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ブックマーク / honz.jp (452)

  • 『パパは脳研究者』科学的視線で子供の成長を分析 「そうだったのか!」が満載 - HONZ

    ただいま子育て真っ最中の脳研究者・池谷裕二さんが、親バカぶりを遺憾なく発揮しつつ、一方で科学的な視線で子供の成長を分析する。そのバランスが素晴らしい。「あるある!そんなこと!」と引き寄せられつつ、いつの間にか知識を得られるのだ。 出産時に大量に分泌されるオキシトシンというホルモンは母親を「何があってもこの子を守ろう」という気持ちにさせ仲の良い人をより強く信頼するようにさせるが、それ以外のものには強い警戒心を抱き攻撃的にさえなる。子供を守るためにこそ大切な作用なのだが、さて、パパさん。もしママさんから「この人はともに子育てする頼れるパートナー」とみなされなければ大変なことに。「子供が生まれてからが冷たい」などと愚痴をこぼしているパパさんは、妊娠・出産の過程でママさんの「信頼できる人」の枠に入りそびれているのかも。が、男性でも子育てに積極的に関わるとオキシトシンが出るそうだから諦めずにがんば

    『パパは脳研究者』科学的視線で子供の成長を分析 「そうだったのか!」が満載 - HONZ
  • 『こわいもの知らずの病理学講義』 病は理から、理は言葉から - HONZ

    「十分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない」とはSF作家アーサー・C・クラークの言葉だが、現代社会は魔法としか思えない科学であふれている。急速に発達し続ける科学は生活をより便利なものにしてきたが、深化した科学の中身はより理解が困難になっている。生活必需品となったスマートフォンを例にとってみると、その魔法のような機能の全てを科学的に説明できる人などほとんどいないはずだ。 進化を続けているのはIT関連技術だけではない。分子生物学の発展により、20世紀後半から生命科学は爆発的に進歩しており、新たな薬や治療法がニュースの紙面を飾らない日はない。著名人が実践した先端医療は大きな話題を集め、多くのフォロワーを生む。気を付けなければならないのは、世間をにぎわせる医学情報には誤りが多く、時には有害であるということ。医学を魔法のままにしておくことは、ときに生死に関わりうる。DeNAが運営していた医療情報

    『こわいもの知らずの病理学講義』 病は理から、理は言葉から - HONZ
  • 『パパは脳研究者』 そして、私は赤ちゃん - HONZ

    書は、『海馬』などのベストセラーでおなじみの脳研究者・池谷裕二さんが、愛娘の4歳までの成長を脳科学の観点から、観察・分析しただ。育児ノウハウをまとめた実用書ではない。8歳と4歳の2児の父である私が読んで、手放しで面白かった。「うちの子はもう小学生だから、幼児教育を読んでも遅い」などと躊躇せず、ぜひ、多くの方に読んでほしい。 書を紹介する前に触れたいがある。1960年に発売された『私は赤ちゃん』だ。社会現象をおこした大ベストセラーであり、50年以上版を重ねている超ロングセラーである。「私はおととい生まれたばかりである。まだ目はみえない。けれども音はよく聞こえる。」という書き出しで始まる、赤ちゃん視点で書かれた、珍しい育児書である。 タイトルも似ているが、『パパは脳研究者』の視座の新しさは、この大ベストセラー『私は赤ちゃん』に比することができる。パパが、わが子の変化を脳研究者の視点

    『パパは脳研究者』 そして、私は赤ちゃん - HONZ
  • 『たいへんな生きもの』問題を解決するとてつもない進化 - HONZ

    生きることは問題だらけだ。 仲間との競争あり、べ物にありつけなければ明日はなく、絶えず捕者に狙われ、もちろん愛のお相手も見つけなくちゃ…… いま地球上に棲息している生きものは、こうした問題を、進化の途上で解決してきた「つわもの」揃いだ。——(といっても、生きもの自らの意思によって解決したわけではなく、 たまたま変異によってうまくいった結果なのだが)—— その解決策には、人間から見ると実にオドロキで、奇想天外、恐怖と感涙と爆笑がともに襲ってくるようなものまである。 書は、そんな中でも「とてつもない」やつだけを選び抜いた傑作集だ。たとえば、こんな生きものが…… 後の死骸を背にしょって サシガメというカメムシの一種は、獲物に近づき、長く突き出た口を突き刺す。そして相手をマヒさせる毒を放って、その体液を飲む。 もちろん、獲物のほうも、そう簡単には

