近年マスメディアのタブーとされてきた感のある「慰安婦問題」。今回の事件も国内の主要メディアや写真家たちの反応は薄かった。その背景に何があるのか。綿井健陽 (映像ジャーナリスト/日本ビジュアル・ジャーナリスト協会共同代表) ◆止まらない「自粛の連鎖」 思い返せば、2008年の映画『靖国』の上映中止騒動は、当時の国会議員による試写要求や映画主人公への出演拒否の説得など、あからさまな政治介入が発端だった。同じく2010年の映画『ザ・コーヴ』の場合は、右派団体「主権回復を目指す会」のメンバーによる、配給会社と映画館への上映中止を迫る執拗な脅迫と街宣活動だった。 映画『靖国』上映中止騒動が起きた時、「ちょっとでも危ない匂いを感じたら、すぐふたをするような感じがあります」と同映画の配給宣伝担当者が話していた(月刊「論座」2008年6月号、朝日新聞社)。当時、最初に上映中止を決めた映画館は、結局「自粛