やらなくてもいい、できなくてもいい。 作者: 四角大輔出版社/メーカー: サンマーク出版発売日: 2010/04/30メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 4人 クリック: 174回この商品を含むブログ (1件) を見る著者の四角さんから献本して頂きました。書評と言うよりも、彼とのこれまでの出会いを含めた内容になります。 絢香、Superflyを育てた敏腕音楽プロデューサとして今や業界を越えた活躍をしている四角さん。彼とのつながりは、本当にふとしたきっかけだった。京都精華大学の授業にゲスト講師として来て頂いた時に、別の授業の非常勤講師とたまたま一緒に食事した時から、まさにずぶずぶのつながりとなった。あれよあれよという間に、昨年度から精華大の授業も担当して頂いた。その授業は、四角さんの「ソウルフレンド(心の友)」である博報堂のコピーライター佐々木圭一さんと共同で実施している。音楽プロデュ
・次に来るメディアは何か テレビ・新聞は消滅するのか?メディアはどう再編されるのか?アメリカの事例をみながら日本のメディア産業の将来を考察する。内容たっぷり。面白かった。 「ネット上で自分に関心のある情報ばかりを集めるデイリー・ミー(自分のための日刊新聞)現象は、社会の分極化を招き、民主主義を発展させていくうえで阻害要因になりうる」という意見が紹介されていた。検索もカスタマイズもリコメンドも、すべてデイリー・ミー強化につながる。次世代メディアの重要な要素だ。 しかし、デイリー・ミーで社会が分裂するとまではいかないのではないかとも思った。全員がデイリー・ミーしか読まないようになると、逆に広く全体を見渡すグローバル新聞を読んでいる人が大切になるだろうし、逆にデイリー・ミーにグローバルな意見を取り込んで読む人も増えるだろう。そもそも、いろいろな意見を持った人がいるということが、民主主義の前提だろ
・人間の建設 小林秀雄と日本数学史上最大の数学者といわれる岡潔の対談集。 薄い本だが内容はものすごく濃い。 対話から、どれだけ深くを読み取れるか、読者の力が試される高度に知的な雑談。 最初にあいさつの意味もあるのだろうが、岡は小林の批評文に対して、詩人の作品のようだとこんなふうに褒めている。 「岡 勘というから、どうでもよいと思うのです。勘は知力ですからね。それが働かないと、一切がはじまらぬ。それを表現なさるために苦労されるのでしょう。勘でさぐりあてたものを主観のなかで書いていくうちに、内容が流れる。それだけが文章であるはずなんです。」 名文の本質をさらっとこの数学者は言い当てている気がする。さらに理系数学者らしからぬ発言を連発して、小林の文系の領域の知との化学反応を仕掛けていく。 「岡 数学の体系に矛盾がないというためには、まず知的に矛盾がないということを証明し、しかしそれだけでは足りな
・著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 電子書籍ブームによって、またにわかに著作権ブームである。 この本は、まとまっていて、現状をアップデートしたいIT業界人にもおすすめ。 昔、仕事でテレビの番組情報をWeb上で扱う仕事をしていたとき、その業界のルールに戸惑った。テレビ番組表、番組内容、出演者情報、それに関するクチコミなどテレビ関係の情報というのは、Webで扱うに際して権利関係が明確でないものが結構あった。専門家に聞いても、あなた方がやりたいことは法的には大丈夫なはずだが現実ではケースバイケースだと言われた。つまり、法的権利というより業界の慣習や力関係で、情報をどう扱うべきか決まっているように感じた。 「著作権の適用範囲をめぐって、補償金や保護期間延長といった激論がつづく一方で、法律の外に疑似著作権と呼ぶべき情報の囲い込みが数多く生まれています。そのなかには、もっともな理由のあるものもあ
中原淳(東京大学准教授)のブログです。経営学習論、人的資源開発論。「大人の学びを科学する」をテーマに、「企業・組織における人の学習・成長・コミュニケーション」を研究しています。 佐々木俊尚著「電子書籍の衝撃」を読みました。本書は、一か月くらい前?に、電子版が100円で公開され、アクセスの集中により、サーバダウンしたことでも、有名になった書籍です。 本書で、佐々木さんは、現在、米国で起こっている電子書籍プラットフォーム戦争の実態、電子書籍ビジネスの巧妙なビジネスモデル、今後の出版の在り方を、包括的に論じています。 出版に関するステークホルダー、人工物が協調可能な「新たな生態系(Eco system)」が形成される必要がある - 別の言い方をすれば、アクターネットワークが形成される必要がある - これが筆者の主張ではないか、と思います。 ▼ 著者が「出版ビジネスの今後」を予想するうえで、メタフ