    『たいへんな生きもの』問題を解決するとてつもない進化 - HONZ
    takahiro_kihara
    takahiro_kihara 2017/09/29
    図書館にはまだなしorz
  • 『よしもと血風録 吉本興業社長・大﨑洋物語』 - HONZ

    2017年現在。僕はまだ吉興業の社長をやらせてもらっている。 「吉のやり方は読めない。いったいどうやって戦略を立てているんですか?」 最近は人からこんな風に聞かれることも増えた。 だが、このを読んでもらえば分かるように、僕自身には戦略のようなものがあったわけではない。目の前に出てきた〝やらなければならないこと〟や、半ば行き当たりばったりのように思いついたアイディアを、周りの助けを借りてなんとか形にしてきただけだ。人から教えてもらい、で読んだりしたことを自分なりに受け止め、できることを考え、やることがなければ自分で探してみる。そんなことの繰り返しだ。 それでも吉の在り方をほめていただけるのであれば、それは吉興業を助け、支え、応援してくれてきた人たちのおかげである。もちろん、すべての原動力となる芸人さんたちの努力と才能は欠かせない。 さすがに今は個別のプロジェクトで走り回る機会は減

    『よしもと血風録 吉本興業社長・大﨑洋物語』 - HONZ
  • 『仕事と家庭は両立できない?』男性の平等が達成されなければ、女性の平等も実現しない - HONZ

    仕事と家庭は両立できない?-「女性が輝く社会」のウソとホント』(原題:Unfinished Business: Women Men Work Family)の元になった、The Atlantic誌2012年7-8月号の論考『女性は仕事と家庭を両立できない!?』(原題:Why Women Still Can’t Have It All)の中で、アン=マリー・スローター教授が訴えた現代社会の「不都合な現実」は、フェミニズム先進国のアメリカ社会で大論争を巻き起こした。 フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOが、働く女性の意識改革を訴えて全米大ベストセラーとなった『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』(原題:”Lean In: Women, Work, and the Will to Lead”)の出版からまだ数か月という時期に、元国務省高官で現プリンストン大学教

    『仕事と家庭は両立できない?』男性の平等が達成されなければ、女性の平等も実現しない - HONZ
  • 新装復刊『大気を変える錬金術』 世界を変えた化学 - HONZ

    歴史上もっとも人口の増加に貢献した科学的発明は何か?それは、多くの病気から命を救った医薬品でも、世界中のあらゆる地域へ人類を移動させた航海技術でも、機械化による効率化をもたらした産業革命でもない。もちろん、これらの発明も多くの命を支えており、現代生活に欠かせないものではあるが、その発明のおかげでこの世に存在している人命の数では、ハーバー・ボッシュ法には及ばない。この「空気をパンに変える」技術であるハーバー・ボッシュ法がなければ、地球の人口は現在の70億超の半数程度が限界だったはずだ。 このは、化学史上最大の発明と呼ばれるハーバー・ボッシュ法がどのように生み出されたか、2度の大戦に見舞われた20世紀前半の世界で化学がどのような役割を果たしたかを、世紀の発明をもたらした2人の天才フリッツ・ハーバーとカール・ボッシュの人生を軸として描き出す。特にハーバーの人生には、1人の人間が一生の間に経験可

    新装復刊『大気を変える錬金術』 世界を変えた化学 - HONZ
  • 『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』嵐のような天才気象学者の生涯を追う - HONZ

    とにかく私の人生は面白い。安定とは無縁だった 気象学者、藤田・テッド(セオドア)・哲也は、自身の歩みを回顧して、そう語った。書は、彼の生涯をつぶさに書きとめた評伝であるが、この引用の言葉どおり、とんでもなく面白い。なにせ、気象学者ながら、ひじょうに多彩な顔を持ち、絶えず変化する気象現象のように数奇な道のりをたどってきたのだから。 最初に略歴を書いておこう。1920年、福岡県に生まれた藤田は、明治専門学校(現在の九州工業大学)を卒業後、助教授に就任。1953年に渡米し、以後シカゴ大学にて40年以上にわたり局地的な気象現象について研究を重ねる。その後、竜巻の強さを示す階級表「F(フジタ)スケール」の提唱や、飛行機の墜落事故を引き起こす積乱雲からの下降噴流(ダウンバースト)の研究といった業績により、気象学史にその名を残す。1998年に他界。 このように輝かしい経歴を持ち、さらにはフジタテツヤと

