最近のゲノム科学や理論研究が示した答えは次のようなものだ。 集団レベルの性質ならば、多様でかつ現在の環境下では生存率の向上にあまり貢献していない“今は役に立たない”遺伝的変異を多くもつことである。個体レベルの性質なら、ゲノム中に同じ遺伝子が重複してできた重複遺伝子を数多く含むこと、複雑で余剰の多い遺伝子制御ネットワークをもつことである。 要するに、常に変化する環境に適応し易い生物の性質とは、非効率で無駄が多いことなのである。これはたとえば、行き過ぎた効率化のため冗長性が失われた社会が、予期せぬ災害や疫病流行に対応できないことと似ている。 だから、もしこのダーウィンの言葉と誤解されているフレーズが、どう変化するか予想が困難な社会環境のもとで、組織や業務の〝選択と集中〟や、効率化を進めることを正当化するために用いられるなら、それは明らかに誤りであり不適切である。 きっと、研究まで興味を持たれて