→紀伊國屋書店で購入 村上リコ『英国メイドの日常』では、さまざまな元メイドたちの回想録から当時の彼女たちの生活が紹介されていたが、そのなかでも英国でもっとも広く知られているのが、このマーガレット・パウエルの回想録である。 1907年、マーガレットは、英国サセックス州のホーヴという海辺の町で、ワーキングクラスのなかでもことに貧しい家に生まれた。父は雑役夫、母は日雇いの家事雑用をしていたが、父の仕事の減る冬場ともなると家族はその日食べるものにすら事欠く困窮ぶりだった。 長女だった彼女は、母に代わって朝食の支度やかたづけ、下の子たちの送り迎え、買いもの、なんでもやった。おいしかった母親の料理、路上での昔ながらの遊び、比較的余裕のあるときには映画にも行けたし、なにより楽しみだったサーカスには、空き瓶集めや肥やし拾いで小遣いを稼いで、兄弟みんなで出かけた。いつもお腹をすかせていたが、少女時代を振り返