箸の誕生箸は黄河流域で誕生した。現在見つかっている最古の箸は河南省安陽県の殷墟(紀元前十八世紀~紀元前十一世紀)から出土した銅製の箸だが、当時は手食であったことは明らかであることから、食事用ではなく食べ物を取り分ける、あるいは祭祀用のものだと考えられている。 おそらく黄河流域では、『獣肉や野菜を包丁と俎で食べやすい大きさに料理して食べていた。食べるときに、フォークや匙でなくて、手食の感覚を延長して、汁の実などを挟みあげたくなったのであろう。熱い食べ物を取り出すのに、指先に代わる竹ぎれか木ぎれを使ったのが、箸食の始まりといわれる。一本の棒では食べ物を固定できないので、二本でそれをしっかり挟み上げるようにしたのである。』(向井、橋本「箸 ものと人間の文化史102」) これが直接箸を使って食べ物を口に運ぶようにはならなかった。箸は、食事を取り分けたり、調理する際に箸を使って固定したりする用途に使