3月11日、東日本大震災に見舞われた南三陸町にある南三陸ホテル観洋。固い岩盤の上にあり、1階と2階は津波に襲われたが、5階にあるロビーのシャンデリアは一つとて落ちることがなかった。そして、そのときから宿泊客、地域住民、ボランティア、復旧作業員が寄り添い、復興に取り組む物語が始まった。 4月から5月にかけて、私は日経ビジネスの瀬戸久美子記者とともに現地を取材、5月31日、日経ビジネスオンラインに、地震直後からの阿部憲子女将の孤軍奮闘ぶりを報告した。 ここにきても遅々として進まない復興への動きも重なり、現地の状況を確かめるべく、8月後半、私と瀬戸記者はそれぞれホテル観洋を再訪した。その後も、電話やメールで現地との情報交換を続けるなか、我々はある事実を発見した。 まだ避難者がいるなか、社員の雇用を守るために、ホテル観洋は7月24日に一般の宿泊客の受け入れを開始していた。地震前から人気の高い旅館だ