・日本人だけが知らない 日本人のうわさ 笑える・あきれる・腹がたつ 世界を取材するライター石井光太氏が集めた日本にまるわるうわさ話とその背景を解説する軽い読み物。海外の人たちの偏見や誤解がいっぱい。笑えるものも多いが、棘があって痛いものも多い。 たとえば、日本人は入国手続きの書類の「SEX」の欄に数字を書くがそれは週に何回の意味だ、なんていう話し。英語ができない日本人への皮肉のニュアンスも込められて、外国では実際に広まっているそうだ。 日本の地下鉄は痴漢だらけだが、中国人や韓国人女性がひとりで乗るときは、バッグに国旗をつけると、痴漢にあわない、なぜなら日本人男性は外国人には痴漢をしないからだ、などという日本留学時の注意があって、実際、そうした自衛手段を取る女性も存在するようだ。 「日本企業は中国でつくった一番いい製品を欧米に輸出する。二番目にいい製品を日本へ逆輸入する。そして最悪の品を中国
・ライフログのすすめ―人生の「すべて」をデジタルに記録する! 著者はスパコン界のノーベル賞といわれるゴードン・ベル賞の設立者のゴードン・ベル本人とマイクロソフトの上席研究員のジム・ゲメル。前書きはなんとビル・ゲイツが書いている、「指先に情報を」のコンセプトを一番最初に提唱したのは俺だ、と。 ライフログとは、人間の個人的な活動のあらゆる面を記録し、保存し、検索できるようにするテクノロジーのこと。ライフログはトータルリコール(完全な記憶)を実現する。人生のすべての情報をクリックで呼び出すことができるし、保存したデータ分析によって、傾向を把握できるだけでなく、リスクやチャンスの予兆をとらえることができる。生活も人生も大きく変わる。ケータイにつぐイノベーションになるのかもしれない。 むろん、テクノロジーの負の側面も懸念される。現在マイクロソフトの研究員もしているゴードン・ベルは、 「みんなが目指す
・強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論 強い者は最後まで生き残れない。他人と共生、協力できる者こそ生き残る。 近代ゲーム理論の大きな2つの成果であるナッシュ均衡と、ジョン・メイナード・スミスらの進化的安定戦略(ESS)。従来理論によれば、人間の利他的な協力行動は、いくつかの場面で生存に少し有利に働くもの、というレベルで理解されてきた。大部分は、利己的に自己の取り分の最大化を図る個体のゲームとして説明されてきた。 しかし、人類文明は、大々的な協力行動の成果であるように思われる。協力は社会の規範ともなっている。現代のゲーム理論には何らかの欠陥があるのではないか?と進化生物学者で「素数ゼミの謎」の著者はにらんだ。 「ゲーム理論の最大の落とし穴は、何よりもその目的がプレイヤーの最大利益を求めることにあるという点に尽きる。人間が社会を作ったそもそもの動機は「存続のための協力」だったが、そ
ホイットマン おれにはアメリカの歌声が聴こえる トマス・マン ヴェネツィアに死す スティーヴンソン ジーキル先生とハイド氏 ヘミングウェイ 老人と海 ソポクレス オイディプス王 古典を片っ端から読んでみようかな、と目論んでいる。一番面白かったのはオイディプス王。最近はギリシア・ローマ文学やギリシア神話に関心があるのでちょっと贔屓目。今年中に神様の名前を片っ端から覚えてやろうかな*1。 ヴェネツィアに死す、は古典新訳文庫で読んだのだけれど、読みにくいのなんの。岩波かどこかから出ている文庫も確かめてみたら同じく読み難かったので、きっと原典も読みにくいのだろう。読後感はカフカの作品と同じような感じ。終始不穏な空気が流れていた。 他には、誰も関心のなさそうな詩集や戯曲を読み解いたり、ビジネス書を読んでお金(税金とか法律とか)の仕組みを勉強してみたり。 日本文学の古典も片っ端から読みたいのだけれど、
