わたしたちは多くのことを頭で学ぶ。すなわち、わたしたちの学習はおもに脳が担っている。しからば、脳がいかにして学ぶかを知れば、わたしたちの学習と教育についても重要な示唆が得られるのではないか。本書は、そんな着想を具体的な形にまとめた一書である。 著者のスタニスラス・ドゥアンヌは、フランスの著名な認知神経科学者である。これまでに『意識と脳』や『数覚とは何か?』などの著書があり、内容は硬派ながら、一般読者をも惹きつけてやまないエキサイティングな議論を展開してきた。今回の本でも、神経科学や人工知能、教育学などの知見をうまくミックスしながら、一般読者でも存分に楽しめる議論を繰り広げている。 本書は3つの部から構成されている。第I部では「学習とは何か」を問い、学習の定義を示したうえで、その含意を掘り下げていく。続く第II部では、「脳はいかにして学習するのか」を扱い、脳が「生まれ」と「育ち」の両方によっ