われわれが一番興味を持っているのは脳の中での情報表現の問題です。脳神経科学にとっても重要な問題だと思うんですが、例えばバインディング問題――結び付け問題というのがあります。これまでの脳研究の進歩で、脳は局所的に機能が分かれているということがわかってきている。色はここ、形はここ、と。ところがわれわれはあるオブジェクトを見た時に、それを1つのものとしてとらえることができます。そのカラクリが実はよく分かっておらず、大きな問題になっています。ただ、われわれの観点から言うと、その問題自体が生理学研究の歴史に基づく人為的なものであるという気がしてるんです。 生理学者のこれまでの多大な努力によって、線分の方向とか、手とか顔とかに敏感に反応する細胞が発見されてきています。ところがそういう発見のされ方故に、今度は逆にバインドが難しくなる。しかしここで、これらは元々1つのダイナミクスの総体として応答しているも