これは、私(わたし)が小さいときに、村の茂平(もへい)というおじいさんからきいたお話です。 むかしは、私たちの村のちかくの、中山(なかやま)というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。 その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐(ぎつね)」という狐がいました。ごんは、一人(ひとり)ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。はたけへ入って芋をほりちらしたり、菜種(なたね)がらの、ほしてあるのへ火をつけたり、百姓家(ひゃくしょうや)の裏手につるしてあるとんがらしをむしりとって、いったり、いろんなことをしました。 或(ある)秋(あき)のことでした。二、三日雨がふりつづいたその間(あいだ)、ごんは、外へも出られなくて穴の中にしゃがんでいました。 雨があがると、ごんは