(2012年8月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 昨年10月、カーステレオやビデオカメラを生産するJVCケンウッドのタイ工場が洪水で水浸しになった時、同社はタイ工場の排水・消毒作業を行う間、生産を横須賀に戻した。 「生産を移転するしか選択肢はなかった」。グローバルな生産・調達業務を統括する落合信夫氏はこう言い、同社は技術スタッフの「中核」を日本にとどめていたと指摘する。 国内への生産移転はあくまで緊急措置 だが、今年5月になると、タイ工場は既に活動を再開しており、通常の顧客サービスが復旧していた。創業85年の歴史を持ち、世界初の家庭用ビデオレコーダーを作ったことで最もよく知られる同社にとっては、自国での生産は「緊急措置」だったという。 売上高ベースで見た海外生産比率が約90%に上るJVCケンウッドは、極端なケースだ。だが、これは同社に限った話ではない。企業経営者が諸外国の低コストと