「あの土と芝生の独特のにおい。あれは、甲子園だと思う」松井秀喜は取材に対しそう語った。史上最も多くショートの守備についた鳥谷敬は「引退してからも自由に体を動かせるのは、あの土で長くやったおかげ」と感謝する。 日本一有名な野球場、甲子園。その場所が聖地と呼ばれるのは、少年を大人にする舞台であり、伝統の戦いを彩る劇場であり、そして、歴史の証言者でもあるからだろう。 今月、100歳を迎えた。この節目に、聖地を支える現場を8か月にわたって見つめた。 1月、阪神園芸の職員たちが白い息を吐きながら、内野の土を耕運機で掘り返していた。甲子園のグラウンドを36年間守り続けてきた金沢健児は「春までの3か月が、その年のグラウンドの命運を握っている」と語る。彼らが目指すのは「"水はけ"と"水持ち"のいい」グラウンド。自然と格闘しながら、二律背反に挑み続けてきた。ファンの間で語り草の"神整備"には、気の遠くなるよ