船瀬俊介連載コラム 梅干しと聞いて、年配者なら、まず思い出すのが日の丸弁当であろう。 「日の丸弁当というのは九九%が米で、副食は梅干しだけである。栄養学的にみれば、こんな低カロリーで野蛮な弁当はないだろう」 これは名著『梅干しと日本刀』(上・樋日清之著・祥伝社)の一節。 梅干と日本刀 日本人の知恵と独創の歴史(祥伝社新書) この著は「日本人の知恵と独創の歴史」を見事に活写したことで戦後の優れた比較文化論として名声を博した。 文章はかく続く。 「……だが、これは間違いである。大量の白米とひと粒の梅干しだが、これが胃の中に入ると、この梅干しひと粒が、九九%の米の酸性を中和し、米のカロリーは食べたほとんどが吸収される。 すなわち、日の丸弁当は食べてすぐエネルギーに変わる。労働のための理想食なのだ」 碩学の頼もしい教えではないか。 樋口氏(当時、国学院大学名誉教授)はさらに言う。 「日の丸弁当は、
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