1875(明治8)年,政府主導のもとで開始されたセメントの国内生産が深川工作分局で成功した。これに伴い民間によるセメント製造も開始され,1883(明治16)年9月初めて小野田セメントが生産に成功し,また,1884(明治17)年に深川工作分局の払い下げを受けた浅野セメントも民間として生産を始め,徐々にセメント生産はひとつの産業となるまで成長を遂げた。ちなみに,1897(明治30)年には使用するほとんどのセメントを国産で賄えるほどの生産量となり,その後は,セメントの輸出国へと変貌を遂げ,1937(昭和12)年にはベルギー,ドイツ,イギリスに次いで世界第4位のセメント輸出国となっていたのである。 ところで,このセメントに砂・砂利を加え,水で練り上げたものがコンクリートである。そして,これに鉄筋を併用させたものが鉄筋コンクリートとなる。この鉄とコンクリートを組み合わせた鉄筋コンクリートは,村松貞次