VAN創業者、石津謙介の生涯と思想を、アイビー・スタイルの提唱者としてのノスタルジーだけではなく、戦後史や都市文化との関係の中に位置づけ、日本人のライフスタイルを主導した… VANから遠く離れて―評伝石津謙介 [著]佐山一郎 戦後はじめて10代男子がファッションに心も体もかきむしられた時期がある。60年代、その火をつけたのがVANの石津謙介だ。以後、消費文化がミドルティーンにまで下降し、ファッショナブルという感覚が衣服を越えて生活文化全体にまで広がっていった。著者の言葉でいえば、市場がはじめて「文化的基礎」を必要とした時代であった。 VANにかぶれたこの反抗の世代は、石津に「代理父祖(ゴッドファーザー)」を見た。だからやがて父親殺しの対象にもした。VANは、創業から倒産にいたるおよそ四半世紀間、まるでジェットコースターのような社歴を刻んだ。10代の経験がわだかまったままの著者は、煽(あお)