1862年、ロマン派の閉塞感を一気に打ち破る感性を持った作曲家、ドビュッシーが誕生した。過去と断絶したかのように見える作風だったが、非常に重要な部分だけは何一つ欠けることなく持っていた。彼はショパンと同等の、完璧と言い得(う)る“ペリオーデ”に対する鋭い感覚を持っており、また、ピアノに関しては“ビロード・タッチ”と呼ばれる「ハンマーを意識させない」ほどの音色を持っていた。 ピエール・ブーレーズは、現代音楽の始まりを「牧神の午後への前奏曲」から、と述べているが、私も同じ考えである。とくに「牧神」冒頭のフルートがcisから始まっていることが象徴的である。なぜなら、正しく整音されたピアノで静かに打鍵すると、牧神冒頭のcis(エンハーモニックではdes)は一種独特な音がすることに気づくかも知れない。フルートでもcisは全てのカップを開放するので、他の音とは異なる音色となる。これは、ストラヴィンスキ