名文を書かない文章講座 芥川賞をはじめ文学賞とりまくりの小説家 村田喜代子による文章術。 自分にしか書けないことを、だれが読んでもわかるように書く。それがこの本の良しとする文章だ。そして「散文とは誠実に言葉数を費やして、自分の前にある事象に迫るものだ」といい、「豊満な体。熟れた若い女の肉体」などという語彙のみをもって最小限の言葉数で語る不誠実な文章を書くなという。かっこをつけた名文は不要、文章は口から。書くときにはモグモグいいながら、自分の言葉で語りなさいという。 何かの拍子にさらっといい一行が書けることがあって、それをベースに文章を仕上げていくということはよくあるが、その一行が名文だと勘違いしてはいけないという指摘に、私はうなった。推敲では鬼にならねばならない。 「削除には多大な勇気がいる。名文なんか惜しみなく捨ててしまおう。ここであらためて名文の定義をすると、真の名文とは、用途に合った