フーコー、ドゥルーズ、デリダら「現代思想」の巨星なき後に続く、現代フランス哲学の展開を一望する渡名喜庸哲さんの新著『現代フランス哲学』。政治思想史・政治哲学研究者の宇野重規さんによる書評を、PR誌『ちくま』10月号より転載します。 『現代フランス哲学』というタイトルを読んで、何を想像するだろうか。あるいは世代によって違いがあるかもしれない。フランス哲学といえば、サルトルの実存主義を思う人もいるだろう。多いのはレヴィストロースの構造主義から、フーコー・デリダ・ドゥルーズの三人を中心とするポスト構造主義までの、いわゆる「フランス現代思想」ではなかろうか。日本においても、これまで多くの優れた解説書が出版されてきた。 しかしながら、そこで当然に生じる疑問があるのではないか。現代フランス思想とは、これらの思想的潮流に尽きるのだろうか。あるいは、これら「現代思想」のさらに後の展開はないのだろうか。評者