というわけで、以前に予告した歴史関係の本をめぐる問題である(だいぶ遅くなった)。私が読んで愕然としたのは、井原今朝男『中世の借金事情』歴史文化ライブラリー、吉川弘文館、2009.1 であった。最初にはっきり書いておくが、これは買ったり読んだりする価値のまったくない本である。それはもっとも問題が濃縮されている序文だけでなくほぼ全体についてそうで、あえて言うとメディアリテラシーの教材としては意味があるかもしれんと、そういう代物であった。そこまで明確に批判する理由は、第一に現代の法制度に関する理解が(日本・外国問わず)誤っていること、第二に(現代だけでなく)一般的に土地やそれに対する所有権という制度が何を意味しているのかが理解できていないこと、第三に、従って(私自身はそれを判断する能力を持たないが、おそらく歴史史料・文書類の読解は正確であろうにもかかわらず)基礎となっている文書類やその背景にある