン・ハーゲンという男で、ナチの重要な細菌兵器開発者の一人と目されていた人物だ。ここで彼は衝撃的な手紙を見つける。それはナチの医師らが健康な人間を使って生体実験を行っていた事を示す手紙だ。まさに、この日、この瞬間、彼らの手によって、ナチの科学者たちが行っていた非人道的で邪悪な姿が第三帝国という漆黒の闇の中から引きずりだされたのだ。 この事実

    『ナチ科学者を獲得せよ!』アメリカの繁栄に秘められた、ナチの影 - HONZ