→紀伊國屋書店で購入 この本は、宇宙塵(うちゅうじん)を集めることに心血を注ぐ、ある研究者によって書かれました。名前は矢野創。彼が何者であるかは、冒頭の一節を読めばすぐにわかります。 二〇一〇年六月一四日。私は南オーストラリアのウーメラ砂漠の赤茶けた荒野に立ち、透明感のある日差しと穏やかな風を全身に感じていました。(中略) 二〇〇三年五月九日に鹿児島県の内之浦で旅立ちを見送った工学試験探査機「はやぶさ」の地球帰還カプセルは、前夜に人工流星となって南天の星空を照らし、今は私の眼前数十m先の低い藪の中に、パラシュートと共に静かに横たわっています。太陽の光を受けてキラキラと輝くその姿は、打上げから七年間を経て、小惑星イトカワを往復してきたとは思えないほど、新品同様に見えました。 矢野氏は、日本を感動の渦に巻きこんだ、あの「はやぶさ」プロジェクトで、イトカワの試料(サンプル)を採取する機構(サンプ