日本でもさかんに報道されたが、6月末にフランスのパリ郊外ナンテールで起きた警官による十七歳のアルジェリア系フランス人少年の射殺に端を発した大規模な暴動は、アメリカ合衆国に似た人種差別問題がフランスにおいても根深く存在し、ゲットー化する郊外都市の住民と警察権力との対立が激しさを増している現実を露呈させた。 浮かび上がってきたのは、世論のさらなる分極化とメディアの変質、大統領政治のゆらぎ、ひいては、フランス共和国を待ち受ける深刻な危機の予感である。 フランスのマクロン大統領は現在二期目。当初、官僚エリート及び銀行家としての実績をたずさえ、政治的には「極中」(「極右」でも「極左」でもなくて「極中道」という意味)を掲げて左・右両派による伝統的政治を破壊するようにして、2017年に39歳という若さで大統領に就任した。哲学にも造詣が深く、弁舌は巧み、合理的な判断力の持ち主で、エリート臭は漂うものの、若
![石田英敬 blog NULPTYX.COM](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/4d19dcf2be3d484e0c5005b64364d5ed91eb0e6f/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2F2.bp.blogspot.com%2F-bKi3PMjdUYk%2FVyQ_ScRl3aI%2FAAAAAAAAApw%2FUeVVMCMWPKc7RrGmSWAU8_ws7Seb3rYcwCLcB%2Fs400%2F433px-557063499901656087.jpg)