細矢治夫 〈お茶の水女子大学理学部情報科学科 112東京都文京区大塚2-1-1 e-mail: hosoya@is.ocha.ac.jp〉 「帝国主義」という言葉の歴史学的な意味はともかく,広い意味では「他の小国の権威・存立を犠牲にしても,自国の領土・権益の拡大をはかろうとする侵略的傾向」という,金田一の「新明解国語辞典(三省堂)」の解説がなかなか的をついていると思う.しかし,「物理帝国主義」という言葉はどんな辞書にも載っていないし,きちんと定義している文献も存在しないであろう.にもかかわらず,この会誌の読者諸氏のほとんどは,ほぼ同じような意味に解釈されていると思う.ところが一歩物理の外に出ると,自然科学に範囲を限っても,そんな言葉を聞いたことがないという人が結構多いのではないかと思う.つまりこの言葉は,物理学者或いは物理屋さん自身がつくりあげ,身内の間で,或いは専門の近い人の間でjarg