ヤマト王権の古代学 「おおやまと」の王から倭国の王へ [著]坂靖 古墳時代以前の研究は難しい。主要な文献資料は『古事記』『日本書紀』(記紀)だが、これらは8世紀に律令国家によって編纂(へんさん)されたものなので、史料的価値には限界がある。よって考古学の出番となる。 たとえば、記紀に見える「この古墳は〇〇天皇の陵墓」といった記述はしばしば考古学の成果と矛盾し、強引なこじつけが多く含まれていることが判明している。また記紀には垂仁天皇(11代天皇)や景行天皇(12代天皇)の宮(居所)などが登場するが、著者は「この時代に『天皇』も『宮』も存在しないことは明白である」と断言する。 本書の内容は専門的で高度なものだが、発掘調査の事例紹介に特化せず、文献資料を検討しつつ3~5世紀のヤマト王権の実態に迫っているので、類書と比較すると読みやすい。 ただし、本書は考古学の現在の通説を解説するだけのものではなく