関係者全員が立ち会う中、係りの人間が物々しく分厚い文書を二重の布で包む。その後ロウソクのロウで封をし、それを手渡す。何かの儀式ではない。インドネシアにおけるRFP(提案依頼書)受け渡しの1シーンだ。 こうしてインドネシアの地理空間情報局(BIG)からRFPを受け取ったNTTデータの楠田哲也ジャカルタ駐在員事務所所長は、その45日後、回答書を提出するためにBIGに向かっていた。車には、厚さ10センチメートルの回答書を12部積んである。前日は夜を徹して書類に不備がないか、確認作業に明け暮れた。 ところが、BIGのオフィスがあるジャカルタの郊外に向かう途上で、同乗していた担当者が「あっ」と叫んだ。何ごとかと尋ねると、回答書を収めたバインダーに、所定の表紙をつけ忘れたのだという。それがなければ、受理されないかもしれない。必死にプリンターのあるネットカフェを探し、大慌てで表紙を作成。事なきを得た。