    『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』嵐のような天才気象学者の生涯を追う - HONZ
    takahiro_kihara
    takahiro_kihara 2017/09/21
    図書館にあった。
  • 悪事から足を洗いました。そして『組長の妻、はじめます。』 - HONZ

    タイトルを見てどんなだろうと思った方に、あらかじめ申し伝えておきたい。最後には「更生」するので、安心して読み進めて欲しい、と。 だが書は、更生してヤクザの世界から足を洗いましたといった類の単純な話ではない。更生して辿りついた先が、組長のであったのだ。ならばヤクザの世界よりも極悪な世界とは一体いかなるものなのか。それが書の主人公・亜弓さんの半生を通して、これでもかと語られていく。 いつだって大きな悪事は、些細な出来事から始まる。亜弓さんの不良への第一歩も、万引きであった。そこから喧嘩、シンナー、男性関係、クスリへと落ちていく様は、まるでレールを敷かれているかのようである。 そして最大の敵は、喧嘩の相手でも、警察でもなく、仲間たちの存在だ。悪事を行う際の人間関係こそが感覚を麻痺させ、その状態から抜け出すことを困難にし、人生を破滅の道へと追い込んでいくのだ。 やがて彼女は、付き合い始めた

    悪事から足を洗いました。そして『組長の妻、はじめます。』 - HONZ
  • 性欲は関係ない?『男が痴漢になる理由』 - HONZ

    都市部で電車を使って通勤している男性ならば誰もが思ったことがあるはずだろう。いつか、痴漢に間違われるんじゃないか。両手はつり革が基ポジションで、なるべく、手を上げた状態を保っていても、一時たりとも安心できない。思わぬ揺れでその手が人混みの中に潜り込んでしまったときに、「キャー」とか言われたらどうしようなどと妄想は絶えない。頼むよ、さっさと車内に監視カメラでも導入してくれよ。JR埼京線に採用されたっていうから、他の路線でも設置すれば、痴漢も減るし、間違われることもなくなるはず- そんなことを願う男性諸君には悲報だが、残念ながら、車内に監視カメラが導入されようが、痴漢は簡単に減りそうもないのだ。取り締まりを厳しくしてリスクが高くなろうと痴漢加害者の行為は止まらない。むしろ、「乗り越えるべきハードルがひとつ高くなった」と痴漢心を焚きつけかねない現実を書は浮き彫りにしている。 著者は依存症のカ

    性欲は関係ない?『男が痴漢になる理由』 - HONZ
  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
    takahiro_kihara
    takahiro_kihara 2017/09/15
    4/18 借りてきたところだった…
  • 『予期せぬ瞬間 医療の不完全さは乗り越えられるか』 医者と医療にまつわる不完全と不可解と不確実 - HONZ

    医者はどうしてミスから逃れられないのか。医療には未知や不確実なことがどれほどあって、医者や患者はそれらにどう対処したらよいのか。書は、そんな問題をテーマとした、アトゥール・ガワンデのデビュー作である。 ガワンデは、現役の外科医であると同時に、雑誌『ニューヨーカー』にも寄稿する文筆家である。その最新作『死すべき定め――死にゆく人に何ができるか』が大ヒットしたことは、まだ記憶に新しいだろう。2014年に発売された同書は、当初から一般読者の圧倒的な支持を得て、アメリカではすでに90万部のセールスを記録しているという。 『死すべき定め』は、「死をどう迎え入れるか」というテーマに対して、円熟した文章で迫ったものである。他方、研修医時代に書かれた書は、先のテーマを若く瑞々しい筆致で掘り起こしている。そのようにふたつのには、その年齢でしか書けない魅力(そしてガワンデにしか書けない魅力)がそれぞれに

