赤瀬川原平『四角形の歴史』(毎日新聞社)を読む。毎日新聞の書評欄のコラム「この3冊」で、美術評論家の山下裕二がこの本を「あまり知られていないけれど、極めつきの名著だ」と絶賛していた(2月1日)。 自筆のイラストとごく短い文章による絵本という体裁だが、本書で示された思索は、驚くほど深い。「目玉は頭の入口だから、物も風景も何でも通過する。でも見るというのは、目玉を通ったものを頭がつかむことだ。つまり見るのは、ちゃんと意識する力があってのことだ」−−そう、赤瀬川さんは「見る」という行為を思想にまで高めた人なのだ。 赤瀬川は四角形はいつ生まれたのか考える。犬は風景を見ていない。自分の興味のあるもの、食べ物とかご主人とかだけを見ている。その点は人間も似ている。今の人間は風景を見ているが、昔は見ていなかった。人間も物しか見なかった。それは人間の絵の歴史をみるとよくわかるという。 昔は風景画を描かないで