この労働分配率は国民所得における賃金の割合を示したもので、これは工場労働者の賃金から高額の報酬を受け取るCEOまでのすべての労働者が受け取った賃金が対象だ。つまり、労働の成果が労働者に渡らず、企業に渡っている可能性が高い。実際、図I.3の上では、アメリカの企業の「超過利潤(=独占力から得られた経済的利益)」の比率が年々拡大していることがわかる。また図I.3の下の図は、そういった超過利潤を得ている企業の収益力、いわゆる価格のうちコストに上乗せして得ている利潤である「マークアップ」の推移と、企業の株式の時価総額を比較したものだが、両者の間に強い相関が見て取れる。つまり、労働の成果は労働者に分配されず、また企業は超過利潤を得られるような独占的な市場を形成しており、最終的にそれらの富が一部の超富裕層に吸い取られていることを示している。 このようないびつな資本主義になぜなってしまっているのか、と著者