いま、佐々木俊尚さんの電子書籍『電子書籍の衝撃』をiPhoneの小さな画面で読んでいる。5章立ての作品の真ん中辺りに相当する第3章にさしかかっているところだが、そこで縷々説明をされているのが、記号消費の時代が終わり、マスメディアが機能しなくなり、みんなが一つの音楽や本に群がる時代が過去のものになってしまっているという話。現象としては、物事の進み行きはそうかもしれないが、佐々木さんの説明には違和感がある。 音楽の世界で、ゼロ年代になってからミリオンセラーが急激に減っている事実を紹介し、佐々木さんはその理由についてこういう語りをする。 要因は複合的です。 最大の要因は、「みんなでひとつの感性を共有する」という「マス感性」の記号消費自体が疲労し、行き詰まってしまったことです。 続いて佐々木さんは日本の経済・社会の変化が変化し、一億層中流社会が崩壊していく時代において「「みんなと同じものを買う」と
「この人はプロフェッショナルだなあ」と思う人は、”山頂”を極めたあとも気を抜かない人だ。最近、そんなふうに思うことが多い。私自身はといえば、例えばAさんと一緒に仕事がしたい、と思ったときに、知らず知らずAさんに「会う」ことが目標になってしまって、会えた瞬間に安心してしまう。そして、その後のフォローがおそろかになって、いつの間にか、「一緒に仕事がしたい」という本来の目的が達成されないまま時間が経過していることに気がつく、というパターンが結構ある。ところが、「この人は本物のプロだなあ」と感じる人をよくよく観察すると、”山頂”に到達したあとも、けっして気を抜かない。そこからの粘りが、仕事の達成度を高め、アウトプットに磨きがかかる。 そんなことを思っていたら、まさにそうしたプロフェッショナルの極意について、登山家の小西浩文氏が次のように書いていた。 経験豊富な登山家が陥りやすい”落とし穴”とは、岩
Author:くるぶし(読書猿) twitter:@kurubushi_rm カテゴリ別記事一覧 新しい本が出ました。 読書猿『独学大全』ダイヤモンド社 2020/9/29書籍版刊行、電子書籍10/21配信。 ISBN-13 : 978-4478108536 2021/06/02 11刷決定 累計200,000部(紙+電子) 2022/10/26 14刷決定 累計260,000部(紙+電子) 紀伊國屋じんぶん大賞2021 第3位 アンダー29.5人文書大賞2021 新刊部門 第1位 第2の著作です。 2017/11/20刊行、4刷まで来ました。 読書猿 (著) 『問題解決大全』 ISBN:978-4894517806 2017/12/18 電書出ました。 Kindle版・楽天Kobo版・iBooks版 韓国語版 『문제해결 대전』、繁体字版『線性VS環狀思考』も出ています。 こちらは10刷
ボストンで13年働いた研究者が、アカデミック・キャリアパスで切磋琢磨する方法を発信することをめざします。 2024/07 « 12345678910111213141516171819202122232425262728293031» 2024/09 ー研究者は英語の学習時間をライティングにより多く割くべきー グローバル化した世界で英語は”共通のコミュニケーションのプラットフォーム”としてますます重要性を増していくでしょう。英会話ができるようになることが、これからは必要不可欠になると提唱するスクールもあり、多くの時間とお金を英会話につぎ込んでいる研究者もいるのではないでしょうか。 しかし、主として日本を仕事の場として活躍する研究者や学生にとって必要な英語でのコミュニケーションの形態に優勢順位をつけるとすれば、英会話がトップに来るのでしょうか。英語の勉強のための貴重な時間とお金の大部分を英会
・友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル 現在の若者心理の研究。いじめ、ケータイコミュニケーション、ネット自殺などを軸に、いま10代、20代くらいの若者たちのコミュニケーション動態と深層心理を探る。 近年の調査では思春期に反抗期がなかった若者が増えているそうだ。 かつて尾崎豊の「十五の夜」の歌詞にあったような社会に対する反抗心と、現代のアンジェラ・アキが歌う「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の未来の自分に対するメッセージを比べると歴然としているが、現在の若者世代は他者との対立の回避を最優先にする「優しい関係」の世代だ。 だが、この優しい関係は決して個々の心にとって優しくはない。「教室は たとえて言えば 地雷原」という川柳があるそうだが、見かけ上の「優しい関係」を営む場に絶対権が与えられ、息苦しさを感じている若者が多いという。 「「優しい関係」とは、対立の回避を最優先にする関係だから、互いの
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