    『予期せぬ瞬間 医療の不完全さは乗り越えられるか』 医者と医療にまつわる不完全と不可解と不確実 - HONZ
  • 優しいペン 『わけあり記者』 - HONZ

    弱者の気持ちを知っている人が、公器としてのペンを持っている社会は安心だ。書の著者は、中日新聞の記者である。過労からうつ病になり、復職後に両親の介護をかかえ、パーキンソン病の進行を薬でおさえながら勤務を続ける「わけあり記者」だ。書では、「ここまで書いてしまって良いのか」と思うほど克明に、事の次第を綴っている。心を動かされない人は、まずいないだろう。 熟達した記者の文章なので、一気に読める。しかし、執筆には相当の時間がかかったものと思われる。なにせ著者はパーキンソン病で、現在は右手の指一で原稿を打っているのだから。一冊のをまとめるには、相当に強い意志の力が必要だったはずだ。果たしてそれは、どんな思いだったのだろう。書のエピローグには、「世のわけあり人材よ胸を張れ」とある。 「わけあり人材」とは、人生の経験値が高い人のことではあるまいか。職場においても組織においても、最も大切な「気付き

    優しいペン 『わけあり記者』 - HONZ
  • 『答えのない世界を生きる』 - HONZ

    いかなるビジネスであれ、ビジネスは人間と社会を相手に行うものである。そうであれば、僕は、人間と人間が創り出した社会の質を理解することがビジネスにとっては何よりも大切だ、と思っている。その意味で、小坂井敏晶著『社会心理学講義』(筑摩書房)は、ここ数年の間に出版されたの中では、最高のビジネス書と呼んで差支えがあるまい。 『答えのない世界を生きる』は、その著者の最新作である。著者の作品は、何を読んでも深く考えさせられるが、書も例外ではなかった。知的刺激に満ち満ちた素晴らしい1冊である。 書は、二部構成をとっているが、第一部は「考えるための道しるべ」と題して、「知識とは何か」「自分の頭で考えるために」「文科系学問は役に立つのか」という3章から成る。戦後の日アメリカに追いつき追い越すことが目標だったが、課題先進国となった現在ではどこにも目標とすべき国はない。これからの日は、自分の頭で考

    『答えのない世界を生きる』 - HONZ
  • 『芸術・無意識・脳』人の心は、どこまで解明されてきたのか - HONZ

    我々はなぜ芸術に心惹かれるのだろうか。人間の心が脳の活動から生まれているのは間違いないが、芸術作品を鑑賞する時、我々の脳の中では何が起きているのだろうか。 書の表紙にもなっているクリムト(1862-1918年)の『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』の背景に溶け込んでいる人物の輪郭が分かるのはなぜか。ココシュ(1886-1980年)やシーレ(1890-1918年)の肖像画を観ると激しい情動的な反応が起きるのはなぜか。『モナ・リザ』の微笑みが神秘的に見えるのはなぜか。フェルメールの『音楽の稽古』で楽器を弾いている女性が誰に関心を持っているか分かるのは一体なぜなのか。 21世紀の科学における最大の課題のひとつが、人の心を生物学的に解明することである。そして、この難問を解く手掛かりが見えてきたのは、心の科学である認知心理学が、脳の科学である神経科学と融合した20世紀後半以降のことである。

    『芸術・無意識・脳』人の心は、どこまで解明されてきたのか - HONZ
  • みんな大好き大興奮!(のはず)『マンボウのひみつ』 - HONZ

    生きものによって人に好かれるのとそうでないのがある。それは、その生きもの固有の性質による場合もあれば、社会的なファクターによるものもある。たとえばアイアイを考えてみればよくわかる。 アイアイはその原産地・マダガスカルでは悪魔の使いとされており、忌み嫌われている。どれほど嫌われているかというと、一旦目撃すると、そのアイアイを殺さないと不幸になる、と言われていたくらいだ。そら、絶滅危惧種になりますわな。しかし、日では、軽快なメロディーの童話のおかげで、多くの人に好かれている。確かになんとなく不気味なんで、実物を見たら子どもは泣いてしまうかもしらんけど。タヌキなんかも微妙である。見た感じは愛くるしいが、かちかち山とかを読むと、人を化かすとんでもない生きもので極めて印象が悪い。 その点、マンボウは違う。世の中にマンボウが嫌いとか恐いとかいう人はほとんどおらんだろう。まぁ、マンボウのことなんか見た

