→紀伊國屋書店で購入 二度目読むときは、巨匠の手紙のとこだけね 20世紀後半、人文科学・社会科学が猛烈に面白くなった状況を反映し、というか演出しさえした象徴人類学のチャンプ、山口昌男の、初速から爆走までずっと四十年、直近で伴走した岩波書店編集者、大塚信一氏の、一代の知的仕掛人としての自伝、『理想の出版を求めて』の続篇ないし補完という一冊。 続篇を自らのかつてのカリスマ、「落ちた偶像」に仮託して構成するやり方では、四方田犬彦の自伝『ハイスクール1968』の後篇・補完本が『先生とわたし』であるのとパラレルである。四方田が師、由良君美への訣別を言葉にしたように、大塚は山口昌男への「違和感」をこうして公にした。同時代ということもあって山口氏が由良君美について辛辣なことを言っていたことが、この本でよくわかった次第だが、山口・由良といったかつてのヒーローたちへの、今年になっての最も身近だった人たちの訣