1枚の写真の話をしよう。 その写真は、1件のショットバーの、閉店の夜に撮られたものだという。 バー、という言葉に何処かブラウンの色調が似合うのは、バーボンのあの琥珀の色あいからの連想だろうか。その写真も、どこか全体にブラウンの暖色を帯びていた。カクテルに使われるものでもあるのか、彩々に並んだ酒瓶が、良い背景画となっている。 真ん中に撮影されているのは、男性と女性だ。 「ほら、そこ、寄って寄って」 「はい、チーズ!」 そんな掛け声が聞こえてきそうな。かといって、馴れ馴れしく肩を抱くでもなく、ボディタッチがあるわけでもなく。 ブログに掲載されていたその写真には、ネットで公開するのに差支えがない程度に目元にモザイクがかかり、けれど、口元は、笑った表情がよくわかるよう残されている。女性のほうははしゃぎぎみの笑顔で、男性のほうは髭のある口元にかすかな微笑を浮かべて、1つの店の終わりの夜を惜しむ、二人