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  • とてつもなく変態で、ありえないほど文章がうまい──『動物になって生きてみた』 - HONZ

    どうやったら、我々人間は動物の感覚にもっと近づくことができるのだろう。たとえばアナクマのように巣穴で眠り、森を徘徊して獲物を物色する。たとえばカワウソのように水辺に住んで魚やザリガニをべて生き、ツバメのように空を飛び、糞を撒き散らす。そうやって動物たちと同じように生きたら、彼らがみている世界を追体験できるのではないだろうか? そんな、言っていることはわからないでもないが自分でやろうとは思わないことをまともにやってしまった狂人が、書の著者であり、2016年のイグノーベル賞の生物学賞を受賞したチャールズ・フォスターである。狂人とは言い過ぎで、著者に対する敬意を欠いているのではないか? と思うかもしれないが、この記事を読み進めてもらえればその事実が把握いただけると思う。 人間とキツネなど他の動物たちとの間には境界があると著者はいう。それは当然だ。我々はキツネと子どもを作ることはできないし、カ

    とてつもなく変態で、ありえないほど文章がうまい──『動物になって生きてみた』 - HONZ
  • 『大阪ソースダイバー』にソース文化の真髄を学べ! - HONZ

    あまり知られていないかもしれないが、大阪人はソース好きだ。東京では中濃ソースが一般的らしいが、大阪の家庭ではとんかつソースとウスターソースが常備されているのが普通である。 天ぷらにだってウスターソースをかける。少し古い、たぶん10年ほど前のデータだが、野菜と魚の天ぷらソースでべる人は、関東では1%以下であるのに対して、近畿では45%もいる。アジとかイカとかタマネギの天ぷらは、ソースでべるのがいっちゃんうまいのだ。だまされたと思って、いっぺんやってみなはれ。。 昭和35年生まれ、わたしとほぼ同世代の『下町のエリート』堀埜のおじきが、『まんぷくライター』曽っちゃんの取材力を巻き添えにして、大阪におけるソースの輝かしき地位と歴史をあますことなく書いたのがこのだ。 ソースが最も輝いていたのは「昭和のあの頃の下町」である。 下町的には、ソースは最初から「ハイカラでおいしいもの」として普及する運

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  • 埼玉でスッポン、都内でエイを『捕まえて、食べる』アドベンチャーは自転車で! - HONZ

    夏休みシーズンが到来し、海へ山へと出かける計画を立てている最中の方も多いかもしれない。しかし夏休みには、いつか終わってしまうという最大の欠点がある。これを回避する方法が、一つだけ存在するのだ。それは、毎日を夏休みのように生きるということである。 書の著者は、まさにそんな生き方を体現している人物だ。スッポンを自分で捕まえて鍋にする、エイを捕まえてフォンオフェを作る。だが、いかにもアウトドアの達人という風情でもなければ、料理の腕に覚えありというタイプでもない。 捕まえた場所は、ほとんどが自転車で行ける場所。料理を作る包丁さばきも、しどろもどろ。だけどやっていることは結構無謀。一風変わった材ばかりを調達し、普通は試さない特殊な調理法を、ほんのりアドベンチャー風味で紹介してくれる。 著者は大学時代に山形で暮らすようになってから狩猟能に目覚め、卒業後、新小岩で一人暮らしを始めたことが運の尽き。

    埼玉でスッポン、都内でエイを『捕まえて、食べる』アドベンチャーは自転車で! - HONZ
  • 『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ

    『世界からバナナがなくなるまえに 糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 バナナがなくなってしまうだって!? 多くの人にとっては寝耳に水であろうが、しかしこの話、けっしてありえないことではないようである。 現在、人々が口にしているバナナは、その大半が単一の品種、すなわちキャベンディッシュバナナである。そしてそのバナナには、遺伝的な多様性がまったくない。というのも、キャベンディッシュは種子がなく、株分け(新芽を移植すること)をとおして栽培されるからである。それゆえ、「キャベンディッシュバナナはすべて遺伝的に同一であり、スーパーで買うバナナのどれもが、隣に並ぶバナナのクローンなのである」。 だがよく知られているように、そうした遺伝的多様性の低い生物は、天敵などの影響をもろに受けやすい。実際、かつて人々が口にしていたバナナ(グロスミッチェル種)は、「

    『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