売り手よし、買い手よし、世間よし――。江戸時代から明治期にかけて、近江商人はこの「三方よし」の理念を掲げて全国を行商して回り、多くの大企業を生み出した。近江商人が担いでいた天秤棒は、小商人時代の初心を忘れず、多くのステークホルダーの間でバランスを取ることの象徴だ。 企業にとって三方よしの理念は、今なお色あせることはない。儲かる企業の姿を最も端的に表現しているからだ。しかし実現する手法は大きく変わった。天秤棒をITツールに持ち替え、知恵を絞って情報システムを構築することが、現代の企業には求められている。以前は難しかった理念でも、今はITで実現できる。 顧客のニーズを先回りしてシステムに組み込むことで「買い手よし」を実現し、同時に売上増やコスト削減といった「売り手よし」も達成する。さらに社会にも貢献する仕組みを作り、「世間よし」をも成し遂げる。 その際に利用するITは、必ずしも最先端のものでな